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異世界の王女は現代で異世界の夢を見るか  作者: うあこ
第四章 二人の王女とお店経営
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年越し

 きたる年末の31日に向けて、俺たちは盛大に祝う為の準備を開始した。31日の夜から始まり、翌日の初詣まではみんなで過ごす予定だ。


「私は豪華なおせちを作るわ!」


 鼻息荒く、気合十分といったフィオナ。


「じゃあ俺とルッカで買い物にでも行こうか。フィオナ、必要な物があったらメモしておいてくれると助かる」


「ええ、分かったわ」


「買い物行くんだぞ!」


 フィオナが買い物メモを作成している間に、庭にテーブル等を設置していく。簡単な机や椅子はルッカが秒で仕上げてしまうので、俺はそれを運んで設置する。


「人数が多いから庭でやるのは仕方ないんだけど、ちょっと寒いね」


「防寒対策が必要だぞ」


 庭の防寒対策といっても、出来ることは限られてくる。風よけを付けるとか、せいぜいそれくらいなものだろう。


「風よけでもつける?」


「うーん……ビニールハウスみたいに囲っちゃうんだぞ」


 ルッカが懐からメモ用紙を取り出して、それに書き込みながら説明をしてくれた。


「パーティー会場の四方と天井をビニールで囲って、中に温度調節用の魔道具を設置するんだぞ。これで暖かくパーティーが出来るんだぞ」


 俺はその説明を聞きながら、「へー」と感心しつつ、疑問に思った事を聞いてみる。


「最近、魔道具をそれなりに作ってるけどさ、魔力って大丈夫なの?自然回復を待つしかないんでしょ?」


「これくらいの魔道具ならそんなに魔力は必要ないから心配いらないんだぞ。それに、残しておいても魔力がどうしても必要な場面って、そうそうないんだぞ」


 まぁ現代で生きている限り、魔法なんてそもそも存在しない技術であるし、必要ないと言えば無いか。


「まぁ大丈夫ならいいんだけどさ、無理はしないでね」


 そんな会話をしているとフィオナが俺を呼ぶ声が聞こえたので、ダイニングへと戻る。


「呼んだ?」


「買い物メモが出来たから、お願いしてもいいかしら」


「分かった、行ってくるよ」


 買い物メモを受け取り、ルッカと一緒に家を出る。二人でスーパーに向かい、手分けしてカゴに品物を入れていく。


「これで全部かな?」


「お菓子もいっぱい買うんだぞ」


 別でカゴを取ってきて、そこに大量にお菓子を放り込んでいくルッカ。まぁパーティーだしいいかと俺は何も言わなかった。お金に関して何か言うことも無いが、普段から健康面で食べ過ぎには注意をするようにはしている。


 二人で買い物袋を持って家へ戻ると、フィオナへ袋ごと手渡す。


「頼まれていた買い物終わったよ」


「ええ、ありがとう」


 庭へ戻り、先程ルッカと話をしていたビニールハウスっぽいものを設置していく。こちらもルッカが直ぐに仕上げてしまったので、キャンプよろしく杭で地面に打ち付けて固定していく。あくまで簡易のハウスなので、留まれば良かろうというものだ。


『何してるの?』


 杭を打っているとイーリンが寄ってきて尋ねてくる。


「31日のお祝いでみんなが集まるからね、それの準備だよ」


『お祝い!楽しみ!』


 イーリンも頭を激しく左右に振っては、楽しみだと喜んでいる。


『僕もなにか手伝いたい!』


「え?手伝いかー……」


 イーリンに手伝ってもらえるようなものが何かあったかなと考えるが、特に何も思いつかない。仲間はずれにされていると感じるかも、と俺はなにか無いかと必死に頭を巡らせた。


「そうだ、じゃあ誰かがつまずいたりしないように、大きめの石とか長い雑草とか生えてたら取り除いてくれる?」


『分かったー!』


 イーリンがせっせと石を集めたり、草を抜いたりしている姿を見て、俺はほっこりした。


「当日は、小日向さんも呼ぶのよね」


「うん、そのつもり。折角だしね」


 後で電話して聞いてみようと思っていたが、よく考えなくても正月はご家族と一緒に過ごす予定かもしれないし、都合が合わない可能性もある。


「なら早く電話して聞いてみた方が良いでしょうね」


「うん、電話してみるよ」


 俺は小日向さんの電話番号へコールした。


「もしもし、一ノ瀬さん?」


「ああ小日向さん。正月なんだけどさ、もう予定は決まってる?」


「正月ですか。今年は父方の実家で集まりがあるそうなんですが、私は遠いですし、お断りしたところなんで暇なんですよね」


「そう、それならさ。家でパーティーするんだけど、良かったら小日向さんも来ない?」


「ええ?いいんですか?」


 お邪魔して申し訳ないという気持ちもあるだろうが、それでも声が弾んでいる辺りは脈アリと言ってもいいかもしれない。


「ぜひ、みんな喜ぶよ」


「そういう事でしたら、お邪魔させてもらいます」


 電話が終了し、フィオナたちに向き直る。


「小日向さんも来れるって」


「全員集合なんだぞ!」


「より一層気合いが入るってものね」


 こうして、仲の良いメンバー全員の参加が決定となった。


 31日の夕方、俺たちが家で待っているとカルミラたちがやって来る。


「お招きに預かり感謝するぞ」


「パーティー超たのしみ!あげてこ!」


「いっぱい食べられるのうれしーなー」


「わ、私も参加しちゃっていいんでしょうかぁ」


 みんな今日のパーティーを楽しみにしていてくれたようで、ホストとしては嬉しい限りだ。


「後は小日向さんが来たらいつでも始められるね。イーリンとゼラには魔法を掛けておいてね」


「ええ、任せてちょうだい」


『お願いします!』


 トコトコ歩いてフィオナの傍に行くイーリンと、ぽよよん揺れながらゆっくり近付くゼラ。二人?にフィオナが魔法を掛ける。俺たちの目には普通に見えているが、これで小日向さんには犬と猫に見えるはずだ。


