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夢tube断章、スカイ・エリアス編  作者: grow
断章 世直し新婚旅行編
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第19話 マリナス共和国14




ドック奥――照明魔法の光が粛清官とその周りの海賊達を照らす。


中央に立つ粛清官。

その周りに海賊達が粛清官を中心に円を描く様に陣形を組んでいる。



そしてその外側から海賊達を取り囲む

マリナスの治安維持部隊と哨戒部隊、

政府付きのSPとそして志願兵。



スカイは上から照明役の魔法士たちと共に

その状況を見下ろしていた。


その中央で、粛清官が天へ腕を広げ、狂人のように叫ぶ。



「待ちわびたぞっ!! 我が天敵――

スカイ・エニーフィートォォ!!!」




彼が腰から短刀を抜き、

その一本をそのままスカイ目掛けて

勢いよく投げつけた。


「うおっ!?」


「うわぁっ!?」


スカイが反射的に左に避け、

照明魔術師が悲鳴を上げて伏せる。



ナイフは風を裂き、建物の壁に突き刺さる。

光を受けて刃がギラリと光る。


スカイは息を呑み、


「……なんてやつだ……!」




スカイは冷静を装いつつ、


壁からそのナイフを引き抜いて握る。



粛清官が周りを振り返り、興奮しながら号令を出す。


「ハハハ、お前等喜べ!!

我らが神からの最後の試練だ!!

全ての敵を潰せェ!!目に見えた奴は皆殺しに

しろ!!

こいつらは、我らが神への捧げ物だぁっ!!!!」





海賊たちが吠え、突撃してくる。



スカイはすぐさま叫ぶ。


「怯むな! ここで止めなきゃマリナスは滅ぶ!

 ――迎え討てッ! 最終決戦だ!!」



治安維持部隊と志願兵達が一斉に突撃。



銃声、剣戟、悲鳴――ドックが戦場になる。



乱戦の中、粛清官は鉤縄を投げる。

縄はスカイの立つ通路の手すりに絡みつき、

彼はまるで獣のように駆け上がろうとする。



スカイは歯を食いしばり、


「甘いッ!!」


奪ったナイフで縄を断ち切る。



粛清官は舌打ちし、身を翻して階段へ向かう。


「……ならば、すぐに地獄を見せてやる!」


上階デッキへ駆け上がるため、

通りすがる敵兵たちを片手の短刀一本で次々に切り伏せていく。

跳躍、回転、軸打。まさにアクロバット。



スカイはその光景を、まるで死神がこちらへ向かうかのように感じて冷や汗をかく。


粛清官が階段を駆け上がる。

赤黒い外套が翻り、刃が血の筋を描いた。

彼の動きはもはや人間のそれではなかった。


「低き者どもに死への導きを!

高数値への道は死と共にある!」



照明役の魔法士の喉が切り裂かれ、

治安維持部隊の兵が次々と倒れる。


そこは地獄のような混沌だった。



スカイは全体を見渡していた。


(あいつ……階段を使ってこちらへ向かうつもりか。

 なら、こっちは逆手を取って下へ行く。)



スカイは振り返り、反対側の階段へ駆け出した。



照明魔術に照らされた影が狭間を走る。


粛清官は上へ上がりながらも、鋭い視線でスカイを見つけた。

下層へ消えていくスカイの姿――。


粛清官は舌打ちし、


「逃げるか、“天敵”……!

だがこの狩りから逃げられると思うなっ!」




粛清官の命令が飛ぶ。


「下の奴らに告ぐ! 

“天敵”スカイ・エニーフィートを殺せぇッ!!!

