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異業種との業務提携 開発ラボ設立

それを見送った後、ヒミコは

「まあ、普通の耐火繊維くらいじゃ耐えられませんけどね」と呟いた。

「という事はやはり無理なんですか?」と玉兎が聞く。

ヒミコは

「まあ、限界突破したとしても私を包んでおくには性能不足ですけどね。もっと素材改善しないとムリです。例えばね、まず鉄板みたいな防御力を発揮する素材でなくてはなりません。鉄板とは言ったものの鉄だと重くてかさばるからダメ。理想を言えば軽量化されている素材で尚且つ丈夫でなければならないわね」とヒミコは言った。

「ということは要するに炭素系の素材ですか?」

「ええ、そうよ。それに熱も発生するから熱を遮断できる素材じゃなければ意味ないし」

とヒミコは答えた。

「なるほどね。確かにヒミコ様の言う通りね。そう簡単にはいかないでしょうけど、まあ頑張ってみればいいんじゃない?それにあの娘、私達のためと言うより自分の欲望のためな感じがするから」と玉兎が答えると

ヒミコも

「まあ、そうでしょうね」と同意する。

「でもまあ、面白そうだから協力してあげるつもりよ」とヒミコが言う。

すると玉兎は

「あら珍しい。ヒミコ様が他人に対して優しくなるなんて」と驚く。

「まあね。でも普通に考えて今の着物メーカーでそれを実現するのは無理でしょ。だから手助けくらいならしてあげても良いかなって思うのよ。それに協力してくれる人がいると助かるし」と答えた。

そして二人は一緒に歩き出したのだった。


###長州きもの学園本社ビル

緊急役員会議が始まっていた。

「まず、我々の着物そのもののデザインは気に入ってもらえたようだがこれからどうするつもりなのだ?」と木村社長。

「これ以上の事に対しては私達には限界だと思います。なので技術を持った会社に業務提携を呼びかけようと思ってます。」と星美が話す。

それに対し、

「まあ確かに我等では難しい部分はありますが他にどのような案を考えているのですか?」と木村社長が尋ねる。

「そうですね、ここ最近宇宙への需要が増えてきており、様々な素材や技術が飛び交っていますが、その中でも特に注目を集めているのがハイテク素材です。この技術を取り込む事により耐熱性能を飛躍的に向上させる事ができます」と星美が答えた。

それを聞いた木村社長は

「それは良い考えだな。しかしそんな素材を開発している企業なんてあるのかい?」と疑問を呈する。それに対し星美は

「ピンポイントで開発はしてないでしょうけど…可能性として、帝者、西レ、グンゼンなどを考えてますが」と答えた。

それに対し木村社長は

「なるほどな。しかし具体的にどこの会社がどんな素材を研究しているのだ?」と聞くと星美は

「はい、帝人と東レはポリエステル繊維で耐火性、防炎性に優れ、吸湿発散性にもすぐれています。グンゼンに関しては、ハイテク機能性下着として有名な会社ですね」と答えた。木村社長は

「ほう。確かに帝人や東レならば可能性は高いかもしれんな。しかしグンゼンに求めるものがあるのかい?」

すると星美は

「ありますね。グンゼンは元々はメリヤスという編み機の製造業で、そこから衣類、水着などの分野に進出してきた会社ですが、今や最先端の技術を駆使したスポーツウェアのメーカーでもあり、医療用の介護用品や人工皮革製品の分野にも進出しているのですよ。つまり医療用の人工皮膚の開発技術を持っている会社なんです」

と答えました。

木村社長は

「なるほどな。確かにグンゼンなら可能性がありそうだ。しかし耐火性の服を作るなんて無謀じゃないのかい?」

すると星美は

「確かに無謀かもしれませんね。でも可能だったら凄い事になりますよ。おそらくヒミコ様も満足してくれるでしょうし」と答えた。

「それに、ヒミコ様の着物を一時的に貸してもらえることにも成功しましたし、素材を分析すれば可能性は大きいと思いますよ」と星美は言った。


そして

「私としてもヒミコ様は憧れの女性で、私にとって理想の人です。できれば私が作成したいのですが今の自分では到底無理なのでぜひ皆さんにも協力してもらいたいのです」と星美が話すと木村社長も

「そこまで言われてしまっては頑張らざるを得ないな」と答えた。

こうして役員会議は終わり、各部署に指示がだされることとなった。


「まずは耐火性のある繊維の材料ですね。帝者、西レ、グンゼンなどの素材メーカーの開発部に共同開発を打診します」と星美が提案すると早速それぞれの部署から代表者が選出され会議が始まった。

