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宿屋の娘は聖女と呼ばれ転生す  作者: 紅羽夜


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第292話「心外です」

 朝、フィーナとジェリドの特訓に付き合うためにサラティスは規則正しく起床し、庭にいた。


「ん、何やら騒がしいですね」


 暫くして、騎士がセクドの元へ駆け寄った。

 恐らく魔獣被害の報告だろう。


「ジェリド、訓練は一旦お終いだ。これから駆除に出るけど、行けるかい?」

「はい。もちろんです」

「問題はないだろうけど、念のためにサラティスは、二人を室内へ。頼んだよ」

「分かりました。お手伝いの方は?」

「ありがとう。報告によると下級のようだからね、今のところ大丈夫だよ」

「それでしたらお父様が行かれる必要ないのでは?」

「本来ならね。現場の騎士だけで問題ないけど、ジェリドにとって良い機会になるからね」

「なるほど。お気をつけて」


 セクドとジェリドは騎士と共に屋敷を出て行った。


「何かトラブル?」

「フィーナ、エスちゃん。驚かせでごめんなさい。ひとまず、室内に行きましょうか」


 そのまま食堂へと向かう。


「お父様とお兄様は魔獣の対処に向かいました」

「あーなるほどね」

「ジェリドさんも参加されるんですね」

「はい。魔獣の種類や、規模などで危険度を分けているのですが、今回はその中で一番低い物です。現場の騎士だけで解決できるのですが、安全に経験を積む機会になるので。お父様はそれの見守りや指導のために付き添うためですね」

「さすがは跡継ぎね。勉強の合間に領主のために研鑽してるのね」

「きっとこうして、日頃から経験を積んでらっしゃるから、ジェリド様は学園でもトップクラスの腕なのですね。やっぱり実践を積むって大切ですね」

「ですね」

「アレシアさん、私達がお手伝いすることはあります?邪魔になるから、大人しくしているのが一番だと思うけど」

「ふふ、ありがとうございます。フィーナちゃん、お気持ちだけで十分よ。サラティスが言った通り、現場で済む程度ですからね。大人しく私たちは待ってましょう」

「フィーナが動くと現場が護衛などで、面倒になるだけですからね」

「サラ、それくらいは分かってるわよ」

「護衛と指揮系統でも弊害が出るかもしれないわね。そもそも、フィーナちゃんが万が一でも怪我すれば、セクドも責任取らないといけないもの。お客様の二人は気にせず、ゆっくりとお過ごしくださいな」

「リステッドの噂はかねがね耳にしてましたが、やはりサラちゃんのお家は大変なのですね」

「でもそれはどこの領でも、何かしら問題は起こってると思いますよ」

「そうね。どこの領にも良いこと、悪いことあるってお父様から聞くわ。サラは魔獣のおかげで怖い物知らずになったってことでしょ?」

「ちょ、どういう意味ですか、それは?」

「確かにセクド、ジェリド、サラティス三人とも何だかんだで、怖い物なんてないものね」

「お母様?ありますよ、もちろん」


 それこそ周りにたくさんある。

 これらを失うことはしたくない。


「そうかしら?ケイトちゃんが泣いていたのは、よく覚えがあるわ。でもサラティスが泣いたのは見たことないわよ?勿論、サラティスが幸せなのが一番だから良いのだけれども」

「ケイトちゃんってサラの婚約者からしら?」

「そうね。お隣のバインド家の子よ。あら?三人は違うクラス?」

「はい、私たちは白クラスでケイは金クラスですね」

「あら。じゃ男の子だし縁が生まれにくいから、知らないのも仕方がないわね」

「サラちゃん、婚約者がおられるのですか?」

「え、ええ」

「貴族様ですね……」

「エスちゃん、そうでもないわよ。私はいないもの」

「そうね。最近は長子や跡継ぎ以外の子はだいぶ、私の頃と違って、婚姻は自由になりつつあるみたいね。まぁ家によるのでしょうけど」

「てかフィーナの場合は、他国の人の可能性もあるのですよね?」

「そうね。まぁ、そればっかりはどうなるか分からないから、なるようになるしかないわ」


 貴族間の権力政争のために、婚約は一種の武器となる。

 それが王族であれば、それ以上の価値が生まれる。

 昔から、国同士の関係のために王族などが婚約することは珍しくない。


「ケイト様はどのような方なのですか?」

「そうよ。サラと結婚するってことはかなり大変よ。普通の殿方では務まらないわ」

「何ですかそれ」

「ケイトちゃんはとっても良い子よ。サラティスにいつも付き合ってくれて、音もあげないしね」

「そうです。お二人が心配してくれてありがたいですが杞憂なので、安心してください」

「今度紹介してちょうだいね」


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