奴の死が我らを高数値へ導くのだッ!」



直下の部隊が一斉に動き出す。

叫び声とともに階段へ向かって突き進み、

階段から降りたスカイに向かっていった。


スカイも短剣を構え、わずかに口角を上げた。


「……冗談だろ。

 俺を囲むには、まだ数が足りないな。」 


短剣を翻し、

近づいた海賊の一撃をいなす。




粛清官が高台から一気に飛び降りる。

獣のように着地し、腰を落とした瞬間に突き出した刃がスカイへ向かって行く。


立ちはだかる敵を斬り倒し、遂にスカイに追いつく。




粛清官が嗤う。


「逃げ場などない。“天敵”よ――我が刃に散れッ!!」



黒い刃がスカイに向かって振り下ろされる。

その瞬間、金属音が炸裂した。




ガキィィィ!!!




粛清官の短刀の軌道を、横から長い棒が弾いた。


スカイは目を見開く。


「っ!?」





粛清官の目の前に立ちはだかったのは――


レニールだった。彼は棍をくるりと回し、

ニヤリと笑う。



「――待たせたな、クライム!  

……いや、“スカイ”って呼んだ方がいいか?

何にせよ危機一髪だったなぁ!!」




スカイは一瞬呆気に取られ、

すぐに肩をすくめた。


「お前……よくここまで。

……どっちでもいいよ。好きに呼べ。」




レニールの背中には無数の擦り傷。

それでも彼の顔は、少年のように燃えていた。


「親父も首相も安全圏に置いてきた。

こっからが反撃の本番だろ?

オレも加勢する!エイラもすぐ来るはずだ!」



その名を聞いた瞬間、スカイの表情が険しく変わる。


「……エリアスが!? 

バカな――なんで止めなかったっ!?

こんな死地に来させるべきじゃない!」



だがレニールは棍を握り直し、

わずかに口角を上げた。



「なぁに、心配いらねぇよ。

彼女には“秘策”を持たせてある。

――それがうまくいけば、勝機はあるぜ。」



スカイが一瞬黙り、すぐに頷く。


「……分かった。なら、信じる。」



二人は左右に並び立つ。

照明魔法の光が彼らの顔を照らす。



刃を構える粛清官の笑みが、闇の中でより深く歪んだ。


「ふはは……二匹目の獅子とはな! 面白い!

来い。二人まとめて……折ってやる!」



スカイとレニールが同時に前へ踏み出す。

互いの息が合うように、動きは鏡のようだった。



――そして、「共闘」の戦いが幕を開ける。

その中心で、狂信と理知が、肉体と信念が、激しくぶつかり合っていた。



粛清官は片腕を広げ、ナイフを逆手に構える。

笑いと狂気を混ぜた声が、戦場に響いた。



「ハッハァァッ!! さあ、来い、

獣と賢者の共演よ!!我が刃の錆にしてやるっ!!」



彼が一歩踏み込んだ瞬間、風が裂けた。

床に滑り込むように前転、逆立ち、回転――

身体ごと刃を弾丸のように叩き込む。



スカイが息を呑む


「速ぇ……っ!」



横薙ぎに飛ぶナイフを、レニールの棍が弾いた。

火花が散り、金属の悲鳴が響く。


レニールは歯を食いしばり、


「チョロチョロしてんじゃねぇっ、

この変態野郎がっ!!それは一度見てんだよっ!!」



棍の先が閃き、突きが無数に降る雨のように放たれる。

リーチの差を生かした鋭い突き。



粛清官は上体を反らせ、鋼の足で受け流し、即座に体勢を変える。


スカイは思案顔で、


(単独じゃ押しきれない――だったら、

“流れ”で刻む。)


スカイが低く声を投げる。


「今だレニール、こっちに誘導!」


レニールが三撃目の突きを放ち、

粛清官が横に跳んだ瞬間――


その軌道上にスカイが滑り込む。

奪ったナイフが閃き、粛清官の頬をかすめた。


「……ほう、面白い。」


切り返しで距離を取った粛清官。

しかしその背後にすでにレニールの棍の突き

が迫っている。


「逃がさねぇよッ!!」


再び金属音。火花が散る。


スカイはナイフを構えながら声を張る


「連携を崩すな、レニール!

呼吸を合わせるんだ!!」


「おう!クライム、いや、“スカイ”! 

