24 お引越し
王国アカデミー高等部入学式2日前。
俺は、寮へ来ていた。
馬車で身の回りの物を運んできたのだ。
今日はアカデミーが編入生徒の為に校内を開放しており、シエラが見てみたいと一緒についてきている。
荷解きを手伝ってくれるそうだ。
寮の玄関は大きなロビーがあり、奥にはコンシェルジュサービスのようなコーナーがあり、女性が待機していて、俺達を見るなり丁寧にお辞儀をしてきた。
俺とシエラもかしこまりながらも頭を下げる。
なんだここは。
コンシェルジュが常駐とか?
「お兄ちゃん、前世でも一人暮らしだったって言ってたでしょ?」
二人きりになった時はたまに前世の事を話す。
別にもう両親に聞かれてもいいんだけど、どうも俺もシエラも自嘲する事はある。
「うん、その時の部屋よりだいぶ豪華だよ」
部屋に入った時、その豪華さに驚いた。
一人部屋なのにダブルサイズのベッド、本革のソファーもある。
なんと家具が元から用意されていた。
広さも12畳ほど。
バストイレは別々で、疲れを癒す風呂がやたら大きい。
「だよね。これってもう一流ホテルのレベルだよね?」
「俺としてはもっと質素な方が好みなんだけどな」
正直6畳1間ユニットバスで十分だった。
「でも平民でこの豪華さだよ。貴族の部屋って……」
正直想像がつかない。
「もっとすごいんだろうな。きっと俺だったら落ち着かないかもな」
「わたしもだよ」
日用品や着替えを荷解きするだけで、簡単に引っ越し完了。
「ねぇ。お兄ちゃん。引っ越しって女の子の方が大体荷物多くなるでしょ? リーゼさんとマリーナさんのところ行ってお手伝いしようよ」
シエラとしては彼女達の事が相当気になるらしい。
俺達は玄関にいたコンシェルジュの女性に、リーゼとマリーナの部屋を聞いた。
快く答えてもらえた。
きっとシエラがいたからだろう。
まずは同じ階にいるはずのリーゼだな。
彼女はもう到着しているのだろうか?
リーゼの部屋をノックした。
「あ! ユーベル様! お久しぶりです! ずっと会いたかったです……あっ!」
二回驚いたようだが、二回目はシエラに気付いたからだろう。
「リーゼ。元気だったかい? 今日は妹のシエラと引っ越しの手伝いに来たんだ」
「リーゼさん、初めまして。シエラと申します。兄と仲良くして頂いてありがとうございます」
「いえ、こちらこそユーベル様にはものすごく助けて頂きまして、感謝しかないです」
「すごい! リーゼさん、ほんとに可愛いハートツイン! とっても似合ってます」
リーゼのアピールポイントは念入りに伝えたつもりだ。
「いえ。そんな……巻くのは難しくないんですよ。後で巻き方お教えしますね。それよりシエラ様の方が息を飲むほどの可愛らしさですね。本物のお姫様みたいです」
「いえ。兄ほどではないです」
照れるな。
「そういえばリーゼ。荷解きとかは大丈夫?」
「はい。ちょうど終わって一段落しましたので、わたしがユーベル様のお手伝いに行こうと思っていました」
「じゃあ、次は一緒にマリーナのところかな」
「はい。正直貴族のフロアはわたし一人では行きづらかったので」
”……お兄ちゃん。すごい可愛い人だね。わたし仲良くなれそう”
シエラが耳元で囁いてきた。
「ユーベル様から、シエラ様の事はよく聞いていました。すっごく可愛くて大事にしているって。あなたを見ていたら分かる気がします」
「そんな事ないです。それにシエラでいいです。わたし12歳ですし。でも来年は頑張ってここの中等部に入りたいと思ってます」
「じゃあシエラちゃんで。シエラちゃんが来てくれたら、この学園生活がもっと楽しくなりそうです」
「ありがとうございます。じゃあ後でその髪の巻き方教えて下さい。ほんとに可愛いので」
「お安い御用です」
「じゃあマリーナのところ行ってみよう」
俺達は5階にある貴族のフロアに行った。
前世でいうエレベーターのようなものが備え付けられている。
どうやら魔道具の一種だろう。
魔力で動くのだろうか?
魔力の供給は何処からしているのか?
ここは疑問が絶えない。
このアカデミーなら俺の能力解析もきっと。
楽しみは計り知れない。
貴族のフロアは3階から上だ。
平民は少ないので1階と2階のみの割り当てになっている。
まあ部屋自体は勿論不満はないが。
3階が男爵、4階が子爵、5階が伯爵、6階が侯爵。
爵位が上がるにつれ、人数が少なくなるので部屋の広さは増していく。
マリーナの部屋をノックした。
「はい! 今行きます」
心地よい声だ。
マリーナの声である。
「あ! ユーベル君。それにリーゼ! いらっしゃい! 会いたかったよ……あ!」
マリーナも同じ反応だ。
12歳金髪美少女にはやはり驚くらしい。
「あなたがシエラちゃんね! すごっ! お人形みたいに可愛い!! いらっしゃい!」
「兄がお世話になっています。兄と仲良くして頂いてありがとうございます」
「マリーナ。お手伝いに来ました」
「ありがとう。わたし結構荷物が多くなっちゃってさ……一応助っ人も来てるんだけどね」
すると、奥から段ボールを抱えた男子が出てきた。
「おっ! ユーベル君、リーゼ。それに君は……シエラちゃんだね! いらっしゃい!」
「シリウス! 来てたのか」
「まあ僕の方は荷物少ないからすぐ終わったし、次にまず片すならここからだろうと思ってね」
「シリウスさん、兄と仲良くして頂きありがとうございます」
「すごいな。ユーベル君、君が言っていた通りお姫様みたいに可愛いじゃないか? いやそれ以上だ」
「まあ、それほどでも……あるかな」
「わたしもせっかく来たのでマリーナさんの荷解きお手伝いしますね」
「シエラちゃん、ありがとう」
それにしても部屋が広い。
おそらく侍女とかお付きの人が泊まれるようにリビング、主寝室の他に2部屋寝室があった。
収納もたっぷり。
その分、マリーナの荷物もたっぷりだった。
大方片付いた時には夕方近くになっていた。
「皆ありがとう。すごい。こんな綺麗になったよ」
「マリーナ、王女様のお部屋みたいだね」
「そうしたら。今日もやっぱり皆で夕ご飯食べに行こ!」
今日はシエラもいる。
そして、驚愕していた。リーゼの食いしん坊ぶりに。




