『恋の始め方 volume2』
すみません。
昨日投稿するって言って忘れてました。
暑さでポンコツ具合に磨きがかかってます。
今までに無いタイプの女だった。
バッグの中には、いつもきちんとプレスされたハンカチがあるような。
抱きしめると石鹸の香りがしそうな。
誰も見ていない場所でも、きちんと掃除してそうな。
その背筋の伸びた佇まいや、しんとした雰囲気。
一緒にいたら、どんな感じで笑うんだろうって思ってた。
抱きしめたら、どんな感じがするんだろうって。
「笑わないでよ・・・」
今、その彼女が俺を見詰め困ったように所在なさげにしている。
キスをする時に息継ぎをしている彼女は、まさしくあっぷあっぷしてたんだろうと考えると
笑うしかないのだが。
俺はユウの頭に手を伸ばすと、イイコイイコした。
「キスする時、ちゃんと鼻で息しなよ。」
うん・・・、と小さく頷くユウの首の後ろ辺りに手を滑り込ませて
「じゃあ、練習」と引き寄せた。
「ま、待って。目を瞑ってて」
「いいよ」
目を閉じると、彼女がそっと肩に手を置いてきた。
近づいては触れる前に離れ、近づいては触れる前に離れ・・・と戸惑っている気配がする。
このまま待ってたら夜になっちゃうよ、と思う。
やっとユウの柔らかい唇が俺のそれに触れた時
新鮮な感動があった。
小さくついばむようにして、そっと触れて離れてを繰り返してくる。
「・・・舌入れて」
更に要求すると、一瞬動きが止まり覚悟をするような間があった。
目を開けると、ユウの睫毛が震えていた。
途端に愛しくなって、押し倒したくなる衝動が湧き上がる。
それを押さえ込むと、ユウの舌が恐る恐る入ってきた。
そのまま任せていると、どうしたらいいのか解らない感じが痛いほど伝わってきた。
これ以上いじめるのは可哀想か。
攻撃に切り替えると、彼女の口の中に進入した。
ユウから声が漏れる。
両腕が背中に回され、ぎゅっと力が篭る。
ん?いつもと違うかな。
「たまには自分からキスするのも、興奮するでしょ?」
キスの合い間にわざと聞くと、彼女は答える代わりにしがみついてきた。
彼女の背中、腰、脇から柔らかい胸に手を滑らせて行くと
あっ、と小さな声を出し、手首を握られた。
けれど、それ以上どかすでもなく緩く握られたままだ。
掌にある柔らかさを確かめながら、首筋から鎖骨
大きく開いたワンピースの胸元へキスを移動し、彼女の反応を見る。
身体を彼女から離し、ユウの顔を見た。
その顔を見たら、堪らなくなった。
「我慢できない」
思わず言うと、彼女の身体を抱き上げた。
彼女が落ちないように慌ててしがみついてくる。
そのまま寝室へと運び、ベッドへと横たえる。
「嫌なら、嫌だって、言ってくれ」
彼女の頬に手を添え、親指で唇をなぞる。
その手を彼女がそっと握り、そのまま唇を開いて親指を軽く噛まれた。
小さな歯が見え、可愛い舌が指を舐めた。
柔らかくてあたたかい舌が動き、咥え出した彼女の顔を見てたら
ヤバイ位にキタ。
「そんな事して、俺が止められなくなったらどうするんだ・・・」
咽がはり付いたように渇き、声が掠れた。
彼女の長い髪がベッドに広がり、上気した頬に潤んだ瞳が俺を煽る。
ユウの柔らかい身体に覆い被さり、唇を奪う。
「嫌なら、嫌って言ってくれ。でないと・・・」
「カケル・・・、好き・・・」
辛うじて残っていた理性は吹っ飛んだ。
上体を起こして、シャツを乱暴に脱ぎ捨てながら言う。
「なるべく、優しくするように、する」
そうして唇を楽しみながら背中のホックを外し、ワンピースのジッパーを下ろす。
力任せに下ろして壊さないように、と注意しなければならないほど
テンパってた。
ワンピースをずらして、彼女の肩が露わになる。
ゴールドのサテンの下着を肩から抜こうとして気付いた。
