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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
5章

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153話 竜の宴①

 不安と緊張感、そこにほんの少~しだけの高揚感を交えて山道を進む。

 山頂を目前にしてどんよりと日は陰り、空模様まで怪しくなり始めた。深い霧が立ち込め、昼前だというのに辺りは薄暗く沈む。


「おぉ……なんか雰囲気あるな」

「……本当ですわね。 今なら、何が現れてもおかしくありませんわ」


 手綱を握るベルの顔は、緊張で強張っている。

 実際、俺自信も背中にじっとりと嫌な汗が流れて、不快感マックスだ。

 そりゃあ、こんな雰囲気で緊張するなってほうが無理だろう。


「……! 何か、いる」

 沈黙を貫いていたラヴィが、一声――細く縛った目を空中に向ける。俺たちの間に緊張の糸が張り詰めた。


 薄暗い視界の先、それもかなり上空にいくつもの黒い影がぼんやりと浮かぶ。


「なんだ……? カラス?」

「カラス……あるいは、《バルチャー》というモンスターの可能性もありますわね」

「そいつは、強いのか?」

「危険度はせいぜいE+ですが、数が揃えば厄介ですわね」


 ベルが淡々とした口調で説明。

 正体は分からねえが、辺りの雰囲気も相まって不気味でしかねぇわ。

 俺は迫りくる影をギッと睨みつけ、すぐに麻痺を撃てるように構えた。


 影が近付くにつれ、ギャアギャアという怪音とバタバタと羽ばたく風切り音が鳴り響く。

 ああ、ちくしょう、これでただのカラスだという線は完全に無くなっちまったな。

 

 姿を表したのは、赤褐色の肌に幅広の翼。

 小さく尖ったクチバシに、獲物を狙うハンターの目。

 その姿はまるで、頭を小さくしたプテラノドンだ。

 

「あれは……《ワイバーン》ですわ! 小さくても立派な飛竜ですわ!」

 

 ギャアギャアと声を上げ、《ワイバーン》たちが迫る。確かにドレイクよりは小さいが、余裕で鳥なんかよりデカイって……! 


「《ワイバーン》!? ど、どうする、このまま突っ切るか!?」

「でも、この先の道は不安定ですわ! これ以上スピードを出したら――」


 言うまでもなく、事故ったらどっちみちおしまいだ。

 ……となると、やることは一つ。


「みんな、ここで迎え撃つぞ……!」

「了解ですわ!」

「了解」


 ベルが手綱を引き、馬車を急停止。

 ラヴィは刀を抜き、戦闘態勢を取った。


 敵の数は未知、さらに小さくて不規則な動き――こいつは、"あれ"を試すにはうってつけだぜ……!

 俺は空に向かって手を伸ばし――

 

「まずはこいつで牽制だ! 【磁力痺鎖(マグネット・ホールド)】!!」


 ヴゥゥンッと音を立て、電磁波を帯びた球体が空へと向かう。霧に紛れて《ワイバーン》たちは、次々と球体へと吸い寄せられていき――


「ギャッ! ギャギャアッ――!?」

 次々と麻痺ってボトボト墜落。


「ッしゃあ! 狙い通りだぜ!」 

 俺の思惑通り、《ワイバーン》たちにこのスキルは有効だった。大きさはだいたい二メートル、三十キロ程度のモンスターなら引き寄せられる……!

 

 前回のカッパ戦で変化した俺のスキル……早速役立ってくれたぜ!相手がよく見えなくても勝手に引き寄せて麻痺らせる。

 言うなれば、電磁式自動誘引トラップ……強ぇ!


「むん……!」

 麻痺って墜ちた《ワイバーン》を確実に仕留めていくラヴィ。


「マヒルさん、次が来ましたわ!」

「了解! ここまで近付けば、一網打尽だ……!」


 俺の放った麻痺が次々と連鎖し、《ワイバーン》はバタバタと墜ちていく。まるで蚊取り線香の如し。

 そこへ追撃のベルの魔法が炸裂――ついさっき披露したばかりのメイド人形たちがザスザスとナイフを突き立てていく。こっわ。


 そして――


「まあ、こんなもんか」

 馬車の周りには、数十を越える《ワイバーン》の亡骸が積み上がっていた。


「ベル殿の、新しい魔法すごい! いっぱい、刺してた……!」

「いえいえ、ラヴィさんの刀裁きもさすがの一言でしたわ! 確実に首を落としていく様、まさに武人ですわ!」


 ヤバっ。

 物騒なことを話す女子二人を尻目に、俺は一人道の向こうを見つめる。


「……なあ、やっぱり"これ"って竜明季(ドラグニア)なのかな? さっきの《ワイバーン》もドラゴン系だろ?」


「……まあ、可能性は無くはないですわ。 でも、《ワイバーン》は"渡り"をする習性があるので、なんとも言えないですけれど」


「渡り? なんだそれ」


「ああ、渡りっていうのは、群れで大移動する習性のことですわ。 もともとここにいたのか、たまたま渡りでここに来たのか……あるいは――」


 俺たちは互いに見つめ会い、しばしの沈黙。


竜明期(ドラグニア)

 難しい顔をしてラヴィが口を開いた。


「……拙者の村では、竜の宴、言う。 ……で、今回のは、多分そうだと思う。 やっぱりモンスターたち、いつもと違う」


 ラヴィの野性的な勘や、鋭い観察眼をよく知ってる俺たちは、その言葉だけでほとんど確証を得た。

 今まさに、俺たちが竜明季(ドラグニア)の真っ只中にいる、と。

 皆が押し黙り、ピリッとした空気が走った。


「竜の宴……か。 俺たちにとっちゃあ、死活問題だけどな! いっちょうその宴とやらに飛び入り参加といこうぜ!」


「……フフッ、招待されていないのにマナー違反ですわよ、マヒルさん」


「そう言うお前だって、宴は好きだろ、ベル?」


「そ、それはもちろん大好きですが、安心安全に串焼きを食べられるというのが大前提でしてよ!?」


「……拙者も食べるの、好き」


 ラヴィの一言に、ベルはフフッと微笑んだ。

 ピリついた空気が穏やかな決意に変わっていく。


「……よぉし、それじゃあもうちょっとだけ確認して、街で安全な宴を楽しむとしよう。 命大事に、行くぞみんな!」


 俺たちは進む――さらに深く濃い霧の中を。

 頂上は、もうすぐそこだ。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

感想、ブクマ等お気軽にいただけたら励みになります。

次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

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