第473話「魔術協会北支部リステッド領局長」
「大丈夫なんですか?」
「ああ。サラティスの使用人になる訳だし、そもそも彼女の運動能力はとつもなく高い。だから、毎朝サラティスと同じように彼女にも色々教えてるんだよ。ヤーミーくれぐれも怪我しないようにね」
「セクドさま、わかった」
確かにヤーミーの動きは素早かった。
それが訓練でどれほどになったのか。
「では、始め」
「なっ!」
セクドの開始の合図と共に、ヤーミーが斜め左に移動した。
と思った次の瞬間、サラティスの斜め右に現れ、回し蹴りを繰り出した。
サラティスはヤーミーの左足を避けずに見極め、下から腕を上げ右手で掴み、一回転しヤーミーをそのまま投げ飛ばす。
ヤーミーが攻め、サラティスが応対する。
しばらくそれを繰り返す。
「二人とも止め」
セクドの合図で終了する。
「サラさま、むずかしい」
「既にこれだけできますか。身体がきちんと育って技術も身に付いたら捌けなくなりますね」
「ふふ、サラティス。今の合わせでそれが予測できるなら上出来だよ」
ヤーミーは屋敷の中に戻っていった。
「さて、これからの特訓は私も攻撃するから気を引き締めるように」
「はい」
「安心しなさい、威力はジェリド程度に抑えるから」
あくまで学生の程度で行うつもりだ。
暫く攻守を入れ替え訓練を行う。
「今日はこれくらいにしておこうか」
「ありがとうございます」
サラティスは風呂に入り、朝食を食べる。
何とこの休み期間はジェリドがフィーナをリステッドの各地へ案内するそうだ。
将来的に賓客を案内するのはジェリドの役目になる。
そしてフィーナは王族であり、まさに練習にもってこいの相手である。
本来であれば失敗は許されない相手ではあるが、フィーナは友達の屋敷に遊びに来てるだけで、公務ではない。
多少の失敗も友達の兄と街を見るだけなので、許される。
フィーナもお世話になっているので、練習くらいいくらでも付き合うと。
サラティスは正装をさせられるという拷問を耐えねばならなかった。
サラティスは応接室に座り横に座るセクドと共に待っていた。
外から扉を使用人がノックし来客の到着を告げる。
使用人が扉を開けると、来客が部屋に入ってきた。
「突然のお願いにもかかわらず、お目通りをお許しいただき、誠にありがとうございます」
「私はセクド・ルワーナ・リステッド。こちらが娘のサラティスだ」
「私は先日魔術協会本から任命された魔術協会北支部リステッド領局長リビンと申します」
リビンは深々とお辞儀する。
「……」
サラティスは呆けるようにリビンを凝視し、固まる。




