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お姫様の恋 ~ハーボルト王国 王室に嫁いだ姫君たち~  作者: 松本せりか
見た目は17歳、中身は12歳の悪役令嬢
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第47話 ケガをしたキャロル

 クリスが結界を張っているのが分かる。

 周りに人が増えても、皆無反応だった。

 私はもう抵抗するのをやめた。涙は止まらないけど。

 体に力が入らないし、クリスの能力が体に(まと)わりついているのがわかる。

 多分、もう何をしても逃れられない。

 私は覚悟を決めて目を閉じていた。



「クラレンス、入るよ」

 侍女が開けるのを待たずに、クリスは扉を開け放ったが、その先はもう結界を解いてしまっていた。

 へ? クラレンス?

「クリス? キャロルをどうした」

 クラレンスは、私がお姫様抱っこされて、泣いているのを見てギョッとしたようだった。

「どうもこうも、なんでこの危ない状況下で、キャロルから目を離すんだ。ちょっと寝室に行くよ。人払いしてくれ」

「あ? ああ」

 クラレンスは、人払いを指示してから、私達と一緒に寝室に入った。


 私はベッドに降ろされながら、ホッとしていた。

 お部屋ってクラレンスの所だったんだ。良かった。


 降ろされた瞬間。ドレスがゆったりとした寝間着に変わる。


「裸にするわけにはいかないからね。キャロル、ちょっと寝間着をめくるよ」

 そう言って、クリスはクラレンスにめくるように促す。

「ほら、お腹のところをめくって。君がいるのに僕がするわけにはいかないだろう?」

 クリスにそう言われて、ああという感じで、私に言う。

「ごめんね。恥ずかしいだろうけど」

 そういって、寝間着をめくった。

 

 私も一生懸命、首を下に向けてお腹を見る。

 下腹の中央くらいが赤黒く腫れあがっていた。なんか……ぐろい。

「なっ。誰がこんな事を」

 クラレンスが、怒りをあらわにしている。

「あのさぁ。噂流れているの知っているだろう? 妊娠してるかもって。事実無根だったから、良かったようなものの、本当に妊娠していたら流産するだけじゃすまないよ」

 クリスがシレッと言ってるけど、要は、お腹の赤ちゃんを殺すためにお腹を殴ったって事?

 そんな事する人がいるなんて……。


「キャロル。もうすぐ医者が来ると思うけど。来たら痛みを戻すからね」

「治療の為ですね。分かりました」

 あの痛みは辛いけど、仕方ない。だって、今でも血の気が引いていってる気がする。手の力も入りづらい。

「いや。医者の証言も必要だから。そのあと、僕が治療するから大丈夫だよ。しばらくは、見た目だけ残すけど」

 あれ?

「クリス……第二王子殿下。の方ですよね?」

「何? その疑問形。王子の方だけど、それが何」

「だって、優しい」

 そう言うと、心底嫌そうな顔をした。そして、クリスはため息を吐く。

「君の事がね。愛しい事には、変わりないんだよ。賢者と同じで。だからね、君を傷つけた奴の事は許さないから」

 クリスは、にこやかにしてるけど、目が笑ってない。


「ああ。クラレンス。キャロルをこんな目に遭わせた犯人は、捕まえたよ。今、地下の牢屋に入っているはずだ」

「分かった。明日にでも取調官を派遣しよう。……だが、自害してしまわないかな」

 クラレンスが、考え込んでる。

 貴族に忠誠を誓って今日みたいな事をする人達は、毒を歯に仕込んでるんだって。

 

「大丈夫だろ? 毒はすり替えたし」

 クリスがこともなげに言う。

「すり替えた?」

 クラレンスが驚いて訊き返していた。

「きっと、驚くと思うよ。死のうと思って、ガリってやったら、口いっぱいに広がる甘味って」

 なんだか、いたずらっ子みたいにクリスが笑っていた。



 なんだかなぁって思うけど……。クリスが笑っているのなら、安心かな?

 その内に、お医者さんが来て、゛侍医とか言うはずだけど、私に合わせてくれてるのかな。

 その、お医者さんが調書を作るために状態を確認して、おしまい。

 

 お医者さんが帰った後、クリスが長い間私のお腹に手を当てていた。

 最初に痛みを取ってくれて、後は何か真剣な顔をして探っている感じだった。

 ある時を境に、スッと体から緊張状態が抜けた気がした。

 

「キャロル。これで体は大丈夫のハズだけど、まだかなりだるいだろ?」

「うん。体が重い感じがする」

 この前、リリーを国外脱出させた時よりは、かなり楽だけど。


 クリスが頭を撫でてくれる。

 なんだか、賢者の方のクリスみたい。優しい。

「体力回復だけは、キャロルの仕事だからね。ここで、ゆっくりさせてもらったら良い」

 

 そうして、クリスが私の顔の上に手をかざすのが見えた。

 それが、今日の最後の記憶。

 私は、クリスに眠らされていた。

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