後日談
その後、どうなったかって?
帰ったのは私の家だったよ。
クロスは私を抱きかかえたまま、両親の元へ行き、結婚させてほしいと許可を取りに行ったんだ。
はっきり言って意外だった。
俺様っぽいのに、そのへんはしっかりしてるんだね。
お父さんとお母さんは、私の気持ちを第一にと考えてくれた。
私は、クロスが好きだ。
だから、苦労するとは思うけど、魔法大国の王子様であるクロスと結婚したいと素直に伝えた。
そうしたらね、誰よりも先にクロスが号泣しちゃって……それを見たお父さんが泣きだしちゃって、私とお母さんは二人してずっと笑ってた。
私の気持ちもはっきりしたし、両親の許可も取れたから、すぐに魔法大国へ向かおうってクロスは言ったんだけど、その前にどうしても会いたい人がいるから、待ってもらった。
誰に会うかって、スージー以外にいないでしょ?
スージーは今は子爵家の令嬢だから、きちんとアポ取って会ったよ。
場所は子爵家のお庭で二人だけのお茶会。
「アーシュラちゃんのことだから、来ると思ってた」
スージーは開口一番そう言った。
「さすが、スージー!」
「何年幼馴染やってると思ってるの?」
そう言って、二人で笑い合った。
「へえ、あの時の真っ黒い男性って魔法大国の王子なんだ。いきなり現れて、アーシュラちゃんにべたべたするから、殴ってやろうかと思ってた」
クロスがどんな人物か説明すると、スージーは大きくため息をついた。
「っていうか、その真っ黒男、隠れてないで出てきたら?」
「え?」
私は何のことかわからずにキョロキョロしてたんだけど、茂みから黒猫姿のクロスが現れた。
「なぜバレたんだ」
クロスは私の足元まで来るとそう呟いた。
スージーはまたしも大きくため息をついた。
「カンってやつ。アーシュラちゃんにベタ惚れなんだから、放っておくなんて思えない」
「ぐぬぬ」
スージーの言葉に、クロスは唸っていた。
「え~? いつの間に二人は仲良くなったの?」
私は驚いてそう言うと、二人は呆れた顔をしていた。
「言っておくけど、大事な幼馴染なんだから、大切にしてよ! 泣かせたら、奪い返しに行くから!」
「大事……!?」
スージーにそんな風に言ってもらえる日がくるとは思ってなかった。
本当に嬉しくて、泣きそうになっていたら、クロスがぴょんっと膝の上に乗った。
「お前の言葉ですでに泣きかけたぞ。どうしてくれる?」
クロスの言葉にスージーはムッとした顔をしていた。
「ああそうだ、貴族の話に疎いだろうから、伝えておくね」
スージーはそう言って、レイラちゃんたちのその後を教えてくれた。
レイラちゃんは結局、ここが現実世界だってことが受け入れられなくて、おかしくなってしまったらしい。
毎日、『リセットボタンはどこ!?』とか『クロス様はいつ現れるの?』って叫んで大暴れするから、男爵家で監禁されてるとかなんとか……。
ウェンディ様は婚約破棄ではなく、白紙ってことになって名誉が保たれたって。
でも、すぐに王太子となった第二王子と婚約しちゃったとか。
もともと第二王子が好きだったから、ウェンディ様は幸せそうだって。
デリック殿下は逆に王太子じゃなくなって、北の砦に飛ばされたらしいよ。
なんでもそこは男色家が多いってウワサのある砦らしくって、いつもビクビクしてるって。
他の四人はそれぞれ、再教育を受けたり、人見知りが悪化して学園に来なくなったり、鍛錬を続けたり、田舎に帰ったりしたって。
なんだかんだで、スージーにもちゃんとクロスを紹介できたし、私は気合を入れて魔法大国へと向かうことができた。
それからすぐに結婚式があったり、お城の中で喫茶店を始めたり……なんていうのはまた別の話。
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