やっとノってきたな!!」




二人の声と動きが次第に重なっていく。

棍が回転し、ナイフが滑る。


前衛と後衛が目まぐるしく入れ替わり、

粛清官が一瞬、どちらを狙えばいいのか見失う。


粛清官は苛立ち、舌を打つ。 


「……小賢しい真似を……っ!!」



足場を蹴って距離を取り、片膝をつきながら笑う。

その笑みが不気味に歪んだ。



「舐めるな若造らがぁぁっッ!!」



瞬間、床が爆ぜるような踏み込み。

四方へ飛び散る瓦礫。

粛清官が捨て身の速度で突っ込んでくる。


スカイは焦った。


「っ! レニールっ、下がれ――!」


レニールが棍を盾に構えた途端、粛清官の刃が棍を切り裂き、

二人の間に風の渦が走った。



スカイは短く息を切らしながら、


「クソッ、持たない……っ!」


粛清官の笑みに、勝利の色が見える。




――その刹那。空気が歪んだ。高く、澄んだ音。



だが次第にそれが鋭い痛みに変わり、

空間そのものが振動を始める。


粛清官は耳鳴りに動きを取られ、


「な……!?」



部下たちが耳を押さえ、倒れ込む。



鉄骨が軋み、波が砕けるような音が

全方位から押し寄せる。


スカイは顔を上げ、


「この音……まさか――!」




照明の向こう、白い風に包まれた人影。

エリアスが、魔杖を地面に突き立てていた。


エリアスは高周波の音響魔法を発動。


音が潰れる。

世界が止まった。敵も味方も、動きが鈍る。

膝をついた粛清官が歯を食いしばる。



粛清官はエリアスの姿を見つけると震える声で、


「……“敗北の姫君”か……!」



耳鳴りのような静寂の中、



エリアスは粛清官の位置を正確に捉えると、


魔杖を掲げた。エリアスは、クラゲの麻痺毒の入った瓶を上の方へ投げると、誘導弾の

魔法を唱えた。



青白い魔弾が放たれる。

数発の弾が空中で軌跡を描き、麻痺毒の瓶を割り、誘導弾が麻痺毒を吸収。



光る糸を引きながら粛清官と海賊たち目掛けて襲い掛かり、海賊達の体のどこかしらに着弾。



粛清官にも足に着弾して、

動こうとするが、足が動かない。



「く……っ、体が、重い……!?それにこの痺れは……っ!」



レニールがその隙を逃さない。

棍の残った半分を両手で握り、

目の前の粛清官めがけて叫ぶ。


「貰ったァッ!!

――これで終いだァァァァッ!!」


全力の一撃が粛清官の胴を捉えた。


金属が軋む音と共に、狂信の剣士が壁に叩きつけられる。戦場に、静寂が戻る。



それは敗北の静けさではなく――勝利の静けさだった。



スカイは息を整えながら


「勝ったな……。」



レニールら笑いながら肩を回し


「当たり前だ。

エイラが隙を作ってくれたおかげだぜ。」


2人はグータッチした。


遠くで、エリアスが杖の先を下ろし、

微笑んで二人に手を振っている。


スカイはエリアスを見て、


「……まったく、

彼女はいつも絶妙なタイミングで無茶をする。」


レニールはスカイの肩を叩き、


「アンタだって似たようなもんだろ?」


スカイは苦笑し、


倒れた粛清官の方を見やる。その瞳に、どこか哀れみの色が混じっていた。



ドック内を覆っていた煙が、次第に薄れていく。


壊れた鉄骨、焦げた匂い、赤く流れる血。

そこには、死と生が入り混じった静寂が広がっていた。


スカイは戦いの余波が去った場を見渡した。

倒れ伏した者たち、捕らえられた海賊たち、誰かの叫びも、もう聞こえなかった。



スカイは胸を抑えた。


(……これが、勝利の代償か。)


目に映る光景は、あまりに痛ましい。

彼の横顔には、安堵よりも苦悩が深く刻まれていた。



レニールは静かに息を吐き、倒れた粛清官に近づく。


棍を突きつけると、低く言い放った。



「終わりだ、マリナスの悪夢め。

今度こそ、お前らの罪、清算させてもらう。」



粛清官の身体がわずかに痙攣する。

その口元がわずかに歪み、残った力で立ち上がろうとした。


「ま……だ……。

せめて……お前だけでも……道連れにしてやるっ!!

