42 エピローグ
「あの! 大変なのです、わたしの村が魔物達に襲われているのです」
なんだそれは?
いきなり斜め上の展開だった。
「二人とも落ち着いて。順序よく話すんだ」
「家にマグロをとりに行ったら、レイエス村中にスタンピード警報が流れていて……今までこんな事は一度もなかったのに」
「それは大変じゃないか。村の状況は?」
「今は自警団で抑え込んでいますが、すぐに突破されるでしょう。何とかわたしが戻るまで耐えて頂くようお願いしてきました、村のみんなは中央の広場へ点呼確認を含めて集まっています」
事は一刻を争うようだ。
「その……みんなに力を貸して頂きたいのです」
「リーゼちゃん! ネオ・ワープポータルを出してちょうだい! 四の五の言ってる暇はないと思うの。
戦える人は魔方陣の中に入って!」
さすがはソニンちゃん、一言でみんなを動かした。
リーゼは、直径10メートルほどの魔方陣で中規模のネオ・ワープポータルを唱えた。
どの程度の魔物がいるのかも分からないのに、誰一人迷わず魔方陣に入っている。
これは……今までの仲間同士の絆、信頼感がそうさせたんだと俺は思った。
――そして魔方陣から転送され一同は、リーゼの村へ。
レイエス村は大きく漁港側と、内陸側で魔物対策が異なっている。
内陸方面は簡易的な結界が張れらた鉄柵がある。
これは村の神父が定期的にメンテナンスをしているようだ。
イレギュラーな魔物の進行があるとスタンピード警報を発動する仕組みだ。
漁港側は防波堤に結界を施してある。
やや沖合にも消波ブロックがあり、ここを魔物が通過すると警報が鳴る仕組みだ。
今はその両者から、最高ランクの警報が鳴り響いている。
「3手に別れよう! 内陸側は回復と土魔法が使えるリーゼ、白兵戦の得意なシリウス、そして父さんは2人をサポートして欲しい」
「了解しました」
「ユーベル君なら信頼できる、従うよ」
「ユーベルも見ないうちに一人前になったな。よし! のってやる!」
3人は内陸側でバリケードを敷いている自警団に合流するようだ。
「次、漁港側はどんな相手でも得手不得手のない魔法も剣も使えるシエラ、相手に合わせて臨機応変に魔法が使い分けられるソニンちゃん、水性の魔物に相性のいい火魔法の使えるマリーナ、頼む」
「分かったよー。お兄ちゃん、すごい! リーダーみたいだね」
「なるほどー。魔王よりは勇者よりって感じかなー。でもこういうしびれる指示いいかも」
「ユーベル君に従っていれば、大丈夫なような気がするから不思議よね」
3人で沿岸で海中から上がってくる魔物に対峙する。
「そして、オベールさんとオリビア、中央広場に行って怪我人の手当てと、点呼状況でもし行方不明者がいれば俺に知らせて欲しい」
「ユーベル君、君が真の勇者に見えるよ」
「ユーベル様、やはりわたくしの目に狂いはありませんでした。わたくしの力存分にお使いください」
俺自身、オベールさん、オリビアに同行しつつ、各所に警戒に当たるつもりだ。
そして俺にはこういった時の為に備えていた特技があった。
射程を自由に設定できる魔力矢だ。
未熟なうちは具現化した矢が強力すぎる為、目標を貫いた後、地面を無駄に抉り、森や山に大変な被害が出ていたのだ。
それでは俺自身が大量殺戮兵器になってしまう。
これでは駄目だとソニンちゃんに相談したところ、的を貫いた瞬間爆散する矢を作ればいいんじゃない?
