2. おいしいね!
「うぅーん。」
僕は眠い目を擦ってスマホの電源を入れた。
5時14分。昨日の夜、おばあちゃんが寝るのをせかしてきたせいで随分と早い時間に起きてしまった。二度寝する気にもならないからとスマホを持って縁側からサンダルを履いて山の上の方にある小さなパン屋に向かった。
坂道を登って息を切らしながらパン屋の前まで着いた。パン屋の扉に視線を向けるとガラス張りのドアの向こうに長いまつ毛を輝かせてパンを眺める愛菜の姿があった。
僕は思い切り走ってパン屋に入った。香ばしい匂いと共にもあんとした夏の熱気が襲ってくる。一瞬目を瞑ってすぐに店内を眺めた。チョコレートクロワッサンが置いてあるカゴの前でじっくりと悩ましげにしていた彼女がこちらを見た。
「お、おはよう。」
彼女は僕の顔をまじまじと見つめて目を細めると口を開けた。
「おはよう。あさごはん?」
「いや。。パンの匂い嗅ぎにきた。」
「なにそれ」
彼女は僕の言葉にそう突っ込むとあははと笑い出した。その笑顔はとてもキラキラしていて、華やかな顔というわけでもないがやけに魅力を感じさせた。
「クロワッサン買うの?」
「いや。まあみてただけ。だよ。」
僕はチョコクロワッサンを一つトレイに乗せた。
メロンパンもトレイに乗せてからお会計をした。
外のベンチに座って朝日を眺める。
「二つは食べたらばあちゃんに怒られるからやっぱクロワッサンは愛菜が食べて。」
僕はそういうと紙袋に入っていたチョコクロワッサンを取り出すと愛菜に差し出した。
「なんで買ったのよ」
愛菜はそう言ってまた笑った。
「べつに。。いやじゃあもらってもいい?ごめん。」
愛菜はすこし寂しそうな顔をしてクロワッサンを受け取った。
「おいしいね!」
少し遠慮がちな笑顔でクロワッサンにかぶりついた。
そうするとまた悲しそうな顔をして食べかけのクロワッサンを眺めた。
「花火って見たことある?」
急に思い出したように愛菜がそういった。




