ヒミコの脱走計画
「それは非常に合理的な考えだと思います」と夢華が言った。
「でもヒミコ様。独身女性の男性の恋人はいいのですか?既婚女性が減ってうさちゃん国の女性は高齢者や独身女性ばかりになってしまいますけど」と姚晨が聞くと
「その辺りは遠距離恋愛でもして頂戴。たまに女性側が会いに行ってあげればいいだけね」
「確かに、男性は皆うさちゃん国に住んで貰うことになるからその方がいいかもしれませんね」と夢華も同意した。
「というわけで今、ここにいる独身女性は10歳未満でない限り全員移転後の桃源郷に移ってもらいます。そして移民希望者も桃源郷には入れません。これは絶対条件です」とヒミコが宣言すると、姚晨、星美、夢華は一瞬驚いた顔をしたがすぐに平静を取り戻し「わかりました。全てお任せします」と答えた。
「そしてあなたへの条件というのがここからよ」と陳紅珠に向かって話す。
「あなたにはこれから作る新四女神連邦の一角をまかなって欲しいの。これが絶対条件ね」
「ええっ!私がですか!?そんな大役は務まらないと思います」と言ったが
「ううん、適任よ。私だってここへ来た時突然任されたけどなんとかこうしてやってるから」と姚晨が言った。
「でも、本当にそんな事が出来るのでしょうか‥」と不安げに言う紅珠だが「大丈夫ですよ。私もここへ来てからヒミコ様の指示に従っていれば不自由はしていませんし、何よりここは女性至上主義国家なのだから何でも思い通りになりますよ。それに紅珠さんは以前から世界中の財界に知り合いが多いのでしょう?だったらもっと大きな商売をしてみるのも面白いと思いますよ」と星美が励ますと
「はい、そうですね。やってみます」と少し緊張した面持ちながらも答えた。
「まあ、これであなたの若返りに関する話は終わりよ。もう異論はありませんね?」とヒミコが聞くと「はい、承知致しました」と答えたのであった。
「では具体的な統治方法について説明します。まず最初にあなたには新しく設立される四女神連邦において、あなたが統括する新しい国家を作ることになります。その国家の名称はあなたの好きな名前を付けてください。そして次にその国の法律を作ってください」と言うと
「法律ですか?それはどのような内容の物を作れば良いのでしょうか?」と聞いたので「基本的にはここに住んでいる者達の生活を守るための法律で構いません」と答えた。
「わかりました。ではどんな物を作っていけばよろしいですか?」
「基本的に衣食住を保障した上で安全を確保すれば後は自由です」と答えたので「なるほど、例えば食糧不足になった場合に備えて備蓄庫を作るなどということですか?」と聞いたので「そうです。それに加えて災害が起きたときの避難場所を用意したり、医療機関を充実させるといった事も大事ですね」と答えた。
「なるほど、参考になりました。では早速草案を作ってみます」と言った。
「あなたが女王という位置づけだから独裁制でいいと思うわ。どうしても民主化を進めたいならそれはそれで構わないけど‥」
「わかりました。私なりに頑張ってみます」と言ったので「頼みましたよ」と言い握手を交わした。
そして最後にヒミコが言う。
「さあ、ではあなたが選んだ若返りの歳数は……28歳ね。これであなたの人生は大きく変わるでしょうね。でも生半可な覚悟で若返って欲しくはないの。覚悟はいいわね?それともあなたが選択した若返りは20代半ば位だろうからその歳数で本当にいいの?あなたがその歳数を選んだ事に対する責任をあなた自身でしっかり果たせるのかしら?」
と言うと「もちろんです。例え若返ったとしても今まで積み重ねてきた知識と経験を無駄にしないように努力してみせます」と言った。
「まあ、今更後悔しても遅いしここまで来た以上あなたは必ず若返る事になるから覚悟を決めてちょうだいね」と言うと
「はい、承知しています。覚悟はできております」と答えた。
「よし!それなら明日の朝にあなたの若返りを始めるわ。今日はよく寝て疲れを取りなさい。あなたが若返ったらあなたの周りが必ず大きく変化するでしょう。それについていけない人が出てくるかもしれない。その時は私が力になるわ。安心してちょうだい」と言った。
しかし、この突然のヒミコの提案が満場一致で誰も反対意見を言わないのは違和感がないだろうか?
それに移転話はいつものヒミコの気まぐれだから仕方がないとしても女性共の面倒を見るから桃源郷は持っていくよ、など政治や女に興味のないヒミコが自ら言い出すなど普通に考えればありえない。
そしてヒミコの意見はほぼ絶対とはいえ、部下たちはイエスマンではないのだ。反対意見があれば堂々と言ってくる。
特にうさちゃんなどはヒミコがやめろ!と言ったことでさえヒミコにメリットがあると思えば意見を押し切ってまで実行してくるほどだ。
だからいつもトラブルを起こしてばかりなのだが……
しかし、この時誰一人として反論しないばかりかヒミコの提案に疑問を持つ者は一人としていなかった。
それは勿論、それぞれ思惑があるからだったのだが。
当然、食料認定されてない男性が増えれば管理が大変になる。この理由は確かにあったのだが理由の一つに過ぎなかった。
それに、移民、難民希望者が可哀そうだから何とかしたい。という考えで動いていないことも確かだった。
ヒミコとしてはただ静かにのんびりと過ごしたいだけなのだ。しかしうさちゃんが何かと面倒ごとを持ってくるため鬱陶しかった。
しかしだからと言って食料の調達や管理などすべてやってくれてるし、自分の事を大切にしてくれてるのも解るのでもちろん嫌いではない。
ただ、距離を置きたかったのだ。かといって単独で引っ越せば食糧管理や内政をそっちのけで追いかけてくる可能性が高い。
なのでとりあえず女性達の面倒はこちらでみるから移民たちを含めそちらで管理するようにとの口実にしただけなのだった。
だから女性全員を連れていくつもりはさらさらない。数千人程度引き取って後は「移動が面倒くさいからもうやめた」と言うつもりでいた。食糧認定済みの男性達はほとんど妻持ちだし。それにローラもいるのだから問題はない。
つまり今回のこの提案はヒミコにとっては単なる我儘による脱走計画の口実でしかなかったのだった。
そして、うさちゃんのほうはと…、時は少し遡る。




