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最後のさよなら 二 

「父親の独裁からの脱出。あなたの心を蝕んでいた闇はあからさまだった。あなたは誰も寄せ付けず、あなたに踏み込める者も誰もいなかった。それはいろいろと、結果として正解だったと思う。ここに残る理由がなくなればなくなるほど、それに越した事はないと思ったから」

「え、待って。でもそれじゃ……」


 だったら、何故佳奈恵は私に近付いた。

 誰とも干渉を望まなかった事が正しいと言うなら、どうして彼女はその殻を突き破ろうとした。


「ほっておいたら、あなたはずっとずるずると、縛られたままだったでしょ?」


 ――あー……そういう事か。


「あなたがこの村に来た時、同じよそ者としての共感もあった。単純に同族として仲良くしたいという気持ちもあった。でも、あなたの心は閉じきっていた。その心に何があるのか。それ次第だったけどね。あなたを留めるか追い出すかは」

「追い出すだなんて、すごい言い方」


 そう言うと佳奈恵は笑った。そして私も少し笑った。

 乱暴な言葉だったが、それは理由があってのもの。理由が分かれば、心のしこりはするすると解けていった。


「絶対に戻ってきちゃダメ。それが私の結論だった。でもそれは、あくまで私の答え。ゆっくりと心を開かせて、進むべき道を見定めて、自分でここから出たいと思って、自らその答えを出してくれるように。あなたの答えで、将来を決めないと意味がないから。その強さがなければ、どっちにしてもいずれあなたは崩れると思ったから」


 気が付けばいつも佳奈恵が傍にいた。

 近すぎず、離れすぎず。そしていつの間にか佳奈恵からではなく、私から佳奈恵との距離に自分で答えを出した。


「依存されすぎて、私がいるならここにずっと残る、なんて言われたらどうしようかとも思ったけど、そうはならなくて良かったよ」


 そう思った時もあった。何もかも、佳奈恵には見透かされていた。

 そして答えに立ち返る。

 あの手紙の意味。


「出る決心はついた。でも、戻ってくる場所は残さないようにしなきゃと思った。いろいろ考えて、私なりに頑張ってはみたけど、最後の最後で途轍もなく不安になった。本当にこれで全てがうまくいったのかなって」

「だから、念を押した」

「出したくなかった切り札みたいなものだった。もっといいやり方なんていくらでもあっただろって今では思う。そんな事までしなくて良かったんじゃないかって。でも何よりの懸念が私自身だった。私という存在が、ここに戻ってくる理由として残ってはいけない。それだけは、断ち切っておかなきゃって。あんな言葉を使ったのはそれが理由。もう一つ言えば、あなたの父親へのストレートな気持ちも入ったのかもしれないけど、言い訳としては不十分だね」


 私を容赦なく払い落とした親友の一言。そこには、一言では到底収まりきらない幾多の幾重にも重なった想いが込められていた。


「嫌われてもいいってほどには、あなたを親友だと思えていたから」


 その一言で、全てが決壊した。

 意味を考える程に疑い、恨みさえした親友。

 愚かだった。親友の想いすら見抜けなかった自分自身が。

 溢れ出る涙を拭う事もしなかった。鼻水もだらしなく垂れているのが分かる。みっともない。三十路間近の女の泣き顔としてはあまりに惨めでみっともない。でもそれぐらいで丁度いい。綺麗に着飾った自分自身が恥ずかしくなる。でもそんな自分がいるのも、今目の前にいる親友のおかげなのだ。

 

 すっと私の横からふいに腕が伸ばされる。ふわっと佳奈恵の両腕が私を包み込んだ。


「だからもう、帰ってきちゃダメだよ」


 その言葉に少し驚く。こうやって全てが和解したなら、もう何の軋轢もないではないか。そう思ったが、それは違うのだ。

 私達は、ずっと親友だから。

 

「ここを、清美の帰ってくる場所にしたら、ダメ」


 あの時、佳奈恵は今生の別れを決意してくれた。

 自分が一生親友に恨まれ続けようと。疑われ続けようとも。

 だから本当は、この再会すらあってはいけないものだったのだ。


「うん、そうだね」


 だから今度こそ。

 今度はちゃんと、自分から。


「さよなら、佳奈恵」


 これを親友との、最後のさよならにしよう。


読了頂きましてありがとうございます。

これにて本編は終了となります。

少しだけ、後書きを書かせて頂きますが、

もし本編を読み終えていない方は、この後書きはまだお読みにならならいようにご注意下さい。



























































最後まで読んで頂いて、どんな印象が残ったかは人それぞれかと思います。

ですが、読まれた方の中には多少の違和感が残った方もおられるかと思います。

言えば、記述が足りない曖昧な箇所等があったのではないかと思います。

(文章表現の稚拙さ等は作者の力量不足です)



本編としては完結しております。

ですが、全ての真相は表に出ておりません。

この本編は、登場人物達が正しく行動した結果迎えられた結末の一つです。


という事で、蛇足的なものにはなりますが

「真相編」を別で出す予定です。


少しお時間は頂きますが、書きあがりましたらまた投稿させて頂きます。

宜しくお願い致します。



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