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異世界ラーメン屋台戦記~俺じゃなくて屋台がチートスキル持ち!? 借金完済しないと俺が死ぬ!?~  作者: 夢野又座/ゆめのマタグラ
第1章 ラーメン屋台店主、異世界に立つ

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5.吉備丸「スキル発動!」


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 ヴァレン歴107年、春、夜。


 やや晴れ。やや風あり。


 オーヴェスト王国騎士団&民兵 300人


      VS


 ラーメン屋台『吉備丸』

 店主:最上彦丸


 勝利条件

◎300食分売り切ること。

〇オーヴェスト陣営の胃袋を満足させろ。

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 


 いざ開戦だ。


「えーでは、皆さん。順番にお出しするので、こちらに1列で並んでください。お金はボクが受け取ります」


 騎士見習い用の鉄製兜を逆さにして持ち、並んだ客より前払いで代金を貰う。

 最初こそ5人、6人だった行列も、噂はすぐ広まり数十人の行列となる。

 なので客を捌くスピードが命。メニューは1つのみなので、俺はラーメンを作ることのみに集中できる。

 

「はいよ。まずはお先の5名様、ラーメンあがりました」

「おぉ。早いな」


 ラーメンの丼は外側は赤く、内側は白く。

 オーソドックスな陶器の器だ。

 普段の供給と御なし様に兵士達は1つずつ受け取り、席へと自分で運んでいく。

 

「フォークとレンゲを使ってくれ。食べ終わったら、そのままにしてくれてれば片付けるぜ」


 ハシ……は少なくともマジカルーナでも、オーヴェストでも使ってる人間は見た事が無い。

 しょうがないので木製のフォークを使って貰っている。


「ふー、ふー」


 兵士達は少し熱めのスープを冷ましながら、ラーメンを食べていく。

 マジカルーナで売っていた時も思ったが、麺をすする人間はほぼ居ない。

 思ったよりも静かな光景だが、


「んっ、むっ――美味い!」

「なんて奥行きのあるスープだ……こんなの味わった事が無い!」

「この薄切りの肉、噛むほど味が染み出して……うめぇ!!」


 反応は上々のようだ。

 その反応を見た他の兵士が「俺も……」「なんだあれ」とか言いながら列に加わっていくのが見える。

 列はどんどん伸びる。

 

「ふぅ――はい、次の5名様どうぞ!」


 鍋の大きさの関係上、1度に茹でられる麺は5つまで。

 茹で時間は1分半。その間に丼と具材の準備。タレを入れ、スープを注ぎ、しっかり湯切りした麺を入れ、具材を順番に乗せ――5つ同時にカウンターへ出す。

 これが終わっても、すぐに次の麺の準備に入る。

 トータル3分ほどで5杯。これを休みなく動く――甘く計算していたつもりは無いが、やはり実際に大人数を捌くとなると、かなりキツい。

 春先でも夜はかなり冷え込む。だが、厨房の中はサウナのように熱い。


「お次の方、どうぞ!」


 普通のラーメン屋だと1日50杯~80杯ほどで黒字に、人気店なら150杯以上を売り上げるという。

 しかし今日のこれは来るかどうか分からない客相手ではなく、競合店もなく、ただ1店舗に全客が集中しているようなものだ。

 これをバイト歴含めても6年ほどとはいえ、新人が1人でこなすには、かなりのハードメニューだ。


「お、お客さん凄いよ。大丈夫!?」

「まだ大丈夫だけど?」


 お金を一旦屋台へ預けに来て、食器も片付けていたエリクが驚いたような顔をしている。


「凄い汗かいてるけど……」

「お? まぁ今日は暑いからなぁ――へいおまち!」


 そんな会話をしながらでも手は動かす。

 横目で確認すると、スラ子も頑張っているようだ。


「――(油うまいなぁ)」


 スラ子は。エリクが回収してきた丼を自身の体内に収め、少しブルブルと震え――ペッと吐き出す。

 するとどうだろうか……丼は新品同様に奇麗になっているではないか。

 それを軽く布巾で拭いてから、スラ子は食器棚に丼を戻してくれる。エラいぞ。


「もうすぐ70人超えちゃうよ……」

「まだそんなもんか」


 しかしここで列の後方。

 つまりまだ金を払っていない最後尾付近の一部の客が離れているのが見えた。


「まだ時間掛かりそうだな」

「明日も早いし、今日は辞めとくか」


 人間、人気のある店が行列が出来ていれば流行ってると思い並びたくなる心理もあれば、それが長蛇の列なら「面倒だしもういいや」ってなる心理もある。

 金は払ってないのでまだ客では無いとは言え、ここで多くの客を失えば「どうせ並んでも食べられない」なんて悪評が広まっちまう。

 悪い噂なんて広まり方が段違いだ、特にこんな狭い集団の中なら特にだ。


「仕方がねぇ。背に腹は代えられねぇ!」


 俺は麺を茹でる間、少しだけ厨房を離れ、足元にあるいざって時の隠し金庫を開ける。

 そこには金貨が20枚ほど――借金返済には使えない金だ。

 その全部をひっつかみ、タッチパネルであるスキルを選択。2拍手拍子の後、賽銭箱へ投げ込んだ。


『毎度あり~♪ 吉備丸は“影分身”のスキルを使えるようになったわ♪』

 

 値段が高いせいで購入に踏ん切りがつかなかったが――。


「よし吉備丸。影分身、発動だ!」


 吉備丸の全身が一瞬だけ強く光り、その次の瞬間には――厨房に、俺がもう1人居た。


「えぇッ!? 彦丸が2人居る!?」

『よっしゃ、これで2人馬力よ!』


 事前にスキルの内容は確認している。

 これは()()のある分身を、金を入れた分だけ出現させられるスキルだ。

 すべての分身は俺の能力、思考、記憶を有しており、初回サービスで()()出せる。

 そしてこれは――吉備丸本体にも有効だ。


「なんだ。店が増えたぞ?」

「へへっ。気分は忍者だってばよ」


 増えたのは俺だけじゃない。

 吉備丸もだ。

 これで屋台は2つ、俺も2人。

 つまりラーメン調理能力は2×2で4倍だ!


「え、2倍じゃないの……?」

「エリク! お客様を交互に屋台に通してくれ!」

「スラ子! エリクは忙しくなるから、テーブルの食器の片づけは頼んだぞ!」

「――!(がってんだぜ!)」


 俺2人によるラーメン生産能力の向上により、さらに客の処理能力が上がる。


「いらっしゃいませー」

「はいよ。5人前、どうぞ召し上がって下さい」


 見る見る内に待機列を消化し、それ以降列から離脱する客もほぼ居なくなった。

 2時間過ぎる頃には――ほぼ300食目前まで来ていた。



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