第311話「お褒めの言葉」
「フィーナ・ロスダル・ダルサグ、サラティス・ルワーナ・リステッド、エステリア・ノウヴァ」
三人の名が呼ばれ、厳かな空気の中を泳ぐ。
三人はこっそりと合図しあい、揃って前に出る。
「正直儂は魔術に詳しくない。おぬしらの研究内容が凄いということは理解できるのじゃが、どれだけすごいは理解できておらん。魔術師達の騒ぎ具合から探るしかできん。此度の発見、よくやった。先五人と違い、こればかりは努力だけでどうにかなる訳じゃない。運や環境なども関係してくるじゃろう。なので、引き続き頑張れと言っても何をとなるじゃろう。じゃが、三人は一学年でここに立った生徒は記憶がない。この国にとって若き優秀な人材は宝。来年同じように何かを見つられんでもいい。日々正しく生活し、学園生活を過ごすように」
王がふと穏やかな笑みを浮かべる。
「時に、幼いのに生意気だ、そんなの非常識だなんてのが言われるやもしれん。おぬしらには実績がある。所詮は妬みだと、本気にすることなく自分の信じる道を進むのじゃ」
そして、ヴァルザから一人ずつにペーパーナイフが手渡された。
「三人には申し訳ないのだが、魔術発表に関しては複数人の場合は人数ではなくチームに一つという決まりがあり、全員には渡せない。先に所有権を決めてくれ」
「お父様、今決めなくてはならないものでしょうか?」
「ああ。これはルリレッタ工房が作った記念品。過去誰が所有するかで揉めたことがあってな。この場で決めてもらうことになっているのだ」
王の御前である。
ここで決めたことを覆してなどの暴挙は当人、家の格にすら影響が出る愚行である。
「私は不要なので、お二人で決めていいですよ」
サラティスからすれば、風魔術でどうにでもなるので、普段からペーパーナイフを使う場面がない。
「……」
「……」
二人は沈黙した。
正確には何を言えばいいかと停止であった。
本音は二人とも欲しい。
フィーナからすれば、王女の立場で欲しいと言えば、確実にエステリアが譲るのは分かっている。なので言いたくても言い出せなかった。
エステリアも当然、王女を差し置いて自分が貰うなどありえないと黙っていた。
「……分かりました。これは私が貰います」
サラティスは二人の様子から解決案を提示した。
「ええ、それがいいわ」
「サラちゃん主導ですから、私も異存はありません」
こうしてペーパーナイフをサラティスが受け取った。
二人の分を後で個人的に依頼して作ってもらうつもりだ。
「本来であれば、これにて終わりなんじゃが、今日は珍しいのが来ておってな。……入れ」
王の合図とともに扉が開く。




