『夢魔』
今回はとても短いです。
露骨な単語は省きましたが、同性愛描写注意。
夢魔、という者たちが存在する。
魔族の一種で、人間の精を糧とする種族だ。
男性型はインキュバス、女性型はサキュバスとも呼ばれている。
「ハーティ様ぁ!」
「…リリー、あんたいい加減諦めなさいよ…」
「嫌です!」
「はぁ…」
疲れたように息を吐いた少女はハーティ。
そんな彼女を追いかけるのはリリー。
リリーは魔族の中でもサキュバスと呼ばれる種族だ。
普通は男性の精気を奪うために男性に近づくはずなのだが、リリーは違った。
その扇情的な外見に反して、男性恐怖症であるリリーは「精気をとられてもいい!」とよってきた男子生徒に囲まれて怯えていた。
そこを助けたのがハーティだった。
ハーティは体質型魔力体【認識】を自在に操ることの出来る天才児としてこの学院に入学してきた少女だった。
それが魔法を習うようになり、自分が触れている間ならば例え他人でも認識を外すことが出来るまでになった。
それから、リリーはハーティに思慕を寄せるようになった。
曰く、「愛があれば性別の壁なんて関係ありません!」だそうで、ハーティは精を狙われている、というわけだ。
「大体女を襲ったところで、あんたはサキュバスなんだから満たされるわけないでしょう。だったらその男性恐怖症を何とかして、男を捕まえなさいな」
「男は…嫌です…」
「そんなこと言われてもねぇ…」
リリーのような夢魔は糧となる精を奪えなければ衰弱して死んでしまう。
それはこの世界における一般常識だ。
「あんただって死にたくないでしょうに」
「いいえ!愛のために死ぬのなら怖くはありません!」
「…いや、愛のために死なれてもこっちは困るわ」
そう言って苦笑を浮かべるハーティ。
何だかんだで突き放せないのが、リリーに追いかけられる原因なのかもしれない。