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お姫様の恋 ~ハーボルト王国 王室に嫁いだ姫君たち~  作者: 松本せりか
見た目は17歳、中身は12歳の悪役令嬢
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第46話 襲われたキャロル

 私は、クラレンスの執務室の帰りに賢者の間に寄るからと、護衛をしていた近衛騎士に言って謁見の間の前で別れた。


 謁見の間の奥。薄暗い廊下を歩く。

 普段だったら、私が廊下に入ると明かりが灯るのだけど、今日は薄暗いままだ。

 扉の前に立っても、初めて一人きた時のように扉にすり寄って「クリス」と呼び掛けても、賢者の間の扉は開いてくれなかった。

 私はドレスがしわになるのも構わずへたり込む。


 もうどうして良いのか分からない。

 だって、辛い。

 クラレンスの味方をするって決めたのに、側にいるのが辛くなっている。

 いろんな考えが頭の中に浮かんできて、もう泣いてしまいたい。


 うずくまって、どれくらい経っただろう。

 石造りの床にへたり込んでいた所為か、ドレスを着ていてもお尻が冷たくなってしまった。

「こうしていても、仕方が無いわね」

 誰も聞いてないけど……。

 よっこらしょっという感じで、私は立ちあがった。声に出さなかったけど。


 護衛を外してしまったけど、謁見の間を出て少し歩けば、まだ残っている人もいるだろう。

 馬車の所までだったら、大丈夫よね。

 そう思って、そのまま謁見の間を横切って、廊下に出た。

 謁見の間の廊下は薄暗く人通りは無い。


 王宮って、誰もいなかったら不気味だよね。

 幽霊が出そう。

 やだ、考えたら本当にそんな気がしてきた。

 私は足早に、廊下から広間に出ようとしていた。


「キャロル・アシュフィールド様」

 誰か呼んだ?

 そう思って振り向くと、何だか鈍い音がしてお腹にものすごい痛みが走った。

 息が出来ない。

 私は立っていられなくなり、うずくまってしまう。痛くて何も考えられない。


 誰かが走って逃げる音がしてる。

 一目だけでも、見なきゃ。

 そう思って、頑張って顔を上げた。痛みで目が開けづらい。


 そこに見えたのは、私のお腹を殴っただろう男が倒れている姿と、その前に立っているのは。

 光の塊?

 光を(まと)った賢者のクリスに見えるけど……。


「全く。護衛を外してウロウロするなんて、死にたいの?」

 クリスが私の体に手をかざした。

 立てない程の痛みが、スーッと消える。

「消すのは、痛みだけ。大事な証拠だから」

「クリス殿下?」

「正解。やっぱり、見分けがつくんだ」

 何で、そこでため息を吐いてるんだろう? クリス……。


 私を殴った男の方にはわらわらと、騎士や兵士がやって来て、倒れた男を捕縛していた。

「後で取り調べるから、とりあえず牢屋に入れておいて」

 クリスが指示を出している。 


 クリスからお姫様抱っこされそうになってから、気が付いた。

 この体って……。

「賢者様は?」

「さあね。知らない」

 クリスは、私を抱え上げてる。

「このまま、部屋に連れて行くけど良いかな?」

 部屋? 第二王子の?

「だ……め。やめて」

 必死になって言う。だって、そんなことしたら。

「ふうん? でも、僕に会いに来てたんだよね」

 確かにそうだけど、それは賢者の方で……。

「お願い。連れて行かないで」

 暴れようとして、体に力が入らない事に気付いた。

 それでも、必死に体をよじる。


「心配しなくても、何もしないよ?」

 クリスは優しい顔で、賢者のクリスみたいな言い方をする。

「何もしなくても、イヤ。お願いだから」

 賢者の石の方のクリスは、以前、クラレンスを見捨てたと言っていた。

 廃嫡したいって……。

 

 何も無くても、第二王子の部屋で一晩過ごしたというだけで、既成事実が出来てしまう。

 もう、クラレンスの側に居られなくなる。

 

 クリスの腕の中で、私は泣きながら抵抗を続けた。

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