156話 対決、トカゲの王!②
「グッ、グギュルゥ……」
トカゲの王、されど堕ちず――
ラヴィの怒涛の攻撃にベルの合体魔法を喰らってもなお、ゆっくりと起き上がろうとする《ロイヤル・バジリスク・ロード》。
「ギャア! ギャアギャアッ!」
やつは俺たちをギロリと睨むと、けたたましく鳴き出した。
それに呼応するかのように、周りを囲んでいる《バジリスク》たちが一斉に騒ぎ立てる。
「な、なんですの、いったい……!?」
「分からん――でも、何かよくないことなのは確かだ。 こういう時は、ちゃっちゃと群れの主を叩くに限る!【パライズ】ッ!」
ビシィっと稲妻エフェクトが駆ける。
動くこともままならないやつに当てることなんざ、朝飯前――と思っていた次の瞬間、《バジリスク》が射線上に飛び出してきて俺の【パライズ】を受けた。
「なっ――!?」
まさか、身代わり――!?
俺の予想を裏付けるように、やつの周りに立ちふさがるようにして《バジリスク》たちが群がっていく。
けっ、動けない自分はひとまず回復を優先して、子分に盾になってもらおうってか……!
厳しいねぇ、自然界のリアルはよお……!
既に俺たちパーティー対との戦いという形は崩れた。
だとすると、次に待っているのは――
「ベル、ラヴィ!! 来るぞ!!」
「キシャアァァッ!!」
俺が叫ぶのと同時に、周りの《バジリスク》たちが一斉に襲い掛かってきた――!!
「お願い!【サモン・シスターズ】!!」
「たたっ切る……!【乱華】!」
数えられない程の《バジリスク》が入り乱れる大混戦。
ベルは再びメイド人形で応戦、ラヴィは連続攻撃を繰り出した。
俺は当然――
「【パライズ】!【麻痺銃】!【パライズ】!【麻痺連鎖】!」
それはもう、ありったけの麻痺を撃ち込んだ。
数で攻め立てる《バジリスク》に対して、バッタバッタと打ち倒していく俺たち。
まあ、俺は麻痺させるだけんだけど。
攻撃力のない俺は、お気持ち程度にスタンブレイカーで迎撃を続ける。
――そして、がむしゃらに戦い続けること数分。
俺たちの周りには物言わぬ《バジリスク》たちの山が出来上がっていた。
残る敵は《ロイヤル・バジリスク・ロード》と、それを取り囲む十体程度だ。
「はぁ、はぁ……ど、どうだこのやろう……! うちのパーティーメンバーは、優秀なんだぞ……!」
「グ、ギュギュア……!」
やつは絞り出すように一鳴き。
さすがに今の短時間では体力を回復できなかったようで、分が悪いと思ったのかジリジリと後退していく。
さっさと決着付けたいところだが――あのやろう、子分に恵まれてるな。
取り巻きの《バジリスク》たちは、俺たちが近付けないように【蛇睨み】を連発。
ピリッ、ピリッと微弱な電気のようなもの感じるが、俺以外が喰らったら速攻麻痺っちまうというやべぇ技だ。そのせいで、ベルとラヴィは俺の後ろに待機せざるを得なくなった。
「くそ……【パライズ】は撃ててもあと数発――なんとしても、確実に仕留めに行きたいが……」
「ワ、ワタクシの魔法ならどうですの? セバスチャンならあと二発位なら出せますわ」
「いや……それにしたって他の《バジリスク》が邪魔だ。 ラヴィ、【超獣化】はできるか?」
「……今は、無理。 できたとしても、あと数十分後かも」
「そうか……さぁて、どう切り崩してやるかな……!」
一発狙いで周りのを麻痺らせて、セバスチャンで仕留めるか……?
いや、やつの体力を削りきるには若干火力不足だ。メイド人形を出したところで他のやつらに邪魔されるのは確実。それに、他の魔法を使ったとしても決定打に欠ける。
それなら、ラヴィの回復を待ってから一斉攻撃をしかけるか?
いや、【超獣化】直後にスキルを連続使用したから、ラヴィの体力は限界が近そうだ。だって、尻尾が垂れさがってるもん。
必死に思考を巡らせていると、《ロイヤル・バジリスク・ロード》がおもむろに頭を持ち上げた。
ビリッと空気が震え、やつの目が大きく開かれる――
またあれか!!
「伏せろ――!!」
俺は体を大の字に広げ、やつの視線を真っ向から受け止め。
瞬間、ビシビシと大気が音を立て、俺の体の中を無造作に駆け回った。
「ぐがぁっ……!」
まるで、体の中に直接電流を流し込まれているかのような衝撃。
筋繊維はズキスキと痛み、骨が、間接が悲鳴を上げる。
――だけど、ここで俺が倒れたら二人は麻痺っちまう。やつらにとって、格好の餌食だ。
させない、そんなこと。
俺が――俺がこいつらの盾になるんだ……!
……と、いきまいたところで俺の体力はゴリゴリと削られ続ける。
視界が、揺らぐ。
「マヒルさん……!」
「マヒル殿!」
俺を呼ぶ声が聞こえるが、まるで水の中にいるようにぼんやりとくぐもって耳に届く。
立っているのか寝ているのかも分からない感覚。
そして、視界の端から徐々に真っ暗に染まっていく。
――あ、これはマジでヤバいやつだ。
だめ、だ……意識が持ってかれる……
『ピコンッ』
「――ッ!」
聞きなれたメッセージ音が頭に響き、俺の意識はギリギリのところで繋がった。
これは、スキルの獲得――
説明文を読むまでもなく、俺は直感的に目を見開いた。
反撃の狼煙は、誰にも気づかれることなく静かに上がった。




