第381話「顔見しり」
「ナクロス様、ヴァルザ様に確認して戴きますよう、お願い致します」
もしサラティスの魔術が予想通り指定魔術になったら、この場にいる三人も同じように契約魔術を交わす必要がある。
フィーナとエステリアは協会員である。
契約義務が発生するのは審査に関与した人間だけなので、義務は発生せず協力要請が出る程度である。
協力とはいえ、断ると注意人物とされる場合があるので、断るのことはおすすめできない。
ここで問題になるのがフィーナだ。
未成年の王族相手に勝手に契約魔術を使用するのは当然ながら前例がないし判断できるものではない。
王族が政務の上で結ぶことはあるだろうが、当然いちいち公開されるはずもない。
フィーナは子供であり、政務とは一切関与しないというかなり複雑な事情になっている。
「今回は協力要請であり、断られてもフィーナ王女様の立場、協会員内での処遇など一切の影響がありません。なので協会としては王家の判断に委ねます」
断ったとて、王族である。注意人物になどなりえない。
「分かりました」
「エステリア君も同様に、任意なので君やご家族の判断に任せる」
「わ、私は構いません。商売人は情報の厳守ができなければ生きてけないですから」
「それとサラティス君。くれぐれもその魔術は使用を控えるように」
「あ。ローネさんにはお伝えしてもいいですか?」
「……実験の協力をしているなら、範囲ではあるので構わない。後でローネ君も契約を結べばな。まぁ、ここまで言ってなんだが、あくまでも審査の結果指定魔術になったらの話しなのは忘れないように」
サラティスは自室に戻る際、二人に謝罪した。
面倒事に巻き込んだこと。
二人は優しいので、気にするなと、終いには魔術の談義になった。
休みの日、早速サラティスは協会に足を運んだ。
「サラティス様資料の貸出でしょうか?」
すっかり顔なじみである。受付でサラティスを知らない人はいないくらいになっているようであった。
「いえ、こちらを」
サラティスはチュースに貰った封書を渡す。
「……少々お待ちくださいね」
暫くすると、受付から男性がやってきた。
「サラティス・ルワーナ・リステッド様。案内させていただきます」
男性はお辞儀をしてから、サラティスを案内してくれた。
辿り着いたのは前に、フィーナ達と訪れた上質な部屋。
部屋の扉が開き、中には人が待っていた。
「お久しぶりです、ウォールダさん」
「ご無沙汰してます」
サラティスはソファーに座る。
「もしかしてなのですが、ウォールダさんが審査員ですか?」
「ええ。今回は事前に一報頂いているので。機密性の事考えるとですね。まず、魔術式について解説をお願いしても?」
「はい」
サラティスは事前に用意し、持ってきた紙を鞄から取り出し渡す。
「ふむ……魔術式を見た限りこの『光孔』は、甘く見たとて風槍程度な気がしますね。事前に聞いてなければかなり危ないですね。では、移動しますか」
ウォールダの後に続き、またもや見知った部屋にやってきた。
スフィルトゥクスススと魔術を打ち合ったあの部屋。




