第478話「さっぱりして美味しいです」
「初めて聞いたわ」
「それは肉を細かくして丸めて、スープで煮込んだものです」
「そうなの、いただくわ」
フィーナは口に運ぶ。
「さすがは肉のリステッドね」
噛み締め、言葉が漏れる。
「あ、こっちも非常に美味しいですね」
サラティスも思わず笑顔が零れる。
「この何か粒粒が入ってる方かしら?」
サラティスが頷く。
きっとこれはダヴァンの工夫の一つであろう。
このスープは二種のナムシャが入っていた。
片方は中に脂を入れている普通のナムシャ。
片方は斑に何か細長い粒が肉に混ぜられているのが見て分かった。
「……こっちは口の中がさっぱりするわね」
ナムシャに香草を混ぜているのだろう。
通常のナムシャは口の中で、脂の旨味、肉の濃厚さ、脂と肉とスープで口の中に溶けて広がっていく。
こちらは口に入れる手前から微かに香草のすっきりとした匂いが感じられる。
小さいので香草としての食感は感じられないが、肉から後味が変わりさっぱりとする。
脂も流されるそんな感じさえする。
香草だが苦味は感じられないので、苦味が苦手な人も気にせずさっぱりと頂くことができるだろう。
「香草って味がきついか、苦い物だと思ってたけどこれなら美味しく食べれるわ」
「フィーナ、これは量が少ないのと、あーえー……」
サラティスは途中で言い淀む。
「サラ?」
「これは一工夫してるから苦味もないのかなと思います。この工夫は言っていいものか判断できないのでごめんなさい」
「あ、そういうことね。そっか、やっぱり大変なのね」
フィーナは寮で過ごし料理に詳しいサラティスや、料理が身近な平民の学生と接することで料理が大変なのだと知ることができた。
そして、手間が時には重要だということを理解した。
「ですね。学園の試験は答えがあるじゃないですか。でも料理に正解はないですし、同じ味でも食べる人によって好き嫌いが変わる。終わりがないのものですからね」
「そうね。てことは、ケイトさん大変じゃないの?」
「ケイト君がどうしたんだい?」
セクドは首を傾げる。
「あ、ケイが薬草を料理に使えないかって実験してるみたいなんです」
「へー。まぁ、薬草が美味しくなるなら良いことだね」
「そうね。薬が嫌という子供も薬飲めるようになるかもしれないわね」
うんうんとアレシアも頷く。
「ケイはお菓子作りが得意なのできっと美味しい薬を作ってくれるかもですね」
「あーははは」
セクドは笑う。
だがそれは嬉しいなどではなかった。
複雑怪奇なしっくりとあてはまる言葉が存在しなかった。