という一言で片づけられてしまった。
だが、なるほどー。
それなら自然破壊の懸念がない。
ここばかりはソニンちゃんの優秀さに感謝した。
そしてそれからは完全な兵器になるのだが有事の際の為に密かに修練をつんでいたのだ。
その有事がもうこようとは思っていなかったのだけれど。
これを利用し、飛行系の魔物を全方位にわたり、受け持つことにしたのだ。
お馴染みの炎の弓に的を貫いた瞬間爆散する矢をつがえる。
上空の魔物の感知も、シリウスとの戦闘訓練で半径1キロメートルほどの距離まで手に取るように分かるようになっていた。
そして、静かにそして華麗に矢を四方八方に放っていく。
その全ての到達先にはドラゴン、ワイバーンなどの凶悪な飛行モンスターがいて、射抜かれた事すら気付かず爆散していく。
村から離れた遠方で次々に汚い花火がうちがっていくようだ。
いつかは綺麗な花火に見えるよう改良を施したいな。
大勢は決した。
俺達仲間達の連携の勝利だった。
怪我人は数名いたものの、こちらには回復役も万全なのだ。
程なくして仲間全員が広場に集まった。
報告としては、魔物は全て駆逐したとの事だ。
「それにしてもユーベル君。あたしのあの一言を体現するとはねー。将来お嫁さんになっていい?」
「それはダメです! だってわたし、ユーベル様専用の聖女になるのが夢ですし」
えっ?
そういえばそんな事言ったことあったっけ?
「わたしだって断固反対よ。シリウスに言った事、実現させるにはわたしが幸せになるしかないんだもん! 無論ユーベル君とね!」
いつの話だ?
「わたくしも参戦してよろしいですか? もしユーベル様が年老いてもわたくしはピチピチでいられます。如何でしょうか?」
それは……どうなんだろ?
「お兄ちゃん!! 何でこんなところで女の子達を口説いてるのよ! わたしだって……仲間に入りたいのに……」
どっちかと言うと、口説かれてる気がしないでもないけど。
大丈夫。
シエラはいつだって最愛の家族だから。
村に平和が戻った。
スタンピードは世界各地で不定期に起こる為、確たる対策は王都くらいしか立てられないのが現状だそうだが、やれることはやっておきたい。
「わたくしの防御結界であれば100年は魔物の進行が防げます」
オリビアが村全体を覆うようにして守護結界を張ってくれた。
あちこちから、我らに女神様が現れたと大騒ぎだ。
オリビアもまんざらでもないらしい。
チヤホヤされたいのかもしれない。
村人全員に感謝され、リーゼの家族には娘を一生お願いします、勇者様と何故か懇願された。
そしてお礼を是非とも言われたが、俺達は助けたいからここに来たと言って断った。
こういうセリフ、一度言ってみたかったんだ。
「では、せっかくなので最高級のマグロを一本もらっていくことにしましょう、お母様が待ってますので」
俺達はアイル村へ村のみんなに見送られながら帰ることになった。
「母さん、今帰ったよ」
「リーゼちゃん! マリーナちゃん! どうだったの? ご家族は無事?」
リーゼとマリーナは俺達の元へ駆けつける前に、母さんには村を救い必ず無事に帰ってくるから、最高の料理を作って待っていて欲しいと言付けを入れていったそうだ。
わたし達最高の仲間なら必ず期待に応えて、何事もなかったように帰ってくるからとそう言って。
「ただいま! 母さん、このみんなの笑顔が全ての答えだよ!」
この時の母さんの涙は今でも忘れない。
この日、15歳の女神に生まれ変わったオリビアを祝うために、盛大なパーティーが行われた。
「わたくし、こんなに楽しく過ごせた日、生まれて初めてです」
何万いや、永久に生きてきたオリビアのこの言葉はずっしり重く感じた。
「半年後、わたしとオリビアちゃんは絶対みんなの元に行くから、それまで元気に待っていてよね!!」
シエラが張り切って、最高級マグロを自慢の剣技で完膚なまでに解体していった。
俺達はこの日、この時、この味を一生涯忘れることはないだろう。
――俺、西野隼人と、如月結衣は、儚く切ない数奇な運命を辿ったが、転生後に誰よりも素晴らしい素敵な人生を手に入れたのだった。
ユーベルとシエラと言う世界一の兄妹として……
「君、持っている魔法属性は何?」
今、もしこう聞かれたのなら、俺は間違いなくこう答えるだろう。
「そんなものは全くありませんが、妹属性なら最強です!」
最後までお読み頂きありがとうございました。




