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煙突・唐辛子・男

随分と煤けた煙突の下、玄さんは今日も町の銭湯に一番乗り。

銭湯の主人が丹念に育てた鉢植えの唐辛子が赤く色づいている。


「ごめんなさいよ」


なんと暖簾の向こうの番台に見知らぬ美女が腰かけているではないか。


ひゃっほう、ばあさんが死んで10年。

ようやくわしにも恋の花が咲きそうじゃわい。


「ありがとうございました」

「おや、お姉さん随分と声が低いのですね」

「ええ、私男ですから」


玄さんは何だか泣きたい気持ちになった。

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