第463話「淑女来訪」
「サラティスさーん、いらっしゃって?」
扉を貫通するあの声。
サラティスは私室の扉を開ける。
「ラネッタさん、どうされました」
「急な来訪で申し訳ありませんわ。少しお話をよろしいかしら?」
「ええ、どうぞ」
ラネッタを通す。
「フィーナさん、お邪魔しますわー」
フィーナにぺこりとお辞儀する。
「ええ。ちょっと二人で一時間くらい、蔵書館に行ってくるわね」
「……」
ラネッタはエステリアは素通りする。
サラティスは一瞬言葉を掛けようとしたが止めた。
面倒事になった時の方が大変である。
二人が出ていき、ラネッタは椅子に座る。
「サラティスさんにはご迷惑をおかけしましたわー」
「?」
サラティスは首を傾げる。
謝罪を受ける理由に心当たりがない。
「ゲルダマさんの件お聞きしましたわー」
「ああ、確かお二人はレクスライの貴族でしたね。御親戚ですか?」
「ゲルダマさんは繋がりは一切ございませんが、マレランネさんは家の繋がりはかなり遠いですが、一応ありましてよ」
「そうなんですね。でもラネッタさんが謝ることはないですよ」
つまり、ラネッタの来訪とは謝罪と責任を取りにきたといことだ。
しかし、責任を取る。
組織の長や、貴族の当主であるのなら自身に一切の責がなくとも、誰かの失敗を謝罪しなくてはいけない時がある。
それが立場というものだ。
しかし、今回は極めて個人的な問題でかつ、ラネッタは領主家の娘であるが当主ではない。
ラネッタが謝罪する必要など欠片もないのである。
「いいえ。殿方のみっともない、どうしようもない焼きもちで、ここまでの騒ぎにさせてしまいましたわー」
「は、はぁ」
声がでかい。
悪い意味ではない。
フィーナなどから聞かされる派閥などの都合なのだろうか。
きっと社交の場でかっこうの噂話になること間違いない件である。
もしかしたらそちらの面を考慮しての謝罪なのかもしれない。
派閥のことを考えるのも、関わるのも御免であるため、サラティスはフィーナの話を軽くしか聞いていない。
そうなると素直に謝罪を受け入れて済んだことにした方がお互いのためであろう。
「ゲルダマさんには話をつけてますので、サラティスさんは学祭の格闘には出なくて問題ありませんわー」
「あー」
理解した。
婚約者のトラブルで謝罪うんぬんもあるが、わざわざ来たのは、こちらが主かもしれない。
領主同士の関係性を考慮するのであれば、当然止めた方がいい。
「ありがとうございます。でも私は出るのでゲルダマさんには逃げるなとお伝えください」
「……」
ラネッタは暫し、サラティスを見つめる。
「まぁまぁまぁ」
突如ラネッタは立ち上がる。
「サラティスさんは武芸の嗜みがおありで?」
「護身術程度を少々お父様から」
「羨ましいですわ」
「へ?」




