第百六十七章 全域同時異常
一つの異常なら、対処できる。
二つでも、連携すれば乗り越えられる。
だが――
“すべて同時”となったとき、
それはもはや個別の問題ではない。
エコー・ベルト全域に広がる異常。
均衡は、
一瞬で崩壊の縁へと追い込まれる。
◆同時発生
「……来た」
リーナの声は、かすかに震えていた。
モニターに、
無数の揺らぎが映る。
一点ではない。
数カ所でもない。
全域。
「……全部だ」
カイが呆然と呟く。
◆状況確認
「異常発生点、
同時に三十以上!」
「いや……増えてる!」
リーナの指が止まらない。
マリナが冷静に言う。
「単独処理は不可能」
◆影の反応
影たちも、
一瞬だけ動きを止める。
そして――
全方向へ一斉に分散する。
だが、
数が足りない。
「……カバーしきれてない」
リーナが言う。
◆ドタバタ崩壊寸前
「いや無理だろこれ!?」
カイが思わず声を上げる。
「静かに!」
反射的にリーナがツッコむ。
「静かにしてどうにかなる量じゃねぇ!」
プクルもパニック。
「ぷくる!?(いっぱい!いっぱい!)」
◆判断
アストラは、
即座に言った。
「優先順位をつける」
全員が動きを止める。
◆基準
「全てを守ろうとするな」
「崩壊に直結するものだけ、
優先的に処理する」
マリナが頷く。
「選別……ね」
◆分類
リーナが高速で解析する。
「高危険度、七箇所!」
「中程度、十五!」
「残りは低影響!」
カイが言う。
「七つか……
それならいけるかもな」
◆役割再定義
アストラが指示する。
「影たちには、
全体維持を任せる」
「俺たちは、
高危険度に集中する」
マリナが補足する。
「一点突破型の調整」
◆突入
ノヴァ・リュミエール号は、
最も大きな揺らぎへ向かう。
「距離、維持!」
リーナが叫ぶ。
「干渉ライン、超えるな!」
◆巨大塊
そこには、
これまで以上の塊があった。
情報の暴走。
確定の暴走。
「……デカすぎるだろ」
カイが息を呑む。
◆即応
「分割する!」
アストラが言う。
「一点に集中して、
流れを作る!」
リーナが操作。
微弱誘導。
連続パルス。
◆連携
影たちが、
その動きを察知する。
一部がこちらへ集まり、
分解を補助する。
「来た!」
カイが言う。
◆突破①
塊が、
分裂する。
「よし、次!」
◆連続処理
七箇所の異常を、
順に処理していく。
一つ。
二つ。
三つ。
だが――
◆限界接近
「……間に合わない」
リーナが言う。
「他の領域、
悪化してる!」
マリナが言う。
「全体の均衡が崩れ始めている」
◆究極の選択
アストラは、
一瞬だけ目を閉じた。
「……一つ、捨てる」
空気が凍る。
◆衝撃
「は?」
カイが固まる。
プクルも止まる。
「ぷくる……?」
リーナが息を呑む。
「それは……」
◆決断
「全部は救えない」
「なら、
全体を守るために、
一部を切る」
マリナが静かに頷く。
「合理的ね」
◆実行
一箇所。
処理対象から外す。
その領域が、
急速に崩れ始める。
だが――
◆安定回復
他の領域が、
一気に安定する。
影たちも、
処理に集中できる。
「……持ち直した」
リーナが言う。
◆沈黙
艦橋に、
重い沈黙が落ちる。
カイが小さく言う。
「……あそこ、消えたな」
プクルが静かに鳴く。
「ぷくる……(きえた)」
◆受容
アストラは、
前を見たまま言う。
「……それでも、
全体は守れた」
マリナが答える。
「それが、
調整という役割よ」
◆影の反応
影たちが、
ゆっくりと近づく。
そして――
これまでで最も明確な意図が伝わる。
“理解”
全域同時異常。
それは、
理想を捨てる決断を迫る試練だった。
全ては救えない。
だが、
何を守るかは選べる。
ノヴァ・リュミエール号は、
その選択をした。




