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悪の首領(ボス)の世界征服術  作者: 黒牙 透
第4章タノマ地区編【壱】
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第4章第34話未来の平和なき冒険その2~次郎とジョン~

 未来が食堂らしき場所に来ると、既にジョンが待っていた。食堂には他にも旅人らしき人達が食事を取っていた。全員男だったのが未来には印象に残った。未来はジョンの前の席に座った。


 「今日の夕飯はハンバーグ定食だ」


 ジョンは目の前に運ばれてきた食事を見て言う。未来も運ばれてきた食事を食べながらジョンと会話していた。

 会話して分かったことは三つ。一つ目はお互いに人探しをしていること。二つ目はジョンはジョウトク大陸(サイカイ地区・テレイ地区・タノマ地区)の出身ではないこと。船が難破してタノマ地区に流れ着いたとのことらしい。三つ目はタノマ地区が三地区の中で最も治安が悪いということ。さっき未来が注意された理由でもあった。


 食事を終えると、ジョンは『また明日な』と言ってさっさと自室に行ってしまった。未来も部屋に戻って、ベッドで寝ることにした。本当は風華達の所に戻るつもりだったが、それが出来ない理由があった。未来がこの町に来たとき誰も外を歩いておらず、瞬間移動マシンを使って戻ろうとしたが、戻ることは出来なかった。何度も起動させてみるが、やはり家に戻れることはなかった。


 未来はいつの間に寝ていた。今日の出来事を振り返りながら。帰れなくなった未来の最初の日が終わった。これから激動の戦いに巻き込まれるとも知らずに。






 翌朝、窓から差してきた光が部屋全体を明るくしていた。未来は起きるとすぐ支度をした。一日だけの滞在だったが、前に迫夜から『準備は万全にしといた方がいい』と忠告を受けていたため実は着替えを持ってきていた。どこに閉まっていたかというと、迫夜が開発した空間収納器の中である。


 瞬間移動マシンと同じ指輪に取り付けられたこの機械は所持者の声に反応し、所持者の前に一立方メートルの空間を出現させる。この一立方メートルの空間は、所持者のみが干渉できる優れものである。しかし、某猫型ロボットがつけているポケットのようにどんなものでも収納可能というわけではない。


 一立方メートルよりも体積が大きい物は入らない。当たり前だが、体積が小さい物でも容量には限界があり、それを越えれば入れることは不可能である。未来はそこに本来ならばリュックやポーチに入れるべき物をしまっていた。どういう原理が働いて作られているのか科学も苦手な未来にはどうでもいいことだった。


 未来は着替えを済ますと、朝食を取るために食堂へ向かった。


 「よっ、未来ちゃん。おはよう」


 食堂に行くと昨日と同じようにジョンが先に席に座っていた。


 「おはようございます」


 「ハハハ、そんなに(かし)まらなくてもいい」


 未来が礼儀正しく挨拶する。迫夜と出会った時は礼儀の作法のさ文字も知らなかったが、今はだいぶましになっている。教えているのは迫夜ではなく優理だが……。


 「朝食はフレンチサラダとトーストだ。故郷でも健康的な食事を取るために食べてたなぁ~」


 「私は米派だからパンはあまり食べません。」


 「パンが嫌いだと! ダイエットなんて思春期の女の子がすることではないぞ」


 ジョンはどう聞き間違えたのか未来をパン嫌いだと思ってしまっていた。未来は必死に訴えて誤解を直そうとするが、聞き入れないジョン。結局、運ばれたパンを食べることでなんとか誤解を解いたのであった。


 「俺は今日のうちにこの町を出ようと思っている。未来ちゃんはどうすんだ?」


 「私も今日中に町を出ていこうと思います」


 「あてはあるのかい?」


 「いえ」


 ジョンは危険地帯であるタノマ地区を未来一人でさせるのを心配している。お互い少しの沈黙の後、ジョンが口を開いた。


 「なら俺と共に捜し人を見つけにいこうか」


 「ありがとうございます」


 こうして未来はジョンと行動を共にすることになった。未来とジョンは宿屋の女将さんに別れを告げ外に出る。昨日とは違い、町中を歩いている人が多くいた。ジョンは未来を誘導して、町の入口に連れていた。


