中国が誇る四大美女の一人 陳紅珠登場
「あのね。たーくん、そんなに怒ってるとお母さん悲しいわ」
「いやいや、母さんが毎回毎回鬱陶しいから怒ってるんだって。わかってんなら、少しは控えてよ」
「でも、お母さんたーくんのお世話がしたいのよ」と言ってさらに抱き着いてきた。
そして、そのまま頬擦りするように顔を近付けてくるのであった。
(くそ!なんだこのデジャヴュは!?)
そう思いながらも、星美を引き剥がそうとする隆だったが
「たーくん、お母さん嫌い?もしかしてお母さん嫌いになっちゃったのかしら?」と不安そうに尋ねてくる星美だった。
「い、いや‥そ、そういう訳じゃないけど‥」と答えるが
「本当?なら良かった」と微笑む星美だった。
「ほら、今日は授業は別なんだからこっちくんな!」と言うと
「そうね、たーくんは実習だもんね。じゃあ、また後でね」
「母さんも授業でしょ?早く行きなよ。俺に付き纏ってたら留年するよ」
「もう、たーくんはそんな意地悪な事言うのね。でも、お母さんはたーくんの事を愛してるから、どんなに意地悪な事を言っても許しちゃうわ」
「もう!母さんのバカ!」と叫ぶ隆だったが、星美は気にする様子もなく笑顔を浮かべるのであった。
隆と別れてすぐに
「あのー美都星美さんですよね」と声をかけられたので振り向いてみるとそこには星美には劣らない綺麗な女性がいた。
何と表現していいのか…とても精彩で凛とした態度でそれでいて上品な感じの女性だ。年は自分より少し上位か。まあ実年齢ははるかに星美が上なのだが。そして、何故か顔がほのかに赤い。
「えっとなぜその名を?私はここでは横井で通っているのですが。あなたいったい何者?」
と問うと
「あ、私……春燕と申します。突然お声がけしてしまい申し訳ございません。あの、長州きもの学園オーナーの美都星美さんでお間違えないですよね?」
と、何やらお辞儀までして質問してきた。
「ええ、そうだけどそれがどうしたの?まあ、私も学生だからあまりかしこまらなくてもいいわよ」と答えた。
すると、春燕という女性は
「ああ、良かった。間違ってたらどうしようかと思いましたわ。実は私は中国からあなたに会いにきました。理由は私の祖母、陳紅珠に会っていただきたいのです」
「祖母?なぜ貴方のお婆様が?」
「単刀直入に言います。祖母は今70歳手前なのですが昔のように美しい自分に戻りたいと切に願っています。そしてあなたの事を知り同じように若返りたいと思っているのです」
「ふーん。まあ事情はわかりました。しかし、この事を知ってるのは貴方だけ?他にも知ってる方はいらっしゃるの?」
「はい、我が家の執事です。まだ詳しくはお話できませんがいずれ分かります」
「まあ、いいでしょう。詳しくお話聞かせていただけるかしら。それにあなたのこともね」
「ありがとうございます」と言い、頭を下げてきた。そして、そのまま歩き出し大学内にあるカフェへと移動した。
そして、お互い飲み物を注文し春燕と向き合うように座った。
「それで、詳しい事情を説明していただけないかしら?」と言うと
「わかりました」と答えた春燕は淡々と話し始めた。
彼女の祖母は昔、中国4大美女と言われたほどの美貌をもち国を挙げて保護されていた人物なのだ。しかし、今は70手前であり老いを感じるようになってしまったそうだ。
そこで、日本に来た際たまたま闇のニュースで美都星美の事を知ったのだ。
かつては自分と同じように年を取っていってたはずなのに突然若くなったと。もちろん関係者以外は知るはずもない。
その後色々と調べていくうちに桃源郷の事。かつて美を競っていたはずのライバルだった姚晨も若返った事などを聞きつけ早速現地に駆けつけたのだが入り口が解らないので困っているという。
そしてそれならばそこに住む人たちにコンタクトをとれる人物として美都星美にお願いに来たという事らしい。
まあ、大方そんなところだろうとは思っていたがやはりそうだった。
「まあ、大方理解できましたが、なぜ陳紅珠本人が直接来ないのですか?」
と尋ねると
「祖母はもう年のため体が弱って…、ああ、病気とかではなく普通に元気なのですがさすがに日本まで来るのはきついからと、私だけで接触したということです」
「そうですか、で、私にどうしろと?」
「できればヒミコ様というお方。その‥女神様と呼ばれているお方にお会いできたらと」
「残念ね、ヒミコ様は私でも直接連絡は取れないのよ。それにただ若返らせてほしいと言ったくらいでは絶対に無理よ。私だってかなり苦労したもの。あっ、私の前に若返ったローラさんもね。」
「でも、ヒミコ様と連絡が取れそうな人とは連絡が取れるんでしょ?」
「ええ、まあ……定期的に若返らせてもらうためにね」
「なら教えてくれない?お願いよ!」と頭を下げてきた。
「うーん、残念ね。実はその事は秘密にしないといけない決まりになってるの。ごめんなさいね」
そう言うと、春燕はシュンと落ち込みながら肩を落とした。
(まあ、確かに私も同じような立場なら同じ事を考えるかもしれないわね)と思いながら星美は言葉を続けた。
「でも、ここまで話した以上私の責任でもあるわ。一度会ってから判断しましょう。いいですか?」
「え!?本当ですか!?」と嬉しそうに叫ぶ春燕を見て思わずドキッとしてしまった。だがすぐに咳払いをして落ち着かせた後
「ただし条件があります。その条件さえ守ってくれれば協力しますよ」と言った。すると
「はい!なんでもします!」と即答してくる春燕に対して呆れつつ
「じゃあ、もしそのおばあさんが若返りに成功したらあなたは私の息子の嫁になって欲しいの。どう?できる?」
と尋ねると
「えっ!?私でいいんですか!?」と驚いていたがすぐに笑顔になり「もちろんです!私はどんな事でもします!」と答えたのであった。
「ちょ、ちょっと本当にいいの?あった事もないのに、そんな簡単に決めちゃって‥」
と動揺した様子で星美が確認すると
「ええ、もちろんですとも。是非お願いいたします」と答えられてしまった。
その様子を見て(まあ、息子にとっても良い事だと思うけど)と心の中で呟くのだった。
そして、「じゃあ、その祖母は桃源郷までお越し頂けますかね?兎も角、あそこの人達はまずは本人が来てくれないと取り合ってもくれないからね」
「はい、わかりました。連絡します。でもどうやって桃源郷に行けばいいのか…」
「何言ってるの、さっき現地まで行ったことがあるって言ってたじゃない。あれは嘘だったの?」
「いえ、嘘じゃないです。現地には辿り着けました。入り口が分からないんですよ」
「そう。それなら簡単よ。私と一緒に行けばいいじゃない。」と言うと
「本当ですか!?ありがとうございます!」と言って勢いよくお礼をしてくる春燕を見て少し呆れながらも微笑んだ。
すると、春燕が突然真面目な表情になり話し始めた。「あの、あと一つお願いがあるんですが‥‥」
「ええ、何でしょうか?」
「もし宜しければお義母様と呼んでもよろしいでしょうか?」と聞かれたので思わず吹き出してしまった。
「ぷっ……ふふっ‥あっ、ごめんなさい。あまりに突拍子もない事だったので笑ってしまいました。ですが、これから家族になるのですから苗字で呼ぶのは他人行儀ですし‥そうですね『お義母さま』でいいですよ」と答えた。




