143話 お披露目はカボチャとともに
「クエストいくぞ、お前らっ……!」
散々と服を買いまくった翌日。
俺は朝っぱらから二人を叩き起こすと急いで冒険者ギルドへ。
なぜってそりゃあ、新しい"装備"を試したいからに決まってるぜ!
今の俺はもはや勇者。最高級のシャツに、特注の鎖帷子、紺のマントに、機能的なレジャージャケット。
窓に映る自分の格好を見るだけで、あぁ、俺冒険者だなぁって実感がむんむん沸いてくる……!
いざ、強敵討伐へ……!
――と思っていたんだが。
俺たちはなぜか今、外壁の外でカボチャの収穫作業に勤しんでいる。なぜぇっ!?
しかもよりにもよってカボチャとか、ハロウィンはもうこりごりなんですが?
「お、お~っほっほっほ! マヒルさん、その姿とってもお似合いですわよ! 野菜を収穫する様なんてもう、本当に……!」
ベルは収穫の手を休めることなく、俺を見ては、笑う。
ちっくしょうあの野郎、出発前に俺が「ほれ、見ろ!勇者マヒルだぞ!?」とか意気込んでたのを知ってるからって、笑い過ぎじゃねぇか!?
「おい、言っておくがなぁ、この服のおかげで俺の作業効率は格段に上がってるんだからなぁ!? 意図してなかったとはいえ、しっかり機能してるんだからなぁ!?」
俺は精一杯の強がりを見せる。
いや、それでもこのクエストはマシなほうだろう。何せ今日のクエストは正直外ればかり。
本当に何でも屋なんだな、冒険者って。
せっかく装備を新調したってのに、ゴミ掃除や荷物の運搬なんぞ、さすがにやってられんて。少なくとも今日は。
「マヒル殿、すごい。 拙者も、負けてられない……!」
ラヴィはそう言うと黙々と作業を続ける。
「ラヴィ……相変わらず、お前は素直で良い子だよ……。 さあて、今日のところはこのクエストに全力を尽くすとしますか……!」
俺は自らを奮い立たせて、わっしわっしとカボチャを収穫――している横で、ベルが俺を指差して笑う。
「さ、さすがですわ、野菜の勇者サマ! 害虫の魔の手から早く救ってくださいまし! お~っほっほっほ!」
しばく。
あいつだけは、絶対にしばいてやる。
* * *
作業開始から二時間後、無事に規定量の収穫が終わった俺たちはギルドへ報告へ戻った。
農作業という形ではあったけど、動きやすさは正直段違いだった。それに肌寒いと感じることもなく、さすがは最高級品というところだな。
「さて、予定より早く終わったし、報告を終えたら飲みにでも――って、なんだ……?」
ギルドの周りにはちょっとした人だかりができていた。どうせろくでもないことになるんだろ?うん、関わりたくない。
俺は人だかりを避けてクエストカウンターまで行くと、報告を手短に済ました。
報酬を受け取り、後は帰るだけというところで――
「ところであの騒ぎ、どうしたんですの?」
ギルド職員に対してベルが一声。
なにをしてんの?
「いやぁ、実は近くの山岳地帯に《バジリスク》が出現したとのことで対応に追われてるんです。 近々、隣街からの貨物連隊が通る予定なので、急ぎ討伐しなければならないのですが……」
ギルド職員は頭を抱えて深いため息をつく。
ほうらみろ、やっぱりこういう系の話じゃないか!
「……他の冒険者はいないんですか?」
「それが、バジリスクの危険度はC級……すぐに対応できる人がいない状況でして……」
こういう話を聞いたとなると……案の定、ベルとラヴィが心配そうな顔で俺を見つめる。
あぁ、もうわかりましたって。
だいたい予想はしてましたからね!
「……はぁ。 あの、俺たちでよければすぐに向かえますけど」
「あ、あなたたちが? でもクエスト終わったざかりではないですか?」
「なぁに、新しくした装備を試したいだけなんで」
俺はそう言ってクエストの手続きをちゃっちゃと済ませ、すぐに馬車の手配へ向かった。
道中、二人はやけに嬉しそうにしながら俺の後を着いてきていた。
「さっすがマヒルさんですわ!」
「いや、元はと言えばお前のせいなんだからな?」
「マヒル殿、さすが。 かっこいい」
「お、おう……そうだろうとも」
なんかちょっと、調子狂うぜ……
そんなこんなで俺たちは《バジリスク》討伐へと向かうことに。
だな、ひょんなことから発生したこのイベントだったが、思いもよらない出会いへと繋がる旅となるのだった。
ーーー
【討伐クエスト】
依頼内容:バジリスクの掃討(Cランク推奨)
目的地:ランロック山岳地帯山道付近
報酬:10000ゴルド(1体につき)+追加報酬あり
備考:報告によれば、複数体のバジリスクを確認しています。ただちに山道の安全の確保をお願いします。
ーーー