 入口とはいっても昨日未来が入ってきた側ではなく、町の北側の入口であった。ちなみに未来がこの町に入ってきた時に通ったのは町の西側の入口である。


 「俺の相棒のタロスだ」


 そこに居たのは馬だった。馬は説明しなくても分かると思うが、馬である。ジョンはタロスに乗り、未来を後ろに乗せた。昨日はバイクに乗り、今日は馬に乗る。ある意味乗り物づくしだった。


 「じゃあ、出発だ」


 ジョンの掛け声と同時にタロスが駆け出した。バイクよりは遅いが、バイクとはまた違う良さを感じた未来。昼前までに二十キロ以上走り、昼食を取るため一時休憩していた。


 「そう言えば、リュックとか背負ってないけど大丈夫なのか?」


 「大丈夫です」


 よく考えてみれば、最初からリュックを背負ってなかったが、今頃追及してくるのはジョンも間抜けな所があると感じた未来であった。


 (うっ、まずっ)


 昼食は携帯食料だった。携帯食料は見た目が、残飯っぽく味はないためすごく不味(まず)かったが、文句は言えないので無言のまま完食した。昼食をパパっと食べた二人は再びタロスに乗り、目的地に向かった。


 二人はどこに向かっているのか? それはキタタノマタウンの北にあるガンバイトシティである。ガンバイトシティにまでは徒歩なら三日、馬でも一日半かかる道のりで今日は野宿するのは確定していた。


 馬で移動中、前方から一台の馬車がこちらに向かってきた。国道とは言え道は狭いためタロスに命令を出し、道端に逸れる。馬車が通り過ぎた後、タロスは再び走り出した。走り出して数時間後、二人は道中にある野宿用の広場に到着した。


 広場は周りの一メートルを越す草花がある中、ポツンと焦げ茶色の地面があり、整備された様子がくっきりとある場所である。ジョンは自分の荷物からテントや(くい)を取りだし、テントを張る作業に取りかかり始めた。未来も広場の端にある薪置き場から薪を持ち出し、火を起こしていたりと忙しかった。






 その頃、昨日未来と別れ一人になった次郎はとある山の(ふもと)にいた。理由はただひとつ、【ボーンレイド】を滅亡させるためだった。次郎の後ろには既に骨格標本(スケルトン)の数体が無残な姿で地に伏せている。もちろん殺ったのは次郎である。


 次郎は木の後ろに隠れて、辺りを窺っていた。しばらくすると一体の骨格標本(スケルトン)が次郎が居る木の方に向かってきた。


 「ちっ、外れか」


 次郎は木の後ろから骨格標本(スケルトン)へと飛び出していく。骨格標本(スケルトン)は次郎を見つけた瞬間、紫色の息を噴き出した。


 「なっ、毒ガスだと! 強化骨格標本(ハイスケルトン)か」


 次郎は強化骨格標本(ハイスケルトン)の毒ガスを避ける。毒ガスが触れた草木はみるみるうちに枯れ、毒ガスの威力の高さが窺えた。


 次郎は強化骨格標本(ハイスケルトン)に近づき、一発パンチを喰らわせる。しかし骨格標本(スケルトン)とは違い、ダメージの入りかたは鈍かった。


 再び、強化骨格標本(ハイスケルトン)は毒ガスを噴き出す。しかし、前方に広範囲なぶん後方は隙だらけだった。


 「うぉ~~~~~」


 次郎は後ろに回り込み拳を上から叩き込み、強化骨格標本(ハイスケルトン)の頭蓋骨を粉砕した。流石の強化骨格標本(ハイスケルトン)もうつ伏せに倒れていった。戦いが終わり、木の陰で一休みする次郎。


 「やばかった。もし上級だったら苦戦していた。」


 一休みした次郎は夜の暗黒世界のような森の中に消えていった。














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