第23話「サワランダーで買い物」
「あれがサワランダーですか」
いろいろ見える店だが、各々壁など装飾、色をつけたりと目を惹かれる。
「先程は自由時間はあまりありませんでしたが、ここは一時間程視察。あとの一時間はサラティス様のご自由にお店をご覧になっていただければ」
別宅につき、ここからは徒歩で行くことに。
「改めて、街ですが大雑把に飲食・食料品エリア、洋服エリア、雑貨エリア、交易エリアに別れています」
「まとまっているのは、いみがあるのですか?」
ライバル店が近くにあるのは不利ではないのか?という疑問が浮かんだ。
「もちろんです。まず、輸送の観点で利便性が高いです」
「おい、ユリス。子供だからと甘く見ないのは良いと思うが、サラティス様は四歳だってのを忘れるなよ?サラティス様も分らない単語、語句があればその場で質問すんだぞ?」
「あ、も、申し訳ありませんでした」
「ダヴァン、ありがとうございます。ユリスもだいじょうぶですよ。つづけください」
「は、はい。……利便性でしたね」
特に飲食店はそうだ。毎朝、食材が届くがそこには輸送費がかかる。
近くの店同士で食材をまとめて注文し配送先が近ければ輸送費もその分少なくて済む。
客側にとっても利点がある。
詳しく店を知らなくてもお腹が減って飲食エリアに行ってそこから気になった店を探すことが楽になる。
「なるほど……」
サラティス達は豪華な店の個室に案内された。
複数の店を経営している凄腕の商人から話を聞く。
サラティスは黙って説明を聞く。
疑問に思ったことはあるが聞くことを躊躇われた。
説明している商人は大柄な中年男性だ。
はっきり言うと典型的な肥満体型である。
商売が成功し、食生活を好きにできているのだろうと推察がすぐできるであろう体型。
「サラティス様、如何されましたか?」
さすがは商人である。
商人はユリスの質問に明確に、的確に答える。やましいことなどしていないので、嘘をつく必要がない。
そして、要望や気になっていることなど報告する。
目の前にいるのが少年とはいえ、公務としてやってきた役人だ。少年だからと侮っては身を崩す要因になる。
しっかりと対応している最中でも当然貴族であるサラティスの様子を伺うのも怠らない。
貴族と商人は切っても切れない関係性である。
その土地で店を開く商人にとってはさらにである。当然リステッド家ともお付き合いはあるので、貴族の子供だからと蔑ろにはできない。
「あ、ごめんなさい」
顔をじろじろ見つめていた。
「いや、私の顔が怖い、とかなら謝罪しておきます」
「ち、ちがいます……」
「ほ、それなら良かったです。私もお世辞にも優男とは言えぬ風貌ですからな」
「おさけ、すきですか?」
「ははは、酒は好きですね。私用でも飲みますし、店で扱っているのは一通り飲んでますね」
「……」
「サラティス様、何か気になることは言ってみていいんだぜ?多少失礼なことでも、相手はいい大人。さすがにムキになって怒鳴るなんてことはないぜ」
「ダヴァン殿、子供が相手じゃなくてもいきなり怒鳴ったりしませんぞ」
「そいつは悪かった」
「さいきん、びょういんにいったことは?」
「病院……忙しいのと、幸い大きな病などしてないので、ここ十年くらいは行ってないかなと思います」
「いってください」
「ほう、お伺いしても?」
商人の目に獰猛な光が宿る。
品定めする瞳だ。
「おかおが、すこしくろくなってます。それは、おさけを、いっぱいのんでいるひとに、あらわれるしょうじょうです。ほうちしておくと、かんぞうなど、からだのなかのびょうきに、なってしまいます」
「な……」
「あー確かに。酒に溺れて体壊すと、震えが止まらなくなったりとかな」
ダヴァンは酒が原因で命を落とした知り合いがいた。
「なるほど、皮膚ですか。サラティス様、ご助言誠に感謝致します」
商人は深々と頭を下げる。
後日の話になるが、病院で当面酒を控えるように注意された。重大な病気になるのを防げ、感謝として洋服などお礼の品をリステッド家に送った。
その後また別の商人と同様に面会し、無事終わり街中を散策することに。
「これから向かいますのは雑貨エリアですね」
ユリスに案内され歩く。
「サラティス様、ここは魔術の書籍や魔術具を売っている専門店です。サラティス様が学園に通う前にお世話になるかと思います」
ハルティックは店の扉を開ける。
「いらっしゃいませ。どうぞサラティス様お入りください」
「おじゃまします」
「サラティス様。何か気になることがあれば一度私にお願いします。直接店主とのやりとりはお控えください」
「……わかりました」
何気ない会話でサラティスの魔術の知識の理解度が露見する恐れがあるからだ。
「ご主人、申し訳ありませんが本日はサラティス様の喉の調子がいささか優れないため私のほうで代わりにいくつかお聞ききしますが決してご主人と話したくないなどそういったことはございませんので、ご理解いただければと」
「もちろんですとも」
セクドもアレシアも身分や職業で差別したりしないこと領民は知っている。
なら、子供であるサラティスもそうであろう。
それに、このくらいの小さな女の子なら知らない男性が怖くて話せないことだってあるだろう。
「この店で一番売れている商品は何でしょうか?
