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群蒼列伝~異世界に召喚された征服系主人公はクラスメイトと共に征服戦争を開始した~  作者: 大ミシマ
第六章 魔王と覇王

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第三百十二話 VS新納魁世Ⅹ

「朝です陛下。お目覚めください」


「ん、んん」


 魁世は大幕営、いつもの天幕の下、寝台の上で目を覚ます。

 来ていた軍服も知らぬ間に寝間着に変わっていた。


「眠い。まだ眠い」


「申し訳ございませんが、小職は宰相代理のように自然に起きるのを待ちはしません」


 未だ布団にくるまろうとするが、被る布団を引っ張ってミノムシのように丸まるカイザー・カイセを露わにした。魁世は仕方なくのそのそと寝るのをやめ、着替えはじめる。


 そういえばこの世界に来たばかりの時もこんな事があった。あの時は雨雪が起きるのを待ってくれた。僕のいない間どんな話をしたんだ?そんなに二人は仲よかったっけ


「御生還おめでとうございます。小職は陛下の御帰還を待っておりました」


「うん……軍の方はどうなっている」


 前髪をかき上げた主君に、一瞬見惚れそうになったフィーリアは、やや目線を逸らして報告する。


「軍は太白作戦に則り、ホンダ元帥と青菱混成軍団を主軸とした一軍が白百合王国の王都パリーシィに進軍。モリ元帥と百足旅団を主軸とした一軍が南西の同君連合トーラマ王国へ進軍を開始しました」


 立ち止まることは許されない。まともな反撃の機会は与えない。このまま一挙に奪う。魁世と透が参謀本部で決めた方針だった。


「ジグモンド中将の率いるもう一軍が北の英連王国へ上陸するため白百合王国の北岸に移動。英連王国連合艦隊を撃滅した海上のムナカタ国家元帥閣下より、異種族が降伏の印に数百の輸送船と船員を無償で提供させたので、それを上陸作戦に用いるよう連絡が。“もう海で邪魔する敵はいなからだいじょうぶ”、とのことです」


 続く報告の中で、フィーリアは前触れなく言葉を詰まらせる。


「それと……」


 それは魁世や諸将たちに一番の出世頭と目されていた男の死亡だった。


「陛下、エンシン中将の件ですが、ご遺体と、捕縛された暗殺の犯人がここまで運ばれてきました。ニュウタバル少佐の報告書によれば暗殺は集団でおこなわれ、殆どは即応で殺せたものの、暗殺集団の頭目がエンシン中将を刺殺、恰好と技能からして件の暗部集団、橙頭巾で間違いないと」


 イダリア島・アーベナ半島軍管区司令官エンシンの死は、ニュウタバルら士官学校卒が代理で実質の指揮をとっている時点で分かっている事だった。それでも事の次第を説明されると簡単には済まされない感情も沸いてくる。


「エンシンが……ここウォーテルローには戦没者の鎮魂の社を建てる気でいたが、エンシンが殺された場所にも建立しよう。進めておいてくれ」


「かしこまりました」


 大幕営の中に沈黙が流れる。魁世は用意されていた軍服に着替え、執務の机に重苦しく腰を下ろした。


「すこし疲れたな」


 代わり映えのしない天幕をただ茫然と眺める。それで何か変わるわけでも無いが、魁世はエンシンと共につくった料理や戦場の勝利を思い出していた。


「陛下」


「ん?」


 思い出も大切だが、今を生きる者達をおろそかにする訳にはいなかい。視線を補佐官に戻した。


「今回の件で、我々にはひとつ重大な弱点が露呈しました」


「うん」


 特に雰囲気の変容もなく、それは告げられた。


「重大な弱点、それは陛下に正統な後継者が不在である事です。これは早急に対策を講じねばなりません」


 魁世は自身が宰相と軍最高司令官を兼務することを想起する。


「うん、指揮官の指揮権移譲は大事だ」


「そこで陛下。小職とイジューイン宰相代理、ハイドリヒ総裁の少なくとも三人で陛下の番い、つまり夫婦となります」


「うん、……は???」


「うん。確かに了承なさいましたね。小職とイジューイン宰相代理と昨日(さくじつ)話し合い、遠方のハイドリヒ総裁とは魔法通信で協定を結びました。抵抗は無意味です」


 もしも夫婦の契りを結んでくれないのなら、補佐官のフィーリアを含む宰相代理の雨雪、総裁のハイドリヒ華子が連携して職務放棄、ストライキを行い、国家の行政を停滞。実際には破綻させる作戦だった。


「ま、待ってくれ」


「待ちません。では、まずは小職から」


 フィーリアが唐突に脱ぎ始めた。これならカイザー・カイセが寝間着の時点で襲っておけというのは他人の意見である。


「話はわかったから。待ってくれ」


「待ちません!陛下はそうやって話を後ろに投げるではありませんか!……待っている側のこともお考えください」


 補佐官、いいやフィーリアからの湿った声に、魁世は言葉を詰まらせた。そして自分のしてきたことを顧みる。

 そして決めた。


「よしわかった。全員娶るぞ」


 雨雪とフィーリアの二人が画策したボイコット作戦は実行されることは無い。内心で雨雪もフィーリアも、魁世が断固として拒否するとは想っていなかった。


「それでこそ陛下でございます。では陛下そろそろ」


「おいがっつくな、良いから待て、待てうわっ——」


 こうして新生の帝国は新たな局面を迎える。かつて新進気鋭を自負してきた勢力は、また新たな進取、そして守成とを目指す。

 大皇国。新元号“開嘉”元年、“億年帝国”を目指した国家事業がはじまった。


 …


「朝寝ですか流石だね。カイザー」


「うっす、翠も来ていたのか」


「さっきから聖櫃?って旧千年帝国のハコと殆ど同じな宇宙船を調べていたんだけど」


「うん」


「謎の箇条書きされた数字の羅列と、この世界を表した球体に縦線が引かれた地図を見つけた」


「ほお凄い」


「で、実はこれと似たやつがあの旧千年帝国の内部にもあって、同じくこの世界を表した球体に横線が引かれた地図と、数字の羅列」



 翠は白衣を着た両手を広げた。


「魁世、元の世界には国際共通の数字で表せるものがある。さて何でしょう」


「座標」


「やるね。十点あげる」


「で、聖櫃と千年帝国のハコ、二つに遺された数字をそれぞれ緯度と経度の座標としてたら、ニ十か所の地点が現れた。ま、これは当たり前だけど」


 さっそく記してきたようで、翠は世界地図を広げる。なんのことは無い、聖櫃には既に記録されていたものを翠が早々と模写していた。魁世たちの活動してきた人類世界は、地図の中で僅か八分の一。


「数字の隣には聖櫃とかハコに似た形のマークが描かれていた。つまり」


 笑みが零れそうになって、手で隠した。


「宇宙船の在りかを示している可能性がある。宝探しだな」「あるいは艦隊建設」


 魁世は円環の瞳を煌々と輝かせた。


「話が早い、さあ一気に宇宙艦隊の創設といこうか!」


 また進みだす。それが地獄の闘争であろうと、彼岸の彼方であろうと。

次回

最終章

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