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異世界の王女は現代で異世界の夢を見るか  作者: うあこ
第三章 二人の王女と異世界探検
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幕間 恋愛ゲーム②

前話のタイトルミスってましたが訂正しました

チャイムが鳴り、全員が席に座る。先生が入ってくると、号令が掛かり、礼をする。いつも通りの光景だ。


「今日は転校生を紹介します」


 その先生の発言に、クラスが一時騒然となる。転校生といえば、クラスの一大事だ。


「それでは、自己紹介をお願いします」


 教室に、朝出会ったルッカが入ってくる。


「ルッカ・グランツだぞ! よろしくなんだぞ!」


 俺は予感していた。同じクラスになるのではないかと。だから驚きは少なかった。


「あ、凪だぞ! 同じクラスになれて嬉しいぞ!」


 その言葉で、またクラスがざわついた。


「お前、転校生と知り合いなのかよ」とか、「抜け駆けか? お前には委員長がいるだろ!」とか、言われのないことまで言われている。


「ちょっと、私は関係ないでしょ?」


『いつも夫婦漫才してるくせによく言うよ!』


 イーリンからもからかわれ、なぜかとばっちりを受けているフィオナだが、下手に庇うと悪化しそうなので黙っておく。


「知り合いならちょうどいいわね。隣の席にしましょうか」


 先生の一言で席が決定した。隣の席に座ったルッカが、こちらを見てにっと笑う。


「これから、よろしくなんだぞ」


「こちらこそ、よろしく」


 授業が始まる。いつも通りの静かな時間に、俺はシャーペンをノートに走らせる。ルッカはまだ教科書を持っていないようなので、席を寄せて一緒に見せてあげる。


「凪は優しいんだぞ。ルッカは嬉しいぞ」


「これくらい普通だよ」


 ふと視線を感じて顔を上げると、フィオナがこちらを睨んでいた。しまった、少しうるさかったかな。


「少しだけ声を落とそうか。迷惑になったら悪いからね」


「了解だぞ」


 小声でやり取りをしているのに、なぜかさらに視線が強くなったような気がする。凄く睨まれている……。


 休み時間になると、フィオナは俺の席へズンズンと足音を立てながら近づいてくる。


「授業中にお喋りとは、随分と余裕なのね。そんなに勉強には自信があるのかしら」


 随分と機嫌が悪いようだ。


「別にそういうわけじゃないけど、転校初日のルッカが楽しく学校を過ごせるようにと思ってさ」


 その時、プツンと何かが切れる音が聞こえた気がした。


「へぇ、そうなのね。もう随分と仲良くなったのね。私のことは名前で呼ばないくせに、ねぇ?」


 怖い笑顔で迫ってくる委員長。やばい、やらかしてしまったようだ。


「仲良くって、別に普通だよね、ルッカ」


 助けを求めて横を見るが、ルッカの姿はなかった。


「あ、あれ!? ルッカ!?」


「休み時間になってすぐに教室から出ていったわよ? 気付かなかったのかしら?」


 なおも笑顔で迫ってくる。あまりの迫力に、ひっと声が漏れる。


「あ、えっと……悪かったよ、フィオナ」


 俺がそう言った瞬間、フィオナの頭からプシュー! と煙が吹き上がったかのように、顔が真っ赤に染まった。


「き、急に呼ばないでよ! ビックリするでしょ!?」


「ええ……」


 フィオナはそれだけ言うと、自分の席に戻っていってしまった。なんだったんだろうか。


『素直になれない、青春だね!』


 イーリンは楽しげに、俺とフィオナのやり取りを見ていた。


 放課後になった。特に部活動には所属していないので、そのまま帰る準備をする。


「凪、今日は委員会もないから一緒に帰りましょう」


 家が近いため、たまにこうして一緒に下校することもある。フィオナの提案を、俺は素直に受け入れた。


「うん、一緒に帰ろうか」


 グッと拳を握るフィオナには気付かずに準備を済ませると、二人で教室を出る。


 廊下を歩いていると、前方にルッカの姿を見つけた。


