第432話「美味しいのにもったいないですね」
サラティスは予定通り、逆塔を満喫していた。
名残惜しいが何事にも始まりがあるのならば終わりがある。
査定所に寄り、逆塔を後にした。
「あ、サラちゃんお帰りなさい」
「ただいまです。エスちゃん御変わりなかったですか?」
「はい」
「サラ、初めての逆塔はどうだったの?」
逆塔はすごい施設ではあるが、フィーナ個人としてはやはり作られた自然より、リステッドから見えたあの自然の方がすごいと思っている。
日頃から魔獣に慣れているサラティスからすれば、とるにたらない景色なのではないかと。
「もーすごかったですよ」
「あ」
フィーナはしまったという顔でエステリアを見る。
エステリアはふと笑みを浮かべた。
それを見たフィーナもつられ少し笑う。
ひとしきりの報告を終えたサラティスは思い出しかのように鞄を漁る。
「これをお二人にどうぞ」
「魔石。……あら、匂いがするわね」
「サラちゃん、ありがとうございます。まさか、こちらはマウの魔石ですか?」
「はい、そうですね」
サラティスはフィーナにマウについて説明した。
「そんな魔獣がいるのね」
「マウの魔石は人気ですからね。ちょっとした贈り物に最適で、うちでも取り扱いは多いですね」
「確かに苦手じゃなければ、いい匂いだし喜ばれるわね。あーでも、匂い移りには気を付けないとだめね」
自宅であれば保管場所など自由だが、ここは狭い寮であり制服など日常的に着用する服もある。
「寝室に置かなければいいかなと思います。といっても匂いも暫くしたら消えるのと、匂いもずっと服に密着でもさせてなければ、そこまでしないと思います」
「そうなのね」
詳しいエステリアに飾り付け方など教わる。
「それよりも、サラちゃんはマウを丸ごと食されたのですね」
「はい、やっぱり丸ごとが一番ですよ。何か拙いことが?」
「いえ、丸ごとは珍しいなーと。貴族様は内臓系をあまり召し上がられにならないじゃないですか」
「そうなんです?」
「……」
サラティスはフィーナに振る。
「よくわからないけど、たぶん食べたことはないと思うわ」
「本当ですかー?」
「出された物を食べてただけだもの。料理の説明はあっても、何を使ってどう調理したかは聞いてないわ」
「あーなるほど。確かに小さな子供にいちいち説明しても分かってもらえないですものね」
そこまで好きでもない限り、料理には興味があるかもしれないが、食材にまではさすがに向かないのは普通であろう。
「あのね。サラとおじい様くらいよ。小さい子供扱いするの。確かに子供だけど、さすがに私はもう幼児ではないのよ?」
「あ、ごめんなさい」
「まぁ、サラだからいいけど。というか、むしろサラが変なのよ」
「変かどうかはともかく、サラちゃんはお姉ちゃんって感じですよね」
「むう」
それを言われると弱い。




