第91話「服を脱いで」
「ディスサルさん、服を脱いでこちらに早く!」
「……」
ディスサルは一瞬迷ったが言葉を口にすることなく、素直に服を脱ぐ。
できるのか。
愚問であった。
「地面で申し訳ないですが、仰向けになって寝ててください」
「……これでいいか?」
「はい。今から解きます」
サラティスは雷魔術で気絶したホーンビューナーの両手を斬り落とす。
腕の断面を回復魔術で治し、必要以上の出血を止める。
「気持ち悪いかもしれないですが、我慢してください」
サラティスはディスサルの体にホーンビューナーの血を垂らす。
そして、必要な魔術式を血で描いていく。
「永久より零れる領域よ・幾を喰らう屑砂・光を穿つ・燃ゆる牢獄・刎ねる軌跡……」
サラティスは詠唱を始めた。
サラティスは基本的な魔術であれば、無詠唱で行える。
だがサラティスであっても詠唱しなくてはならない、魔術があった。
それは魔法に対して直接干渉する魔術。
日常的に使う機会がまずない魔術。
サラティスの言葉一つ一つに呼応するかのように、魔術式が紅く紅く光る。
魔術式は生きているかのように鼓動を始める。
基本的な魔術の詠唱と異なりここまで長いのは理由が複数ある。
そもそも発動の難易度が高い魔術は魔術式が複雑である。
それに伴い詠唱も長くなる。
そして、一般的によく使われるような魔術は年月と共に徐々に改良を重ね、より簡素に簡潔に姿を変えている。
魔法に干渉する魔術など古い、あまり使われない魔術はそのままである。
「須臾より呑込む深淵よ。吾解き説く者なりて」
光は奔流となり、魔石を呑込むように渦巻く。
魔石は光の渦に抵抗するかのようにバチバチと音を立て光が生じる。
「『解法』」
光は魔石を完全に飲みこむ。
ディスサルの体から魔石抜け、砕けちり欠片が舞った。
「はぁ、はぁ……成功です……ディスサルさん?」
心音、呼吸を確認する。
「無事ですね……」
体が少し熱い。
恐らく高熱を出して意識を失っているのだろう。
これは病気などの熱ではないため、安静にしておけば治る。
ディスサルは魔族なのでこの程度で影響が出たりしないだろう。
「すみませんが、運んでもらえますか?」
「分かった」
二人がディスサルを抱える。
サラティスは静かに言葉をかける。
土魔術で大きい穴を作る。
そして、死体を二つ丁寧に置く。
温かい光が空間を支配した。
炎は二つの死体を焼きつくす。
完全に燃えたことを確認し、土魔術を使った。
集落に戻ると、ニカルとリッターもそこにいた。
「二人とも無事?」
「はいって。腕出してください」
ニカルの腕はあちこちに裂傷があり出血していた。
「どうですか?」
「本当にサラティスちゃんは天才魔術師なのね」
「そんなことはないですよ」
「あらやだ、それ血?サラティスちゃんこそ怪我は?」
「大丈夫ですよ」
怪我なら治せるのだから。
「怪我を治したって痛いのは痛いでしょうに。本当によく頑張ったわね。本当に申し訳ないんだけど、まだ余力はあるかしら?」
「はい」
サラティスは怪我人を二人ほど治した。
ゴウィンを倒した後、風と水を使う魔族を五人で倒したそうだ。
その際、リッターともう一人以外負傷したそうだ。
二人はニカルほどの怪我ではないため、直ぐに治った。
サラティスはそのまま眠りについた。