「ルッカはどこか部活動には参加しないの?」


「うーん、一通り調べたけど、特にやりたいことがないんだぞ。帰宅部でいいんだぞ」


「なら、一緒に帰る? 家、多分近いよね」


 ぶつかったあの曲がり角は、家からそう遠くない場所だ。あそこでパンを咥えていたのだから、家もあの辺りなのだろう。


「え、ルッカも?」


「ダメ?」


 フィオナは一瞬驚いて躊躇ったが、すぐに笑顔を作って答える。


「ま、まぁ別にいいんじゃないかしら……まだ心細いでしょうし」


 プルプルと震えている気がするが、とにかくフィオナの許可も出たので、三人で下校することになった。


 帰り道、電信柱の影にダンボールが置いてあるのが目に入る。


「もしかして、捨て猫かしら」


「かもしれないね……」


 三人で近づく。捨て猫であるなら、保護して飼い主を探してあげないといけないかもしれない。


「猫じゃないんだぞ」


 覗き込んだルッカがそう言うので、俺も中を覗き込んでみる。


「えっと……スライム?」


『拾ってください』と書かれたダンボールの中に、スライムが鎮座しており、ぷるぷると震えていた。


「可哀想に、一旦家に連れて帰ろう」


 三人で俺の家に向かう。フィオナが「凪のお家に! 入っていいのかしら!?」と、なんだかテンションが高いのが気になるが、兎にも角にもこの子の保護が先だ。


 家に連れ帰ると、俺は冷蔵庫から冷たいお茶を取り出し、コップに注いでみんなに手渡す。


「今日は親もいないから、くつろいでくれていいよ」


「親もいない家……!!」


「怖いぞ……」


 ハイテンションのフィオナにビビるルッカ。さて、このスライムの子をどうしよう。


「スライムって何食べるんだろう」


「なんでも食べるわよ? 毒でもない限りは」


 フィオナが知っているらしい。色々と話を聞いてみようと思い、思いつく限りのことを尋ねた。ルッカからも少し情報があり、まとめるとこうだ。


「つまり、ご飯はなんでもいいけどたくさん食べるからこまめにあげる。排泄はしないし、散歩も必須ではないけど、たまには外に連れていってあげる。乾きにも弱いから、水場を用意すること。よし、分かった」


 俺はお風呂場に連れていくと、水を張ったままの湯船の近くにスライムを置いた。


「これで問題ないかな」


 ぷるぷる震えながら縦に伸びるスライム。どうやら大丈夫なようだ。


「ありがとうー。助かるー」


 ん? 誰の声だ?


「こっちだよ、こっち」


 辺りを見回していた俺は、声のした方へ顔を向ける。


「スライムが喋ってる?」


「初めましてー? ゼラだよ。よろしくねー」


「よ、よろしく。俺は一ノ瀬凪って言うんだ」


 混乱しながらも名乗りを返す。ゼラは湯船に飛び込むと、水にぷかぷか浮かんだ。


「ご飯は何が食べたい?」


 とりあえず本人に聞けるなら、本人に聞いてみようと問いかける。


「んー、なんでもいいよ? 生ゴミでも鉄くずでも食べられるからー」


 たくさん食べるらしいし、普通にご飯を作っていたら大変なことになるかもしれない。少し考えないといけないな……。


「分かった、考えておくよ。しばらくここにいる?」


「うんー。ここにいるー」


 じゃあまた後でね、と声をかけてダイニングに戻る。


「あの子、喋れたみたい」


「ええ? スライムは普通、喋らないのだけれど」


「驚きなんだぞ」


 二人も、喋るスライムは初めて見たらしい。驚いているのが顔を見れば分かる。


「本人もご飯はなんでもいいって言うんだ。何を用意すればいいかなぁ」


 悩んでいると、フィオナも一緒に「そうねぇ」と考えてくれている。


「一番手っ取り早いのは、ゴミを食べてもらうことね。ゴミの集積場が近くにあるなら、こっそり潜り込んで食べてもらうのもひとつの手よ」


「ゴミとはいえ、それはなぁ……」


 しかし他に方法も思いつかない。俺は仕方なく、近くのゴミ処理施設に夜、ゼラを連れて出かけることにした。

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