【幕間2】崖の上のショウ
いや、すぐに降りていきますけどね(笑)
「リサっ!!!」
「きゃ~~~!?」
ズザザザザザ……
木の枝や草でカムフラージュされていた、実は崖な空間にリサが滑り落ちていく。
刹那、リサの身体の下に風の魔法陣を展開してクッションにしようとしたのだが、いかんせん、タウロス山の結界に阻まれたのか、上手く発動しなかった。
なすすべなく宙に差し出されたままのオレの手。
魔法がなければリサを守ってやれないことに無念を感じる。
というか、魔法に頼りすぎているオレ自身に腹が立った。
「くそっ!」
差し出したままの手が空を掴む。そのまま自分に対する怒りの拳を握りしめた。
「リサさん……! 私をかばって!!」
震える声が聞こえる。そちらに目をやると、真っ青な顔を、その両手で覆う昂。肩が小刻みに揺れている。
こんな時にオレまで冷静でなくてどうするよ?
「大丈夫! ちゃんとオレが連れて帰ってくるから、昂ちゃんはここで待ってて?」
昂を安心させるために、出来る限りの優しい声でニッコリと笑いかける。
怒りで握られていた拳は、さりげなく解く。
自分を責めるのは後でもできる。今はリサを助けに行くだけだ。
リサのことだ、また「自分で何とかやりますよ~」ってな具合で、オレのことを頼りになんてしてねーんだろうな。
まあ、リサの場合仕方ない事なのかもしれない。
ある種のトラウマだからな。
オレにできることは一つだけ。
リサに信じてもらえるようになること。
リサが、また他人を信じられるようになるために。
「リサーーー!!!」
……
……
……
呼んでみたが、返事はない。
そんなに深い崖ではなさそうなのだが。樹木や枝葉にさえぎられて声が届かないのか?
「リサさん、大丈夫だといいんですけど……」
まだ青い顔のままで昂がつぶやく。
「大丈夫だと祈っておこう。さ、ここはあんまり魔法の効かない区域みたいだから、自力でリサを迎えに行ってくる。動かないでね」
オレは手早くリュックの中の装備から丈夫なロープを取り出して、手近にある太い木の幹にくくりつけ、自分にもしっかりと巻きつけて命綱にする。
何度か引いて、その強度を確かめてから、
「じゃあ、行ってくる」
ことさら何でもないように言って、いざ、崖を降下しだした。
降下しだしてすぐに、木の枝や葉が行く手を阻む。
ということは、逆に考えると、リサが落ちて行った時に、これらはクッションの役割を果たしていたはず。
そう思いながらも、一応いろいろな状況を考えながら降下していく。
みっしりとした枝葉に手間取りながら、どれくらい降りただろうか。
地面が見えたと思ったら、そこに黒点のような存在を発見した。
「……リサっ!!」
思わず声をかけたが、反応がない。
まさかひどい怪我をして朦朧としているとかじゃないだろうな? どこか具合が悪いのだろうか?
嫌な汗が背中を伝う。
よく見るとうずくまっているようだ。
気持ちは逸るが、焦ってオレまで怪我とかしたらシャレなんねえ。
おれは更に慎重に降下していった。
静かに地面に降り立つと、オレはすぐさまリサに駆け寄った。
あー、すぐ更新できてよかったです。
今日もありがとうございました!! (^^)




