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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
5章

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152話 恐怖、バジリスク峠④

 山道を進むこと一時間。

 道中の《バジリスク》をバッタバッタと倒しながら進み、俺たちは山頂付近まで迫っていた。


「そろそろ山頂だな。 ゲームとかなら、ここらへんでボスが待ち構えていたりするもんだが……」


 俺はそう言って荷台から辺りを見渡す――が、やはり現れるのは通常の《バジリスク》ばかり。

 いや、カッコイイのは充分分かったんだけど、さすがに多いて。


 何体かいたけど、俺たちは流れるような連携であっという間に撃破。

 数だけ多く出てくるもんだから、ラヴィはどこか物足りなさそうにしている。


「……おかしい、ですわ」

 手綱を握ったまま、ベルは神妙な面持ちで呟いた。


「おかしいって、お前が覚える魔法のことか?」

「ちっがいますわぁ!? おかしいのは、《バジリスク》ですわ! 普通の群れにしては、多過ぎますし……何だか変な感じがするんですわ」

「そう、なのか?」


 こっちの世界のバジリスク事情に乏しい俺は、ベルの気がかりをまったく理解できないでいたが――


「……うん、やっぱり、変かも」

 戦闘経験豊富なラヴィが呟いたことで、ようやく異状事態なんじゃないかと思い始めた。


「変っていうのは、どういうことなんだ? こんなにたくさん出てくるのがおかしいことなのか?」

「うーん……群れだけど、群れじゃない。 たくさんいるけど、統率が、感じられない」


 ラヴィが難しそうな表情を浮かべて頭をひねる。


「統率ねぇ……なんか、そういう時期的なもんじゃないのか? 新人の訓練期間とか、もしかしたらリーダーに対する反抗期とか――」

「……ッ! マヒルさん、それですわ!」


 ベルが小さく叫んだ。

 え、どれ?


「"そういう時期"――確かにありますわ。 ドラゴン系のモンスターにだけある、特別な時期が……!」

「ベル殿……まさか、それって――竜明季(ドラグニア)……?」

「……そうですわ。 "もしも"の話ではありますけど」


 ベルとラヴィは、深刻そうな顔で黙り込む。


「ちょ、なんだその竜明季(ドラグニア)ってやつは? ヤバいのか?なあ、それヤバいんじゃないのか?」

「……かなり、激ヤバ」

「……マジぃ? 詳細を聞きたいような、聞きたくないような――」

竜明季(ドラグニア)は、簡単に言えばドラゴン系モンスターがたくさん集まる時期のことですわ」

「おおいっ!? 心の準備位させてくれよ!!」


 ベルは俺の心の準備を待たずして、淡々とと詳細を語り出した。


竜明季(ドラグニア)はドラゴン系モンスターにだけ共通して起こる現象で、起こる理由は単純――強いドラゴン系モンスターが現れた、ということですわ」


「強いドラゴン……この近くに? ヤッベぇじゃん、そんなの」


「まあ……ヤバいはヤバいのですが、さすがに伝説級のモンスターの誕生とかってことではないですわ。 例えば、同じ種の中の上位種や特異個体などが該当するそうですわ」


「な、なるほど。 じゃあ、そこらへんのモンスターでもそれは充分に起こり得るってことなのか」


「そうですわ。 でも、近隣のドラゴン系モンスターは《バジリスク》位しかいないらしいので、竜明季(ドラグニア)が発生したとなれば、恐らくバジリスク種の上位種が現れた可能性が大きいですわね。 あくまで、可能性ですけど」


 俺はひとまず、生唾をゴクリと飲み込んだ。

 もしかしたら、俺たちがいるこの近くで何かしら特別なドラゴン系モンスターが現れたかもしれんってことなんだよな?簡単に話聞いただけなのに、すごく帰りたい気分なんですが?


「それが本当なら、俺たちヤバい場所に足を踏み入れちゃってるんじゃ……っていうか、ベルお前、やけに物知りじゃないか」

「うん。 ベル殿、博識」

「そ、そうですの?」

「ああ。 意外とお前のモンスター知識って、随所で光る所があるんだよなぁ。意外と」

「んなっ、何か失礼じゃありませんこと!?」


 ベルは俺たちからの暖かい言葉に、照れて髪をいじったり、プリプリと声を荒げたり忙しそうだ。

 実際、今の異状事態にもいち早く気付いていたし、思い返せば、これまでだってそういう場面があった――つまりベルちゃん、実はできる子ってこと……?


「そ、そりゃあワタクシだって日々研鑽してますもの! 特に、モンスター知識においてはそれなりのものと自負しておりますわよ?」

 そう言ってベルは、フフンと鼻を鳴らした。


「……へぇーお前、モンスターの勉強してたのか。 すげえな。 絶対そんなことしないと思ってたわ」

「そうでしょうそうでしょう!……やっぱりちょっとバカにしてませんこと?」

「フフッ……いやいや、本当にすげえよ」


 なるほど、そういうことだったのか。

 元貴族で、本来モンスターとはほとんど無縁のお嬢様は、お嬢様なりに陰ながらの努力をしていたんだな。

 俺よりも立派な冒険者じゃないかよ。


 全く、俺の知らないモンスターの名前とかが会話に出てきたりしてたのはそのせいだったのか。《バンザ》とか、後なんだっけ……?あぁ、《グレーターデーモン》か。マジでなにもん?

 努力の結果が色んな所で滲み出てますよ、お嬢様。


「……それで、そんな勤勉なベルに聞きたいんだが……その竜明季(ドラグニア)ってのは俺たちだけで対処できるもんなのか? 恐らくバジリスク系の強いやつだろうって話だけど」


「それは……難しいですわね。 竜明季(ドラグニア)の厄介なところは、別の種のドラゴン系モンスターも集まって来るってところですわ。 本来生息地でないはずのモンスターも、何かを察知して集まってきたりするんですの」


 ほうほう?ただでさえたくさん数が集まって、さらに強いモンスターがいる上、他のやつらまでやってくると……?


「よし、帰ろう」

「そ、即答ですの!? あくまで、可能性の話で――」

「でも、危ないっていう可能性があるんだろ?」

「そ、それでも――」


 ベルは御者席から慌てて振り向く。

 ……うん、その「どうにかしないと」っていう目。

 その目が、俺の考えを――少しリスクを帯びた冒険者的考えってやつを、後押しするんだよなぁ。

 俺は思わず、フッと笑みをこぼした。


「――まあ、もちろん全てを確認した上で、だけどな。 本当にそんな危ないことになってるなら、その事実だけでも持ち帰らないとな。そうだろ、ベル?」

「……フフッ、もっちろんですわぁ!」


 ベルの顔にこぼれそうなほどの笑顔が浮かんだ。

 何だかんだ言って、こいつも立派な冒険者だよなぁ、本当に。

 

「さすがベル殿、マヒル殿……! いざ、強敵との、戦いへ……!」


 ラヴィは意気揚々と刀を抜いて、荷台で立ち上がり叫んだ。


「よしよし、ラヴィ、おすわり。《ドレイク》の時みたく、事故って飛んでったりしたら大変なんだからな?」

「うぐっ!……は、はい」


 あれが相当恥ずかしい出来事だったのか、大人しく言うことを聞いてちょこんと座り込むラヴィ。

 よし、これで良い。

 竜明期(ドラグニア)だろうがなんだろうが、俺たち三人が揃えば最強だ!


 待ってろよ、未知なるモンスター。

 待ってろよ、強大なるドラゴン……!

 全くこいつぁ、痺れる戦いになりそうだぜ!!

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