3/3
What I didn't know.
「ありがとうございました」
ふたりを見送ると、店主はテーブルを片づけ、カップを流しへと運ぶ。
よかったね、おばさん。これからはあの子たちが常連になってくれるよ。
でも。コーヒーにタバコ……もう味わえないのは残念だな。
ま、その代わりもっと甘いものが味わえるから、なんてね。
カチャ。
誰もいないテーブルにカップが差し出される。
「コピ・ルアク」
「え?」
「視えないけどいるんでしょう? 感じるのよ、ずっと」
――あ、そうだったんだ。
「気分だけでもね」
おばさんはわたしから少しズレたところを見上げてウィンクした。
――世界はまだまだ知らないことばかり。
Fin.