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宿屋の娘は聖女と呼ばれ転生す  作者: 紅羽夜


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第86話「決裂」

 駆けつけると、ニカルとリッター他二名の合計四人で、ゴウィンとエドゴウと対峙していた。

 正確にはニカルとゴウィンが戦闘を繰り広げ、三人でエドゴウを足止めしている形だ。


「俺はとどめしか刺せない」

「了解です。チャンスがあればやってください」

「ゴウィン、やつがきたぞ」

「まずこいつら殺ってからだ」

「リッターさん、代わります」

「ああ。俺はあっちに援護回る」

「人間の娘か」

「一応聞きますが、投降してくれませんか?」

「何故人間如きに?」

「そうですか」


 なら結末を迎えるしかない。


「魔術師か!」


 いきなり、エドゴウの頭部が火に包まれた。

 エドゴウは目を瞑り、地面に勢いよく転がり鎮火を試みる。


「相変わらずですね」


 熱くてうっとおしい。その程度のようであった。

 頑丈な皮膚は火の影響を一切受けていないようだ。


「っと」


 サラティスの視界は岩で遮られる。

 否、岩で視界が埋まる。

 ゴウィンの魔法により辺り一体に岩がごろごろ転がっていた。

 その岩をサラティス目掛けて投げたのだ。

 

「危ないですね」

「違う魔術か……」


 風魔術で岩を粉砕する。


「だが、魔術師如き叩きつぶせば死ぬ」


 岩を投げた隙にエドゴウはサラティスに接近していた。

 近接戦闘に持ち込むつもりだ。


「死ね」


 岩を砕き、視界が良好になり目に映ったのはエドゴウの振り被られた腕。

 直撃すれば五歳児など粉々になってしまうだろう。


「できましぇん」

「な、んだと……」


 エドゴウの腕は空振りに終わった。

 サラティスの姿が消えた。

 強化魔術を最大限にした高速戦闘。

 サラティスは上空にジャンプした。

 そして、落下を利用し頭部に踵を振り下ろす。


「つ」


 踵を右足で振り下ろし、体を捻り左足でエドゴウの首に回し蹴りを入れる。


「硬いでしゅね」


 大したダメージにはなっていなさそうだ。

 むしろ蹴ったサラティスの脚の方が痛む。

 着地した瞬間、勢いよく再度飛び上がる。

 エドゴウの顎に膝を入れる。

 そして、若干上向きになった顔を両手でしっかり触る。

 小さい手である。

 それで何かでできる訳ではない。


「がががが」


 エドゴウの体が痙攣した。

 バチバチと激しい音が響く。

 雷魔術を使った。

 その隙を使い、サラティスは腹部にゼロ距離で風魔術を使った。

 エドゴウの体は痺れて踏ん張りがきかず、衝撃に耐えれきれず後方に吹き飛ばされた。

 そのまま木にぶつかり鈍く大きい音を立てて、土煙が舞う。

 魔術師は近接戦闘が苦手である。

 常識外の驚きを利用しサラティスは攻撃を叩きこんだ。

 本来であれば、今の風魔術で体の中がぐちゃぐちゃになっていもおかしくはない。

 だが、強靭な肉体である。期待はしていない。


「何だあの強さは」


 隙を窺っていたがあまりのも想定外に驚く。

 魔術が得意なので。

 実際そうであった。

 魔族相手に涼しい顔して魔術で対等にやりあう。

 それだけでかなりの腕前だ。

 だが、近接戦闘でも同様とは聞いていない。

 そもそも、身体強化を使えることは納得はできる。

 だが、早く動けたところで攻撃ができるかはまた別の次元である。

 実は魔人で見た目とは違い、経験を積んでいるのかと疑いが浮かぶほど異質であった。

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