オイルシェール
桃源郷は最近の急激な技術革新によりある悩みが出始めた。
それは急激なインフラや公共施設の建築によって起こり始めた。それはエネルギー不足だ。
今は広大な砂漠の利点を生かし風力発電がメインだったが、さらに電気を使う量が増えてきたためどうしても電力供給が足りなくなってきている。
それに移動手段にしても燃料となる物がいるし、なんといっても大型船を造るにしても金属もたくさん必要だった。
「今、エネルギーと金属は一番欲しいところよね」と玉兎が呟く。
「そうね、何か良い方法ないかな?」
「もしかして、あそこが使えるんじゃないかしら?」
姚晨は地図を指差した。
それは桃源郷のモロッコ方面に広がるサハラ砂漠だ。
「この辺りのサハラ砂漠にはオイルシェールとか呼ばれてる物が眠ってるって何かの本で読んだことがあるわ」
オイルシェールとは石炭に似た物質で、炭層中や火山灰層の中に含まれており、そのままの状態では燃焼しないのだが、一旦精製することで石油やガスを生成することができるという非常に便利な資源である。
「それじゃあ早速行ってみましょうか?」
「ええ、そうしましょう」
こうして2人はサハラ砂漠へと向かうことになったのだ。
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二人は飛行機に乗りサハラ砂漠に向かった。2時間ほど飛行して目的の場所に着いたようだ。
「見て!凄く綺麗な景色ね」
窓の外を見てみると一面の砂漠だった。真っ白な砂浜が広がり、果てしなく続いている。そして遠くの方に緑色の森が見え、さらに奥には山も見える。まさに絶景だった。
そして空から見る景色というのはまた一味違っていた。大地全体が黄金色に輝いており、まるで別世界にいるかのような感覚に陥った。
そして眼下に広がる砂漠地帯は見渡す限り黄色い砂丘で覆われており、まるで砂の海のようだ。
砂丘の表面は波打っている部分もあり、その様はまるで生き物のようだった。
「本当に神秘的な風景ね」
「ここがオイルシェールの眠る土地なのね」
「ええ、そのはずです」
「それじゃあ早速採掘しましょう!」
2人はオイルシェール採掘を始めた。しかし、これがなかなかうまくいかなかったのだ。
「思ったよりも難しいわね」
「そうね、もっと効率的にやらないと無駄が生じちゃうわね」
当たり前のことだ。飛行機でやって来てちょこっと掘ってそんなものが出て来ればとっくにみんなやってるはずだ。
そんなことも考えないのかこの2人は…。まあ、仕方のないところもある。ヒミコの力をずっと目の当たりにしてれば物事を簡単に考えがちにもなるのも仕方ないのかもしれない。
「うーん、一度帰って作戦会議ね」
「ええ、そうしましょう」
こうして二人は帰宅することにした。
そして翌日、四女神連邦の面々が集まり作戦会議を練る事にした。
「それでどうしますか?」と金智英が尋ねる。
「オイルシェールの採掘が難航していて、どうしても時間がかかってしまうの」と姚晨が答える。
「そうですか、しかし何とかならないものでしょうか?」
「そうねぇ……例えば、私たちだけで採掘するのが不可能なら、他の国に依頼するのはどうかしら?」と姚晨が言うと、「それしかないかもしれませんね」と金智英が答えた。
「どうして?」と麗奈。
「我が四女神連邦の人口は約2000万人であり、うさちゃん国を含めても4500万人ですよね。こういう採掘現場は女性はほぼ役に立たないので男性に頼る事になりますが、男性の数は1000万弱さらにそこから200万人は金採掘に人員を割かれてますので」と金智英は答える。
確かにその通りだ。いくら人口が多いとはいえ全員を駆り出すわけにもいかない。
それに何よりここは女性だらけの国だ。男性が少ないのだ。しかも働ける男性となると尚更少ないのだ。
「そうね、じゃあどこの国に依頼するのが良いかしら?」
「そうですねぇ、やはり一番近いモロッコでしょうね、あと結界の周りでテント生活をしている移民希望者も使えると思いますね」と金智英が言う。
確かに、この2つの選択肢が妥当だろう。
「ではモロッコと移民希望者でお願いします。ただ、移民希望者の数はどれくらいなのかしら?」と姚晨が聞くと、
