第376話「こちらから行きます」
魔術の授業の終わり、チュースの元へ向かう。
「何か質問かね?」
「いえ。放課後魔術訓練室を借りたいなと」
「申請を出せばよかろう。人が多くない限り断れることなどあるまい」
「……」
「どうした?時間は無限ではないのだが」
「実は少し実験したことがありまして……」
「実験?それは授業で習う魔術の予習復習ではなく、先の発表会のような実験かね?」
「はい」
「……その実験とは如何様なものかね?」
「光魔術なのですが、場合によっては危険かもしれなくてですね」
「……まさかとは思うがローネ君が絡んでいるのではないか?」
「へ?……どうしてそれを?」
「はぁ。……最近ローネ君からの申請が多いのでな。話を聞いた所、発表会で出した魔術に関して別アプローチの案が出たから試したいと。君が唆したのかね?」
「そ、そんなことしてないですよ。ただお話して、意見交換をしただけです」
「交換か。……因みに具体的に何を?光魔術は侮られがちであるが、素人でも複数人に大怪我を負わせるのも容易い魔術だ。周りの生徒を失明させるような魔術であるのなら、認められないな」
サラティスは頭の中の構想を相談した。
そもそも、美髪器を作っている時に考えていた魔術の制御部分を、逆の形で利用できるよう整えるだけなので直ぐに浮かんだ。
「……はぁ……」
「ダメですか?」
「本来であれば。ダメだ。そのような人が容易く死ぬ可能性のある魔術を公共の場で使わせるはずないだろう」
「本来であれば?」
チュースにしてはいやに歯切れが悪い。
「私は生徒に差をつけないし、贔屓もしない」
「はい、チュース先生はとても優しいです」
「っつ。……それは教員として当たり前のことである。だが、教員だからこそ従わねばならぬことが多々ある」
組織に所属するとは妥協できるかどうかもでもある。
「この学園を運営しているのは理事と、役員達である。だが、命令系統でいえば理事長より上に学園長がおられる」
「あ」
「学園長は基本不在なことが多い。だが、数年に一度教員などに通達を出すことがある。学園規則よりその通達の方が優先される」
「かわいそうに……」
「この間、学園長が一部の教員を集めて新しい通達を発表された」
「……」
何故だろうか。
かなり嫌な予感がする。
ルリレッタのしてやったぜという笑い顔が浮かぶのは何故であろうか。
「今年の学祭で一学年が魔術の研究で素晴らしい成果を出した。これから先、その才能を見守るのが教員にとっての使命である。もし、該当生徒が学習内容以外の魔術の探求がしたいというのなら、認めろと」
(ルリ……)
「人が死ななければ問題ない。訓練室の形が残っているのなら問題ない。好きにさせてやれとな」
「そ、そこまで大規模なことはしないですよ」
「そう願うさ。だが、君の腕ならそうそう起きないが、新規の魔術とは想定外を記録するものである。その腕だからこそ、一般生徒では起こしえない規模をやらかす可能性がある」
「監視してもらって構いませんよ?」
「当たり前だ。特殊事例だ。監督が絶対必要だ。因みに今日かね?」
「はい、可能であれば。都合が悪ければ今日じゃなくても構いません」
「……少し遅い時間になるがいいかね?」
「はい、ご迷惑じゃなければお願いします」




