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白馬



 世界にゾンビが溢れた日、あたしはこのリビングでぶっ倒れていた。

 頭が痛いのは前日に部屋で酒を飲みすぎたせいだろうと思っていたけど、会社に遅刻しそうでそれどころじゃない。

 でも急いで二階から降りた途端に二日酔いがピークに達し、ソファーの上で寝転びそのまま気を失った。


 どれくらい経っただろう。気が付いた時、あたしは外の事など知らないまま携帯電話の日付を確認した。……丸一週間経っている。

 しかも、両親の姿は見えず電話も繋がらない。まぁ両親が帰ってきていたら、あたしは病院のベッドの上に違いないけどそうじゃない。

 現実がなんだか怖くなり確認のためテレビを点けてみた。

 どこもニュースしかしてなくて、化け物がどうの避難所がどうの騒いでいた印象がある。


 本当に一週間経った現実を知り、人間としての違和感が襲う。

 気絶していたとは言え尿意が全くない。

 缶ビールを三本は飲んだというのに漏らしてないのもおかしいし、腹も減るどころか満腹中枢が麻痺しているのか何も欲しくない。

 いつもなら起きて冷蔵庫のプリンに舌鼓したつづみを打つ頃なのに。どうしたあたし!


 このまま家の中でボーッとしていてもいいのだけれど、それはそれで暇すぎて死にそう。

 起きたら世界が変わってましたなんて映画や小説の中だけにしてよ! せめて白馬の王子様が居る世界なら良し、許そう。

 いや、もしかしたら出逢ってないだけであたしが出不精なせいなのかも!

 よっしゃ長期休暇と思って旅するぞーうおお! とテンションに身を任せ外に出て門を開けた結果、居ましたよ。


 白馬の王子様じゃなく白髪のお爺様が。


 またまた現実に引き戻されて我に返る。化け物……ゾンビとやらで溢れ返ってるんだっけ。

 あれは近所のセクハラ爺さんで、あたしも女子高生の時に足を撫でられた。性分というか死ななきゃ治らないと評判なので、それからは避けて帰るように道を変えた。

 今は全身血みどろな姿で明らかに人間やめてるって感じ。

 こっちを見つけた途端嬉しそうに近付いてきやがって、死んでも一緒じゃんかクソジジイめ!


 門を閉め家の中に戻り、二階の部屋から覗く。まだ居る。しつこく門の辺りをウロウロして女子限定のセクハラガードマン化している。要らないそんなガードマン。

 部屋に何か注意が引ける物無かったっけ……あった! 夏の時に使わなかった打ち上げ花火が三つ。

 どこに向けて打とうかな……国道側でいっか。点火して勢いよく発射。窓の壁が少し焦げちゃった。斜め横向きでも飛ぶもんなのね。


 反応したのが音なのか目なのか分かんないけど、エロジジイはフラフラと国道を目指していった。さらば爺さん、また会いたくはないよ。

 今の内に門の前にバリケードを設置しなきゃ。門自体は頑丈だけど複数現れたら危ないかもしれないし念には念をだね。


 外の物置小屋からいろいろ引っ張り出し山積みに置いてみる。効果あるのかなぁ。

 あ、あたしこれ詰んだ、出れない。なにしてんのよぉぉ。

 待った、まだ裏庭があるじゃない。塀も少しは低いし物置にあった脚立を使えばいいじゃん。あったま良いー!

 んじゃあ外に出て調べてみる場所はどこがいいかなぁ。

 ついでに誰かとおしゃべりできたら良いんだけど、近くの避難所はもうやられたんだっけ。…………よし、服が欲しいから服屋にしよっと。

 手ぶらだと危ないかなぁ。でも、武器ってほどのもんはないし困った。

 いいや、中学高校と部活で培ったこの自慢の脚で逃げたらそれで済むよね。さぁ出発だ!


 裏庭の塀から飛び降りてまずはゾンビの確認。辺りには居ないみたい。花火に釣られてくれたのかな?

 ちょっとお高い店を目指してレッツゴー。今なら高いも安いも関係ないもんねーくふふ。

 楽しみでスキップする足取りも軽やか。というかなんかあたし足速くない? もう着いちゃった。


 入り口にて中を確かめる。じー。

 ガラス窓だから外から丸見えなんだけどね。一応よ一応。

 中には居ないわね、扉も開いてるし……。

 まぁいっか今が万引きチャーンス! 人聞きが悪いから許可なしレンタルってことにしておこっと。

 さすがお高いだけあって素材も良い。これからの時期は寒くなるから冬用が一式欲しかったのよね。あ、このタイトスカートも可愛い!

 あたしだけの取っ替え引っ替え試着会も済んだところで、マネキンの衣装も欲しいなーって手を伸ばしたらマネキンが転倒。

 しかも、ガラス直撃でいい音を鳴らしながら割れちゃった。


 あたし、もしかしてまずい状況……?



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