彼女がぎゅっと目を瞑っている事に。
あまりキツク閉じて、眉間に皺がよっている。
俺は手を止めると、彼女の頬を触りながら名前を呼んだ。
聞いてはいるんだろうが、目は変わらず閉じられたまま。
「ユウ・・・、ユウ、俺を見て」
「な、なぁに?」
眉間の皺は緩んだものの、まだ目は閉じている。
彼女の前髪をなで上げ、そっと額にキスをした。
「ユウ、目を開けて俺の事見て」
待っていると、ゆっくりと目を開けた。
目が合うと、恥ずかしいのか俺の裸に胸に身体を寄せて、見られないようにした。
そのまま俺は一息つくように腕枕をすると、髪を撫でた。
相変わらず、胸に擦り寄って顔を見せてくれない。
彼女はモジモジと「・・・しないの?」と聞くので、俺も聞いた。
「ユウ、俺が怖い?」
「え・・・?」
「俺の事、怖い?」
「・・・・恐くない。でも・・・」
「でも?」
その先を促すと、しばらく沈黙があった。
俺は急かさないように、黙ってずっと髪を撫でていた。
「カケルの事、恐くないよ。でも・・・」
「・・・うん」
彼女が腕の中で動いたので、顔を見ると彼女も俺を見た。
「カケルの事は恐くないよ。でもね・・・」
「ん?」
「カケルを失うのは、怖い・・・・」
胸がぎゅっとなった。
怒らないで・・・と小さく言うと、また胸に顔を寄せて顔を隠した。
「何を怒るの?」
「・・・わかんない。わかんないけど・・・」
「大丈夫だよ」
抱きしめて背中を軽く叩いた。
「今日はしないで、このまま話でもしてよう」
「怒ったから?」
「怒ってないよ。良いんだ。これから時間はいっぱいあるから。
俺を失うとか、失わないとか、そんな事考えながら抱かれたって
気持ち良くないよ」
「でも・・・」と、まだ気にしているようなので、話題を変えた。
「チャイナさぁ、留学生が国に帰るって言った時
猫は好きだけど飼う気はなかったんだよね。
もう大きかったし、そこから引き取ってトイレの場所とか
簡単に覚えてもらえるのか解らなかったしさ。」
「うん」
「でも、留学生が『ま、いっか。引き取り手が見つからなかったら・・・』って言って
その後黙ってさ。その沈黙が恐いわけ」
「え、え、また捨てちゃうかもしれないから?」
「イヤ、食われそうだったから」
「えーーー!そうなの?」
「俺は奴はペットとしてじゃなくて、家畜として飼ってたんじゃないかとみたね」
「えー、冗談じゃなくて?」
「だって中国人ってほんとうに何でも食うんだよ」
「だ、だって・・・・」
「まぁ、実際の所は解らないけどね。
でも、捨てられるのも万が一食われるのも嫌だったんで引き取った」
「そっかぁ。でもチャイナすごくお利口さんな顔してるよね。美人さん」
「あとさぁ」
「うん?」
「さっき言った話、この部屋に女の子入れた事無いって言う・・・」
「うん」
「あれ、半分本当で半分嘘だよ」
「ん?なぁに?」
「友達の彼女とか、俺んちで何人か集った時には上がったことあるけど
自分の彼女をこの家にあげたのは、ユウが初めてだよ」
「・・・・・・」
「俺、自分の彼女をこの家に呼んだの、ユウが初めて」
ユウを見ると、泣きそうな顔をしていた。
ふっと笑って、ユウの額に額を当てて「好きだよ、ユウ」と言うと
彼女からキスをしてきた。
だから、続きがしたくなるって・・・と思いながら、口付けを交わした。
結局その日、ユウを抱く事はしなかった。
待つ事にした。
その後しばらくして、彼女を抱いた時はどうしてそうなったのか
思い出せないくらい、自然な成り行きだった。
俺を失う事を、今でも恐がっているのかは解らないけど
抱き合った後、まどろむように寝ている彼女を見ていると
そんな事はもう良いか、と思える。
今でも、恥ずかしくなると顔を隠す所は同じ。