「私も目立つのでうさぎになっておきましゅ」


 舌を噛んで痛そうにしながら、イリスも獣化をしてうさぎの姿になる。完全獣化を解除できるようになった後、改めて獣化を行う事で、いつでもうさぎの姿を取れるようになった。


 タイミングよく全ての準備が出来た時、チャイムが鳴った。


「お邪魔します」


「いらっしゃい、小日向さん。待ってたよ」


 これで全員揃った。楽しいパーティーの始まりだ。


「わぁ、凄い!犬に猫にうさぎさん!モフモフし放題じゃないですか!」


 興奮した様子でイーリン、ゼラ、イリスを撫で回す小日向さん。本来モフモフなのはイリスだけなのだが、小日向さん的にはモフモフに感じているので問題はない。無いのだが……


「なんかこう、罪悪感が」


「仕方ないとは言え、騙してると言えばその通りだものね」


 ゼラが撫でられ嬉しそうにプルプルしているのだが、小日向さんはモフモフだと言うアンバランスな感じに苦笑が漏れる。


「それにしても、ここは冬なのに暖かいのう」


「ルッカが魔道具を置いてるんだぞ、暖かいんだぞ」


 ルッカが小声でカルミラと話している。小日向さんもいるし、あまり大声で出来る会話ではない。


 みんなで庭でバーベキューをしたり、フィオナの料理を摘んだりしながら楽しい時間を過ごす。時折イリスがラビットランの中で走り回ったり、うっかりイーリンが土の中に埋まろうとしたり、小さなハプニングはあったものの、笑いが絶えない楽しい時間を過ごすことが出来た。


「そろそろ夜も遅くなってきたし、今日はお開きにしよう。明日はフィオナが作ったおせちもあるからね」


「それは楽しみですね、ありがとうございますフィオナさん」


「いいのよ、好きでやっているんだもの」


「ルッカも買い出ししてお手伝いしたんだぞ!」


「ルッカは偉いよ、ほんと。お店もあるし、働き者だよね」


「ちょっと凪、私だってたまには褒めてもいいのよ?」


「それはそうなんだけど……フィオナに直接そういう事言うのって、なんだか恥ずかしいね」


 俺が少し照れながら話していると、横にいつの間にかカルミラがいた。


「なんじゃ、男じゃろ?言葉にしないと伝わらない事はあるんじゃぞ?」


 そーだそーだと周りから煽られ、俺はフィオナに向かい合った。


「ごほん。……いつも、ありがとう。美味しい料理もそうだけど、気遣いも上手で凄く助かってる」


「ええ……いいのよ」


 フィオナも照れて顔を背けている。


「今だ!やるんだぞ!」


 え?と思ったのは俺とフィオナだけだったようで、周りは期待の眼差しで俺たちを見ていた。


「ほれキース!キース!」


 カルミラがケラケラ笑いながらそう連呼する。小日向さんですら笑いながら手を叩く有様だ。


「ちょ、みんな」


「キース!キース!」


 俺がフィオナを見ると、満更でもなさそうに顔を赤くしている。そして目を閉じて――


「みんな見てるよ!?いいの!?」


「いいのよ。こうなったら凪は私のってアピールする事にするわ。ほら、早くしてちょうだい」


 真っ赤なフィオナの唇に、俺は少し躊躇したが、自分に喝を入れてそっと重ねた。その瞬間、割れんばかりの拍手と野次が飛んだ。


「幸せにしてやるのじゃぞ!」


「お幸せにーだぞ!」


「式は呼んでくださいねー!」


「あ、あはは……」


 なんとも気恥ずかしいなと思って腕時計を見ると、もうすぐ日付けが変わろうとしていた。


「ほら、もうすぐ来年だよ。皆でカウントダウンだ!」


 どこからともなく大きな時計をルッカが皆の真ん中にドン!と置いた。


「用意がいいわね」


「事前に準備しているんだぞ」


 時計の秒針をみんなで見ながらカウントダウンをする。


「3、2、1……」


 カチッと時計の針が0時丁度を指す。


「ハッピーニューイヤー!!」


 いつまでこうしてみんなで居られるのかは、正直分からない。こうして今年も、またみんなで集まって新年を祝えたらいいのにな、と俺は思わずには居られなかった。

これで一旦このシリーズは終了になります。最初の頃は文章量も短く、物足りなかったかもしれません。段々慣れてきて多少はましになったと思いたいです。続きを書くにしろ、新しいシリーズを書くにしろ、執筆はこれからも続けたいと思っています。縁がありましたら、また読んでくれると嬉しいです。

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