第375話「悩む」
「サラどうしたの?」
「いえ……」
「サラちゃん、確かローネさんと会ってらっしゃたのですよね?」
「まさか、いじめられたの?」
「ち、違いますよ」
「ご、ごめんなさい。わ、私の勘違いですよね?すみません」
「エスちゃん、そんなことないわよ。ちょっと様子が変だなって私も思うもの」
「……ふふ」
サラティスはふと笑みを浮かべた。
サラティスはいつものように椅子に腰を下ろし二人に告げる。
「ローネさんと光魔術について意見を交換したんですよ」
「光魔術……」
「授業では習わない種類ですね。便利ですよね」
「あら、エスちゃんは使えるの?」
「はい。光球なら少々。父が幼い頃は貧しかったので、魔光灯の節約に自分で光魔術で明かりにしてたとよく聞かされました。それで、習わらされました」
「シェリーさんに聞いたのですが、光魔術は人気がないのもあり、必要じゃなければ習う機会はないと。特にフィーナは王女様なのですから、当然ですよね」
「うー。でも簡単なら習っておきたいわね。エスちゃん教えてくれる?」
「わ、私でよければ喜んで」
「ありがとう。で、その意見交換がいまいちだったの?」
「いいえ、有意義でしたよ」
「なら、なんで元気なさそうなの?」
「元気がないというか、考えさせられました」
それはローネの一言だ。
「ローネさんは魔獣駆除の都合で光魔術を攻撃魔術に使えないかと模索されてらっしゃいました」
サラティスは攻撃魔術の開発はあまり肯定的になれない。
攻撃魔術自体は必要不可欠であり、それを否定するつもりはない。
自分が作ったり、改良した魔術が現在も残っている。
ほとんどは自ら広めた物ばかりなので、そこに不満などはない。
全ての書物を見た訳ではないので、残っているかは不明だが戦場で敵を殺めるだけの魔術をいくつか作り使ったことがある。
余りにも危険すぎるため、回復魔術などとは違い、誰にも伝えることはしなかった。
攻撃魔術を作ることの責任や、何か起きた時の苦悩。
それを想像すると普段の生活に役立つ魔術と比べ、攻撃魔術を作ろうとはならない。
だがローネの言葉が深く刺さった。
リステッドは同じく魔獣の被害が多い。
その駆除は父や騎士達が主に当たっている、
皆に共通するのは剣や、矢、槍など武器を用いて駆除することである。
森の中で高火力、広範囲の火魔術は使えない。
そう考えると、リステッドでも光魔術で倒せるようになれば、戦術に幅が出るし、魔術師の活躍も増える。
そうなると騎士の負担も減る。
なら作った方が皆の為になるのではないか。
不安と期待。
混じり溶け、全身を濡らしていく。
体が徐々に重くなっていく。
どうすればいいのか。
どうしたらいいのか。
「なるほどね。攻撃魔術は危険だから心配と。開発なんて私は想像もできないから、正しいかどうかなんて分からないわ。一番はサラが作りたいかどうかなんじゃないの?だって私からしたら、意味不明な魔術書を読んで机の上で意味不明なことぶつぶつ言ってるサラはすごい楽しそうに見えるわよ」
「楽しい……」
「やって楽しいなら続ければいいし、つまらないならやめればいいじゃない。だって勉強でも試験でもないじゃない」
「そうですよ。サラちゃんは時に難解なことを仰いますが、そんな時はすごいわくわくしてますよ。見てるこっちも楽しくなる程に」
「……」
サラティスは立ち上がり、二人を抱きしめる。