 ――死ねぇっ! レオナルドの息子よぉっ!!」


閃く刃。それがレニールに向かって振り下ろされた瞬間――。



ズバンッッ!!重たい金属音。

赤い飛沫。



レニールは本能的に目を閉じた。


「……!?」痛みが来ない。


恐る恐る目を開く。



レニールの視界に映ったのは、


自分のすぐ目の前で刃を受け止める影。



スカイだった。ナイフを逆手に持ち、

その切っ先を粛清官の左胸から斜めに滑らせていた。




黒い刃に血がかかり、鉄と血の匂いが混ざる。


「ク、クライム……!!」



スカイの目は、鋭くも静かだった。

その瞳に宿るのは、怒りではなく、確かな覚悟。

斜めに走る一閃。

粛清官の胸から脇腹にかけて血が走り、

彼の体が後ろへ倒れた。


「がっ……は……!」


息をするたび、苦痛の音が漏れる。もはや立ち上がることはできない。

それでも、その双眸だけはまだ濁っていなかった。


傷口から血が流れ、鉄臭い匂いが立ち込める。



粛清官は息を詰まらせながら、


「ぐっ……さすが……だな……。

やはり……貴様が一番の障害だった、“天敵”よ……。

レオナルドとは……違い……容赦が……ない……。」



スカイの表情は、ひどく静かだった。

その瞳の奥に宿るのは、冷徹ではなく、決意の炎。



「ああ……。

お前らのような悪には、情けは何の意味も持たない。

――ゼストールで学んだ。

大切なものを守るためなら、この手が血に染まっても構わない。

これまでも……これからも。」



その言葉と共に交差した刃の残滓が、

遠い過去の罪と重なって見えた。


血の蒸気の中で、スカイの姿が一瞬、

ゼストールを貫いた夜と重なった。



粛清官は、呻きながらも微かに笑みを浮かべる。

それは、残酷なほど穏やかな笑いだった。



「フ……フフ……“天敵”。

……この“やり残し”に……影を落とす存在だと

分かっていても……。

……お前を、“神の天敵”として始末したかった……。

それに……こだわった……己が命取りとはな……。」



バタリ――。



そのまま、両腕から力が抜けた。呼吸はあるが、

その体は二度と思うように動くことはなかった。


レニールが息を飲み、棍を下ろす。

顔を歪ませ、スカイを見上げた。


「お、おいスカイ……。

大丈夫か……? その目……。

いくらテロリストでも、容赦なく斬るなんて……。」





スカイはかすかに笑う。

けれどその笑みは、どこか切ないものだった。


「あぁ、大丈夫だよ。

……これでも、俺は一人殺してるからな。」



その声は、自嘲でもあり、覚悟の吐露でもあった。


レニールは言葉を失い、ただ拳を強く握った。


静寂の中、足音が近づく。



エリアスがゆっくりと歩み寄り、

血に汚れたスカイの背中を見つめた。


彼女は何も言わず、

ただその震える背に、そっと両腕を回した。



エリアスは小さく囁く。


「もう、いいのよ……。

あなたは……それでも守ってくれた。

だから……戻ってきて。

あなたは、まだ“人”なのだから。」




スカイは目を閉じ、

その言葉にわずかに安堵の息をこぼす。



煙の匂いが海風に流され、

崩れたドックに朝の光が差し込んだ。



マリナスの悪夢は、ようやく終わりを告げる。

だが、それぞれの胸には、


「守るために何を犠牲にするか」


という問いが、

まだ静かに灯り続けていた――。




こうして、マリナスに降りかかった二度目の悪夢は終わりを迎えた。




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