第380話「責任を持つこと」
「諸君らには余り縁がなく、想像の外にあるかもしれない。この世には魔力がほぼない、魔術が一切使えない者も少なくない。さて、その子供は魔力量が低く、操る才も乏しい。親が望むからといって難易度の高い魔術を教えるのが正解か?」
「……」
「……」
二人は暫し考える。
教えた未来。
教えなかった未来。
どうなるのかを。
「私は教えないわ」
「わ、私は教えてしまうかもしれないです」
「……エステリア君、これは私の不手際だ。身分差を考慮すべきであったな」
「い、いえ」
「これは結果論で正解は変動するということは、頭に入れておいて欲しい。普通であるのなら、教えない方が正しい。フィーナ君はどうして教えないという判断をしたのかね?」
「シェリー先生に教わりました。魔術の危険や責任を。もし、魔術を教えてその子が事故死でもしたら、自分が殺したのと同じかなと思いました。あっ」
「……そうだ。それを片時も捨て去ることがないように励みたまえ。サラティス君の懸念はこういったものだ」
「つまり、自分の開発した魔術で事故が起きたら……」
「はい。なので登録はしない方がいいかなと」
「話を戻すが、協会には指定魔術というものがある」
初めて聞く魔術である。
「最近登録された『乾風』。女子生徒ならご存じであろう美髪器に使われている魔術だがこれは、まさに生活を豊かにする魔術だ。こういったものは登録されればすぐさま公開される。だが、魔術によっては危険性が高い、契約魔術のように特殊性の高い、政治的や何か別の事情を孕むものなどの場合は登録され公開されない魔術があり、これを指定魔術という」
魔術の登録時に、指定魔術なれば登録された事自体が公開されない。
さらには協会員ですら見ることができない。
その魔術を知るには申請を出し、協会の審査を経て許可が降りた場合のみ見ることができる。
これは役員も同じで役職や身分は関係なく基本は見れない。
審査した協会員も契約魔術で口外できないようになっている。
「なるほど、魔術自体もそのような制度があるのですね」
サラティスは頷いた。
「攻撃魔術の場合は自衛になる」
「自衛ですか?」
「ああ。もし君の開発した魔術に近しい魔術が犯罪に使われたら?」
「あ」
「要らぬ疑いを受けることになる。何故登録しなかったのか。やましい事があるのではないかとな」
仮にサラティスが登録せず秘匿した場合。
殺人事件が起き、被害者の胸には穴があり、穴の表面が炭化していた。
殺人に使われた魔術がサラティスが隠していた魔術かどうか。
それを証明するのは容易ではない。
「協会に一報出すので次の休みの日に登録してきたまえ。……フィーナ王女様」
「は、はい」
初めての呼ばれ方でフィーナは思わず激しくまばたきをする。