「売れてるのは紙とぺン、インクですが……魔術具に限定するという話でしたらこれですな」
持ってきたのは人形。
「これは回復魔術の練習人形ですね」
サラティスがシェリーから貰ったものとだいぶ大きさが違う。
店主が出してきたのはサラティスの使っているものより半分くらいの大きさである。
サラティスはすぐさまハルティックに耳打ちする。
「練習人形を見たことがありますが、見たことあるやつはこの倍くらいの大きさでしたが何か違いは?」
「ああ。それは恐らく上等なやつですな。貴族様や、学校で取り扱う人形はこれより大きく、使用回数が多いんです。こちらは小さい分、回数が四十回程度。その代わり値段が安くて。庶民や領学校で買うのが多いです」
つまり、人形が大きい分魔術式を書き込めるから回数が多く、その分値段が上がるということだろう。
「ありがとうございます。ご主人が一番面白いと思う魔術具はどれですか?」
「お、面白いですか?」
新商品、高額、お買い得、人気商品を客から尋ねられることはあっても面白いなど完全主観は今までなかった。
店主は困惑している様子ですぐさまサラティスは耳打ちをした。
「面白いが難しいのでしたら、お気に入りのものでも結構です」
「お気に入り……そうですね」
店主は商品棚に向かい、商品をサラティスの前に持ってきた。
四角い箱のような物だ。
縦長の長方形で長さは四十セル程。材質は木製のようで全面白く塗られている。
一面が半分くらい切れな四角に繰りぬかれ、穴が空いてる。
「では失礼して」
店主は上部に手を翳す。
店主の魔力に反応し箱の内側に水球のようなものが生成された。
しばらくすると、その水球が射出された。
箱の内側で水球を作り、穴から出て来るようだ。
水球はまるで泡のように球体を保ったままそのまままっすぐ床を転がる。
サラティスはあんぐりと口を開ける。
ハルティックはこっそりと頬を触り閉じさせる。
水球のようなものはただの水ではないらしく、通り過ぎた木製の床を見ても濡れた様子が見られない。
水球は商品棚にぶつかると弾けることなく、反射しそのまま戻ってきた。
速度は一定で変わらず、最後は箱の中に。
そして箱に入ると水球は箱の中でまるで吸収されるようにして消失した。
ハルティックはサラティスの口を塞ぐ。
非常に、とてつもなく、たいそうに興味を抱かれているご様子だからだ。
「こちらは、床の埃を掃除する魔術具です。掃除する時間がないときなど重宝しますね。ただ、人が掃除した方が早いし、自分ですればお金も掛からないですからね。売り上げは芳しくありません」
あまり売れない商品のようだ。
「サラティス様、何か買われていきますか?」
「いいえ。ひじょうに、ざんねんですが、おこづかいの、つかいみちはすでに、けいかくしているので、くやしいですが、きょうはがまんします」
「ご主人、お忙しい中ありがとうございました。今回は視察のついでに店の散策が主でして、今度私用で何か買わせていただきますね」
「は、はい、お待ちしております」
時間的な都合もあり、サラティスは仕方なく店を後にした。
その後、予定していた品を四つほど購入した。この時点で残りは四百フェルになった。