「現在約60万人前後です」と金智英が答える。
「そう、それくらいなら問題無いわね。では早速手配をしてくれるかしら?」
「分かりました。すぐに取り掛かります」と金智英は答える。こうして、オイルシェールの採掘作業が進められていくことになったのである。
移民希望者は仕事に就けるからとほとんどの人々が乗り気だ。
モロッコ政府も元々は自国生産をやりたかったのだがコスト面から見ると非常に割高になり採算が合わないという事で先送りしてきたのだ。
しかしこちらがやるからと依頼すると快諾したのだ。その代わり労働者にはきちんと賃金を払う事を条件にした。無論その件に関してはこちらも了承した上で行うこととなった。
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1週間後、モロッコ側はすでに人を集め、こちらは移民を誘導する段階にまで進んでいた。
「ねえ、ところでオイルシェールってどんな味するの?」
突然、姚晨が不思議な事を言い出したのだ。
「味って…知らないわよそんな事。第一食べ物じゃないでしょ。なんでそんなこと聞くの?」と麗奈は呆れた様子で答える。
「いや、なんとなく気になっただけなんだけど……」
「そりゃそうでしょ、食べ物じゃないんだから味なんて気にする必要はないわよ」
「だよねー、やっぱりそうだよね」と姚晨は納得したようだった。どうやら単なる好奇心から来ていたみたいだった。
「ただ私もどんなものか気になるわ、調べるからちょっと待ってて」
パソコンで検索して調べてみるとこう書いてあった。
『オイルシェールとは主に中東地方などで採れる原油と同じ性質を持つ物質です。これを精製することで石油や天然ガスなどが生成されます。また、石炭や褐炭といった化石燃料とも異なります』
「へぇ~、そんなものがあるのねぇ」
「まあ、知らなくても特に困ることはないけれどね。それよりそろそろ行かないと遅刻するんじゃないの?」と麗奈は腕時計を見て言った。
「え?あ!本当だ!急がなきゃ!!」そう言いながら慌てて支度をする姚晨であった。
「まったく世話が焼けるんだから……」と麗奈は呆れた表情を浮かべつつも少しだけ微笑んでいた。
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本来ならサウジアラビアやクウェートあたりから購入すればはるかに安く資源は確保できたはずなのだが、そのような国からの輸入はあまりしたくなかった。
エネルギーの権益は手に入れておきたかったのもあるが、何よりエネルギー資源を盾に横柄な態度をとられるのは四女神連邦にとって屈辱的でしかなかった。
こうして、四女神連邦はオイルシェールの採掘作業を開始したのである。
それと並行して日本企業には石油精製関連施設と火力発電所の建設を依頼することにした。
火力発電のスペックは日本が一番だと聞いたからだ。
そして、これらの設備が完成するまでの間、緊急措置として太陽光パネルでの電力供給をすることにした。
ちなみに太陽光パネルの設置場所はサハラ砂漠の南側で、結界内となる場所だ。
この場所は一年を通して雲一つない快晴が続くため、非常に理想的な設置場所であった。
「この事業で問題なのは、採掘作業員や管理責任者の人件費をいかに節約するかなのよね」
姚晨が言う。
「そうですね、その辺りは各国の協力で何とかしてもらいましょう。ただ、移民希望者やモロッコ政府の人間に任せているとどうしても人件費は高くなってしまいますからね」
金智英も同意する。
「まあ、しょうがないわね。他にやりようもないし……」
こうして、四女神連邦によるサハラ砂漠におけるオイルシェール採掘計画が始動したのである。
こうして半年も経つころには巨大な地下基地が完成し、そこでは毎日オイルシェールの採掘が行われていた。
さらに半年後には石油精製施設も完成した。そしてその3ヵ月後には火力発電所も完成し、桃源郷に安定したエネルギーを供給することができた。
「これで一安心だね。良かった良かった!」と姚晨は満足そうな表情を浮かべていた。




