第4章第32話昨日の敵は今日の友?
第4章スタートです。
【恐怖の時間】が起こした最期の事件から早十日、襲撃を受けたテレイシティの人達もいつもの生活に戻りつつあった。
幸い人的被害はなかったが、物的被害がいくつかあり、その影響を受けたヒーロー博物館が一ヶ月の休館を発表した。今回の事件を受け、ヒーロー支援団体が声明を出し、首謀犯である【恐怖の時間】を壊滅したことを告げた。
一方、テレイ地区から離れたサイカイ地区ではこの事件はあまり話題になっていなかった。理由はヒーロー支援団体の意向だという話がテレイ地区の人達の間にひそかに囁かれていた。
「帰ってきませんねぇ、迫夜さん」
「一週間で帰ってくるって行ってたんですが……」
そう話をするのは優理と未来だった。話を巻き戻すと九日前、迫夜が『一週間で帰ってくる』と言ったままどこかに行ってしまったのが発端であった。迫夜の言う通りなら二日前に戻ってくるはずだが、迫夜は家に帰って来なかった。そして今に至る。
「風華さん。師匠どこ行ってるんでしょうか?」
未来は心配のあまり風華に相談するが、
「さぁ? 迫夜のことだから機械の故障でもしてどこかで立ち往生でもしてるんでしょ。ほっといてもそのうち帰ってくるから大丈夫よ。」
と返されてしまい、根本的な解決には至らなかった。
「ほんとに大丈夫かな?」
未来は迫夜を探しに行くか迷っていると、家の呼び鈴が鳴ったため玄関に向かった。
「どちら様でしょうか?」
「桃です」
「由奈です」
家に来訪したのは最近会っていなかった桃と由奈だった。そしてもう一人未来達には因縁のある人物が桃の後ろに立っていた。
「ちょっと! なんでキューラがここに居んの?」
「?」
桃の後ろに居たのはキューラであった。しかし、キューラは未来の言葉に頭をポカンとさせていた。
「しらばっくれるつもり?」
「事情は後で話すから」
「ちょっ、ちょっと」
キューラの態度に激怒した未来はキューラに詰めよろうとするが、桃達に止められてしまい、さらに家の中に押し戻されてしまった。
「いったいどういうつもり?」
「私に聞かないでよ」
家の中に戻された未来はその後風華を呼び出し、桃・由奈・キューラ・風華の四人で話し合いをすることになった。つまり未来は追い出される形になっていた。そして未来は話し合いが行われている居間を琴美と共に覗き見ているのであった。
「……まずどうしてあなたが居るの?」
「?」
風華はキューラに向けて話すが、キューラは話しの内容が分かっておらずきょとんとさせる。
「知らないふりして」
「未来少し落ち着いて」
「う、うん」
覗き見していた未来はキューラの態度に再び苛立ちを覚える。琴美はなんとか未来をなだめ、話しの続きを聞くことにした。
「由奈さん事情を説明してくれる?」
「あ、はい」
これ以上キューラに尋ねても話が進まないと感じた風華は由奈に事情を尋ねることにした。
「十日前、出動命令を受けた私達は壊滅した【恐怖の時間】のアジトに行きました。その時、ヒーロー支援団体の人に付き添われている彼女を発見しました。」
「それはキューラのこと?」
「はい」
覗き見している琴美はキューラを見ているうちに何か違和感があるような感覚を持った。
「未来、キューラの様子がおかしくない?」
「おかしいってどこが?」
「なんと言うか、そのぅー、纏っているオーラみたいのが」
「はぁ? どうせ本性隠してるだけなんじゃないの」
「そうかなぁー?」
未来は軽く受け流してしまったが、琴美が感じていた違和感は間違いではなかった。
