プロローグ:欲望ノママニ
……私は一体、いつから諦めたのだろう。今までは何を欲していたのだろう。…思い出した。私、ベッドで寝ることに憧れてたんだっけ。温かいご飯と、自由に動ける体、椅子に座ってみんなと話したかったなぁ。…みんなって誰だっけ。…あぁ、そうだ、思い出した。親って存在がいるんだっけ。父と母、大人の男と大人の女、2人揃って夫婦とも言うらしい。私は大人の女の人を家で見たことがない。多分、大人の男のあの人が、私の親なのだろう。そんな親は子供を愛してくれると聞いたことがある。どこから聞いたかなんて覚えてないけど。私の親は愛してくれてるのかな。まるで私のことを嫌ってるようなことばかりする。…分からない。これが愛なの…?
「ねぇ神様。私はあなたの事が嫌い。だって…」
―私を助けてくれないもの。
神様は願ったら助けてくれるんじゃないの?困ったら救いの手を伸ばしてくれるんじゃないの?私辛いんだよ…?なんで…私だけ……
「…私はただ、愛して欲しいだけなのに……。」
そんな、綺麗で小さくも、私には十分すぎる欲望をつぶやきながら、今日も冷たく硬い石の床で、鎖の擦れる音を子守唄にしながら眠りについた……。
―――気がついたらである。
私は見知らぬ土地の、見知らぬ夫婦に、愛する我が子として迎えてもらうことになっていた。その間の記憶はない。哀れみからなのか、それとも純粋なのか。真偽は分からないが、何はともあれみんなの言う、普通の生活ができるのではないかと少し感情の昂りすらも感じていた。同時に、また地獄みたいな、愛を望むことすらおこがましい生活になるのかもしれないと、焦りと緊張も含んでいた。そんな、何が渦巻いているか分からない心を他所に、この夫婦は何かで悩んでいた。
「この子の名前どうしようかねぇ…」
「せっかく可愛いんだから可愛い名前を付けてあげたいよねぇ。」
…ナマエ?あぁそうだ。私は前の場所ではナマエなんて言葉、なかったんだ。いや、あったかもしれない。けど、そのような概念を呼ばれた記憶はなかった。そもそもナマエという概念があったかどうかも分からない。
「そろそろつけてあげないとこの子も可哀想だ…。もう3日になるし、名前で呼んであげたい。」
「そうねぇ…。さすがに名前が無いって聞いた時はびっくりしたけど、だからこそ名前は大事だし、とっておきのをあげましょう!」
どうやら普通はナマエという言葉が付いているらしい。そして、この夫婦はナマエをつけるのに3日も要している。普通付いているもので、大切なものだから時間をかけているのだそう。私に対してつけるナマエなんて適当でいいのに。でも、その事実が嬉しい。私に対してナマエという、ひとつの概念だけに時間をかけてくれることが。
「決めた!今日から君の名前はラト!ラト・ヴエルだ!」
「……ラト?」
「あぁそうだ!これから正真正銘の家族だ!よろしくな!」
「よろしくね!ラトちゃん!」
……ラトというナマエがついたらしい。ヴエルはなんだろう。分からない。でも喜んでいるのは見てわかる。人のそんな姿を初めて見た。私も含めてである。その光景を見て、初めての言葉を、私は小さく、しかし強く固く、噛み締めるように言った。
―ありがとう。
―――その日からちょうど2年が過ぎた。
私は何歳か、誕生日がいつかなんて分からなかったので名前をつけてもらったその日を誕生日に、歳は見た目からして7歳とした。つまり今は9歳である。私はこの2年でこの世界の多くを知った。教えてもらった。名前がなにか、ヴエルがなにか。お父さんとお母さんの名前も。
お父さんはアルグ、お母さんはイゼという名前らしい。
私は世界をもっと知りたいから冒険者になると決めた。お父さんとお母さんからは無理に働かなくてもいいよと言われたが、私はもっと世界を知りたい!と言ったら快く許してくれた。ただ、それと同時に私が大切であるということも教えてくれた。危ないと感じたら無理せずに逃げなさい。命を落とすことだけは許しません。これがふたりの口癖だった……
早速冒険に出かけよう、そう逸る気持ちを抑え、まずは外の世界を軽く知ることにした。まず、この世界には言い伝えがあり、神様という世界の創造主たる「竜」がいるということ。そして、その竜には十二の魂が宿っているということ。それぞれの魂が私たち、この世界に住まう人類にとって壁となりうる事象であり、乗り越えるべき絶望である。
―なんと馬鹿らしい。神様なんていないに決まっている。そんな都合の良い、まるで、私たちのことを思って、みたいな考えがあるわけが無い。こんなことを言い伝えるなんて、私の知らない世界というものは実に呑気だったのだ。
世界の成り立ちなんてどうだっていい。次にこの世界の詳しい事情について学ぶことにした。
「世界には魔物がいて、そいつらは人間のフリをして人間を襲う……ねぇ、」
じゃあ私の、思い出したくもないあの記憶にいるアイツは、魔物だったのだろうか。真相は分からないし分かりたくもない。
「ほかには……っと、」
ふむふむ、人類はどうやら12の国に別れているらしい。ある場所を中心に、時計のような円形に並んでいるらしく、それぞれ1時の位置から、ネメアー、レルネー、ケリュネイア、エリュマントス、アウゲイアース、ステュムパーロス、クレーテー、ディオメデス、ヒッポリュテ、ゲーリュオーン、ヘスペリデス、オルトとなっている。私のいる国は八の刻の国、ディオメデスである。
「とりあえず、12の国を巡ってまだ見たことの無い世界を!私だけの自由を!広げるんだー!」
そう息巻いて、早速冒険の手筈を進めていくのだった……。
皆さん、初めまして!和乃 椛と書いて、わの いろはと読みます!自己紹介もほどほどに、まずは皆さん、プロローグですが見てくださりありがとうございます!たった1回でも読んでくださることが私の励みになりますので、今後もよろしくお願い申し上げます!
私の近況になりますが、卒業論文だったりバイトだったり就活だったりで忙しく、なかなか更新されないと思いますが、もし気に入っていただけたのなら、気長に更新を待ってもらえると嬉しい限りです!
そろそろ作品について少し触れますが、一応物語の構成だったり、終わり方だったりとかは考えているので、あまり終始ぶれないようにはなると思いますが、何分小説初心者なもので、読みづらい個所や矛盾が出てくると思います。その際は遠慮なくご報告を頂けたら幸いです。また、キャラの姿に関しては、私に絵心が全くと言っていいほどないため、基本的に脳内保管でお願いする形になります。本当に申し訳ない…。たまに、○○な髪の毛で身長は…みたいな文章は書くかもしれないので、ある程度キャラのイメージがばらけないようにはするつもりです!もし書いてなければ好きなキャラを創造してくだされば幸いです!
最後になりますが、本当に一度、目を通してくださりありがとうございました!これからも気長に、できるだけ失踪をしないように頑張りたいと思いますので、応援のほど、よろしくお願いします!!!!!