帝者からは山田氏、西レからは岩崎氏、グンゼンから島崎氏が出席した。そしてデザインを担当するのはもちろん星美の旦那だ。星美自身もデザインを担当する予定だったが今回は設計のほうに専念するという。

会議は活発に行われ、意見を交換し合った。帝者の山田氏が

「耐火性の高い繊維を作るには金属やガラス繊維を入れる方法があります。それによって強度はかなり上がるでしょう」と発表する。

西レの岩崎氏も

「まあ、たしかにそうかもしれませんがそれだけじゃ、着心地は悪いんじゃないか?どうする気だ?」と反論する。

一方でグンゼンの島崎氏は

「ヒミコ様のお話では擦り切れたり燃える事もありますが、それ以上に問題なのが圧縮熱です。摩擦熱もあるかもしれませんがそれよりもヒミコ様が高速移動したことにより風圧で押し潰されることが問題です。単純にガチガチな繊維では不向きでしょう。柔軟性も必要です」という。

その意見を受けて山田氏が

「まあ、確かにそうだな。しかしヒミコ様愛用の着物がここにあるのだ。分析をすれば1から考えるよりははるかに早いし効率的だ」

と案をだす。帝者が持参したヒミコの着物サンプルをみんなで鑑賞し始める。


すると星美が

「ヒミコ様の着物を見て思ったんですが、これは多分普通の着物ではないんですよね?」

と聞くと山田氏は

「ああ、多分な。恐らくだがこの着物は特別仕様になっている。恐らくは特殊な繊維を使っているんだろう。これなら耐久性もあるだろうし燃えにくいはずだ」と答えた。

すると今度は星美の旦那が

「ではこの着物の繊維について調べてもらえませんか?」と聞く。

山田氏は

「それは構わないが、どこで調べるつもりだ?いくら私達でも未知の繊維については詳しいわけではないからな」と答えた。

それに対し星美は

「それは大丈夫です。ある大学教授を呼んであります」と答える。

そうして早速、分析するため、東京大学の服飾関係の教授を呼び出した。教授は着物を一目見るなり驚いた顔をしていたが、それ以上は何も言わずに黙々と着物を解析していた。そして一時間ほどすると結果が出た。

「これは凄いですね。こんな繊維を見たのは初めてです」と教授は興奮しながら話し始めた。そして続けてこう言った。

「この繊維は『カーボンナノチューブ』ですね。しかもこれほど高品質なものは見た事がありません。まるでダイヤモンドのようだ。しかも耐熱性が高い。これは凄いことですよ」と教授は言った。

それを聞いた山田氏も

「なるほどな。これはまさに最高級の素材だ。しかし、これを加工するのは難しいだろう。それに作るのは簡単じゃないぞ?」と話す。

「そのためにまず専用ラボを設立しようと思います。そこにわが社から研究スタッフを配属させます。」と山田氏は言った。

「いやいや抜け駆けは困りますな。専用ラボは賛成ですがなぜ帝者さんのスタッフになるのですか?わが社にも優秀な人材はたくさんいますぞ」と岩崎はいう。一方グンゼンの島崎氏も


「まあまあ落ち着いてください。私のほうはグンゼンのスタッフを派遣するつもりは有りませんよ。素材の開発は皆さんが好きにやってください。私はグンゼンとして衣類製造メーカーのプライドもありますのでそちらに集中したいのです。素材に関しては素人同然ですので」と述べる。

それを聞き

「じゃあ、3社のスタッフと長州きもの学園からも派遣して4社合同でラボを開設するとしましょう。場所に関しては……星美さんがお借りした帝者の所有するこの研究所で行いましょう。長州きもの学園さんはまだそこまでの設備は揃っていないでしょうし」

と山田氏はいった。


すると星美は

「承知しました。私もヒミコ様にお会いするため頑張らせていただきます」と答えた。

その言葉を聞き山田氏も

「では早速準備に取り掛かるとしますか」と言うと岩崎氏も

「ああ、そうだな」と同意した。

そうして新たに設立される『カーボンナノチューブ着物ラボ』の場所が決まった。

そして翌日各社一斉に今回の業務提携による耐熱素材の開発や着物制作の情報をIRにて発表したのだった。これにより3社の株価は爆上げした。

さらにラボでは耐熱素材の研究だけでなく、耐寒素材の研究なども始める予定だ。

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