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遠く離れた空の下(外資系企業における権力抗争と生存競争)  作者: 大和
遠く離れた空の下「(本編)熾烈な出世争いと闘いの日々」
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「遠く離れた空の下」第2章 第48話【シンガポールの地、遠く離れた空の下で】第2章最終話

◇◇◇ ここまでのあらすじ ◇◇◇

キボウ製品担当者としての情熱を失ってしまった大和にアーセンに残る理由はなかった。大和は業界最大手への転職を決意し出張先のリンツから転職を決意して旨連絡をする。世界中の仲間の前で行ったプレゼンは大和にとってアーセン社最後のプレゼンとなったのであった。

◇◇◇ 月例会議 ◇◇◇

リンツから帰国後大和にはやる事があった。

梨田の横暴をこのまま許す事は出来ないと考えた。そして転職を決めた大和にはもう怖いものは何もなかった。

梨田には率直に本人に組織を私物化する事やめるように訴えた。しかし梨田は激高するだけで話にならなかった。人事にも梨田が事業部内で行っていることを訴えた。顧客のために正しい事をしていないという理由をでっちあげて気に入らない部下を降格させ、尻尾を振る人間を昇格させる、その事に対する是非を問うた。そして大和は梨田が業務時間内にも副業をしていることを伝え聞いていたのでその件も報告した。

「あなたたちは本当にこのままでいいのですか。」

人事の中に一人だけ大和を理解してくれる人がいたが後は大和の訴えは無視された。人事の理解者とは転職前にランチに行く機会を得た。

「大和さんの言っていることは正論です。でも今の今山社長がいる限りこの組織は変わらないでしょうね。」

人事担当者はため息をつきながらそう話をした。

彼女は大和を会議でかばってくれていたそうだ。しかしながら大勢は大和が組織に反乱を企てていると捉え大和を問題視していた。

梨田だけでなく今山も後ろ暗いところがあるらしい。

マスコミが不正を嗅ぎ付け会社におしかけてきたことも1度や2度ではないとのことであった。

”それが本当だとしたらこの会社に未来はないな。”

大和はそう思った。

大和が辞表を出したのは月例の事業部会議の前であった。辞表を受け取った梨田は

「そうか。ただ今山社長は受け取らないと思うぞ。まぁ一旦預かる。」

そう言って大和の辞表を受け取った。

今山社長が事業部に会議に出席したのは初めてであった。今山社長は一言も発さず終始不機嫌そうに座っているだけであった。

大和も会議では一言も発言する事はなかった。

この時点で今山が大和の辞表を受け取っているかどうかはわからなかったが会議の後社長秘書から連絡があり夕方社長室を訪れるように言われた。


◇◇◇ 社長室 ◇◇◇

社長室の手前にある社長室ブースで社長と面談予定がある事を伝えるとすぐに部屋へ通された。思えば宇月が事業部長をしていたころには社長室を訪れる機会が多くあった。戦略室室長とともにキボウに関するショートミーティングによく呼ばれ訪れていたのである。梨田が事業部長になってからはそのような機会もなく社長室を訪れるのは久しぶりであった。

「懐かしいな。あの頃はまだキボウの発売に向けて情熱をもって取り組めていたな。」

大和は思った。

秘書に連れられ社長室へ行くと今山は新聞を読んでいた。老眼鏡をずらして大和を見ると部屋へ入るように促した。

「辞表は受け取った。なぜ退職する決断をしたのだ。」

大和は説明した。梨田とは絶対的にフィロソフィーがあわないし梨田と働くことは出来ない。そのやり方は横暴であり多くの犠牲者が出た。これからも犠牲者は増えるだろう。そんな環境では働きたくない。

そういう趣旨のことを今山に告げた。

どこの会社に行くのか聞かれたがもちろん答えはしなかった。ただし部長で呼ばれていることだけは伝えた。

「小さな会社で部長になるよりはここアーセンに残った方がいい。お前の論理的な思考や経験は失いたくない。」

今山は大和が部長になるために格下の会社に行くであろうと考えていたようだ。(実際はアーセンの2倍ほどの規模のある大企業への転職なのだが)

そう言われたが大和の心は決まってた。

約1時間今山には説得されたが決心が固い事を知った今山は態度を変え

「わかった。出ていけ。辞表は受理する。」

不機嫌そうにそう大和に告げた。


◇◇◇ 学び ◇◇◇

約5年のアーセンでの日々で大和はいくつかの学びを得た。

”上司と闘ってもおそらく勝ち目はない。”

”世の中にはサポーターよりも足を引っ張る輩の方が多い。”

”妬みには気を付ける必要がある。”

一方でこれは朗報だ。

”一生懸命努力をしていれば社内だけではなく社外でもチャンスが広がる。結局実力をつけるには自分自身が努力するしかない。”

その後数年が経ち今大和はシンガポールの地で責任のある職務を任されている。もちろん運もあった。しかしこれは大和自身の努力によって勝ち取ったものだ。

転職直後はいろいろな人に梨田や黒馬の事を恨んでいないのか聞かれる事があった。

大和はまったく彼らを恨んではいなかった。もしもその後大和が失敗していれば恨んだかもしれない。しかし大和はその後も努力を重ね今大きな役割を任されている。

もしも梨田に尻尾を振ってほどほどにアーセンで成功していたら今シンガポールで働く機会は得られなかったであろう。

恨む理由がないのである。

その後アーセンはどうなったのか。

大和が去ったあと黒馬は部長に就任した。しかしながらキボウの競合との競争に敗れたアーセン新製品事業部は組織を縮小させる必要が出てきたため部長とは言えかなり小さなチームで社内での存在感は極めて低いとのことである。

梨田とは一度展示会で顔を会わせた。

大和がトップインフルエンサーと話しをしていると得意気に割って入ってきたのだがトップインフルエンサーは梨田を無視、そして大和も梨田に一瞥することもなくインフルエンサーと場を去った。

結局楽して成功する事などありえないのである。

派閥によって、上司に媚びを売ることによって成功したとしても実力がなければそれは一時的な成功であり永続はしないのである。

そしてその成功を維持するために上司が変わる度に媚びを売り続ける人生を送る事は大和にとっては虚しい事のように感じるのである。


◇◇◇ シンガポールの地、遠く離れた空の下で ◇◇◇

大和はシンガポールの生活を気に入っている。

多様性を受け入れるこの国の雰囲気がとても気に入っているのだ。

”出来る事ならシンガポールでキャリアを終えたい。”

そう考える事もある。

大和がアーセンを去ってシンガポールへやってきたのは約7年後であった。

シンガポールに来るまでもいろいろな成功もあれば挑戦もあった。

そしてこれからもそのキャリアを終えるまで想像できないようないろいろな経験を積んでいくのだろう。

大和はこれまでも前向きに努力する事で様々なチャレンジを乗り越えて来た。

そう長くはなくなったこれからのキャリアを全うするため大和は前を向くのである。

(第2章・完)


ここまで読んで頂きましてありがとうございました。


好評頂けるようでしたら第3章にも取り組みたいと思います。ご意見お聞かせ頂けますと幸甚です。

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