「その後、彼女がキューラであることを伝えると、彼女は連行されていきました。それから一週間後、また出動命令が出されました。私達が駆けつけてみると、たくさんのヒーロー支援団体の人に囲まれながら歩くキューラを発見しました。私達は何がなんだか分からず事情を聞いたところ、彼女はキューラと別人だということが伝えられました」
「根拠はあったの?」
「【恐怖の時間】のことを何一つ知らなかったり、自分の名前や出身地も覚えていないそうなんです」
「オニマバヤの時と同じでは?」
「オニマバヤは一応、【恐怖の時間】の首領の正体など重要なことは覚えてなかったらしいのですが、その他のことはきっちり覚えていると……」
「別人ならなぜここに連れてきたの?」
「『ヒーロー支援団体では預かれないから』って言われました」
「つまり、面倒を押し付けられたのですね」
「はい」
由奈と風華はほぼ同時にキューラの方を見て、そして頭をかかえた。
「今の話聞いてどう思う?」
「別人って同じに見えないけど……」
未来や琴美も由奈の話を盗み聞きして、由奈や風華と同じように頭を抱え始めた。
「そういえば、迫夜さんは?」
「居ません。肝心な時に居ないなんて……」
桃と由奈は怯えた。聞いた瞬間から風華からこの世の物とは思えない何かが全身からにじみ出ていたからである。
「ねぇ」
風華は少女に話しかけるが、少女は怯えていた。それもそのはず、桃や由奈だけではなく覗き見している未来達も怯えさせているほど風華の威圧は凄かったのである。その後、少女のことは迫夜が帰ってきてからの持ち越しとなり、少女は一晩家に泊まらせることにした。
「琴美との風呂を台無しにしやがって、あのやろー」
「落ち着いてください」
「止めるなぁー優理。あいつは……」
「風華さんから話は聞いたでしょ。彼女は敵じゃないって」
「そういう問題じゃねぇ~」
その晩、少女は琴美と風呂に入るが、元々琴美と入る予定だった理佐が大鎌を持って風呂場に乱入しようとしたが、優理に止められていた。
一方、風呂場では
「名前分からないってほんと?」
「うん」
「じゃ、私がつけてもいい?」
「別にいい」
琴美と少女が風呂に浸かりながら会話していた。
「じゃあ~、そのさらさらした髪の色から翠っていうのはどう?」
「いや、そのまんまじゃ……」
「いやなの?」
「……別に、それでいい」
「これからみどりって呼ぶから私のことも琴美って呼んでね」
「琴美~、琴美~」
居間では理佐が異常までに落ち込んでいた。
「何かあったんですか?」
「聞きたい?」
「止めておきます」
未来は理佐に何があったか聞こうとしたが、なんとなく分かった気がしたので聞くのを止めた。そこへ琴美とみどりが風呂が上がり、居間にやってきた。風呂場で仲良くなった二人は手を繋ぎ歩いていた。
「手を繋いでいる……」
その光景を目撃してしまった理佐は物凄くショックを受け、その場で止まってしまった。
「みどり一緒に寝よ」
「うん」
琴美はみどりを連れて自分の部屋に行ってしまう。今の琴美の言葉で完全に停止してしまった理佐を、優理と未来が理佐の部屋まで運んでいった。こうして波乱の幕開けとなる最初の一日が終わったのである。
翌日、迫夜の帰りを待っていたが迫夜が帰ってくることはなかった。その次の日、とうとう未来が風華にこう話を切り出した。
「師匠を向かいに行ってきます」
迫夜は行き先を誰にも伝えて居なかったが、未来にはある推測をしていた。迫夜は前に瞬間移動マシンの調整を行い、装着者全員の過去に立ち寄った場所にも行けるようにしていた。今、瞬間移動マシンの行き先はサイカイ地区・テレイ地区がほとんどを占めていたが、一つサイカイ地区でもテレイ地区でもはたまた無能の荒野(怪人の墓場)でもない場所を一ヶ所見つけた。それはタノマ地区にある村だった。未来はそこに迫夜が居るのではないかと推測し、タノマ地区の村【パーロン】に向かった。




