第百五十四章 支援チーム到着
助けを求めることは、敗北ではない。
それは、続けるための選択だ。
調整役として初めて“手放す”決断をしたノヴァ・リュミエール号。
その判断が正しかったのかどうかは、
到着する“支援チーム”が教えてくれる。
静かな戦いは、ここから新しい形を持ちはじめる。
◆到着
ガンマ・スパイン宙域の外縁に、
三隻の小型艦がワープアウトした。
「確認。
銀河警察・調整支援部隊」
リーナが識別コードを読み上げる。
艦橋の空気が、わずかに緩んだ。
「……本当に来た」
カイが息を吐く。
マリナはモニターを見つめ、
静かに言った。
「これで、
私たちだけじゃなくなる」
プクルが嬉しそうに鳴く。
「ぷくる!(なかま!)」
◆支援チーム
ドッキング後、
代表者が艦橋に入ってくる。
落ち着いた佇まいの女性士官。
名を、ユリエル少佐。
「ノヴァ・リュミエール号、
長期調整任務、ご苦労さまです」
その一言に、
アストラは思わず姿勢を正した。
「こちらこそ。
支援を感謝します」
ユリエルは軽く微笑む。
「感謝されるのは、
“壊れる前に要請した判断”です」
マリナが、
わずかに目を細める。
「状況、把握しているようね」
「ええ。
あなた方のログは、
支援部隊の教科書になりかけています」
「うわ……」
カイが苦笑した。
「それ、
褒められてるのか?」
◆役割分担
会議用モニターに、
調整案件の一覧が再表示される。
ユリエルが淡々と指示を出す。
「ガンマ・スパイン委員会は、
現地支援班が常駐対応」
「ノヴァ・リュミエール号は、
“難航案件の初動”と
“火種の早期発見”に集中してください」
リーナが確認する。
「判断の最終責任は?」
「共有です」
即答だった。
その言葉に、
アストラの肩から、
目に見えない重りが外れた。
◆違和感
だが、
完全な安心ではなかった。
カイが小声で言う。
「……楽になったはずなのに、
なんか落ち着かない」
マリナが同意する。
「役割を分けるということは、
“結果を他人と共有する”ということ」
「成功も、失敗も、だな」
アストラは静かに答えた。
プクルが首を傾げる。
「ぷくる?(みんなでやるの、だめ?)」
「だめじゃない」
アストラは微笑む。
「慣れてないだけだ」
◆初めての引き継ぎ
その日の夕方、
ガンマ・スパイン委員会の進行は、
支援チームへ引き継がれた。
モニター越しに、
ユリエルが現場代表と話している。
落ち着いた声。
感情を煽らず、
だが逃げ道も与えない。
「……上手いな」
カイが素直に言った。
「経験の差ね」
マリナが答える。
リーナは、
ログを確認しながら呟く。
「これで、
私たちは“次”を見られる」
◆空いた時間
久しぶりに、
艦内スケジュールが空白になる。
「……何すりゃいい?」
カイが戸惑う。
アストラは考え、
そして言った。
「整備と休養」
「マジで?」
「マジだ」
プクルが跳ねる。
「ぷくる!(あそぶ!)」
マリナが微笑んだ。
「調整役に必要なのは、
常に走り続けることじゃない」
◆夜の会話
静かな艦橋。
星々が流れていく。
アストラは、
ユリエルから届いた短いメッセージを読み返していた。
《あなた方は、
“英雄にならないやり方”を示した。
それは、
多くの調整役を救う》
彼は、
小さく息を吐く。
「……俺たちだけの戦いじゃ、
なかったんだな」
マリナが隣に立つ。
「最初から、
そうだったのかもしれない」
◆次へ
新しい任務通知が、
優先度低で表示される。
《未観測宙域:エコー・ベルト
調整要否:調査段階》
「今度は、
まだ“火種かどうかも分からない場所”か」
カイが伸びをする。
アストラは操縦席に戻った。
「だからこそ、
今の俺たちに合ってる」
プクルが元気に鳴く。
「ぷくる!(いこう!)」
ノヴァ・リュミエール号は、
支援という背中を得て、
次なる静かな宙域へと進路を取った。
支援チームの到着は、
役目の終わりではない。
それは、
“一人で抱えない調整”の始まりだった。
ノヴァ・リュミエール号は、
少しだけ軽くなった船体で、
次の未知へ向かう。




