〔18〕ドーブツ参加型運動会④玉入れ競争
「それでは、第3種目の『玉入れ競争』を始めます。参加者は、スタート位置についてください。制限時間は、3分です」
未来先生のアナウンスが終わると、校長先生が手を挙げました。
「みなさんに、提案があります」
「はい、いいですよ~」ユキは、提案を聞かずに受け入れました。
「ちょっと、ダメよ、ユキちゃん。勝手に決めちゃ。一応話を聞きましょう」そよりさんが言いました。
「そうね、そうするわ」ユキが言いました。
校長先生は、静かに言いました。
「わたくしの責任とは言えCチームは、優勝争いから脱落してしまいました。ですが、それでは意味がありません」
「(何の?)」全員が疑問に思いました。
「ですから、教育的な意味を込めて、Cチームも全力で参加するルール改正が必要であると考えます」
「玉入れ競争で獲得した点数を倍にしますか?」ユキが言いました。
校長先生は、カブリを振りました。
「いいえ、そのような下品なお願いはいたしません。それでは、皆さんの蓄積した努力が無駄になります」
「それでは、どうしたらよいとお考えですか?」そよりさんが聞きました。
校長先生は、怒涛の勢いで言いました。
「運動会というものは、全員で作り上げるものです! 全員で参加して勝利の喜びや、敗北の苦痛を分け合うものです! みんなで作り上げる物なのです! みんなが参加するものなのです! みんなで・・・」勢いは、止まりませんでした。
「それでは、Cチームは先生方も全員参加してはいかがでしょうか?」ユキが言いました。
「! ありがとうございます。そうします!」校長先生の表情が一変しました。
「4人対4人対6人でよろしいでしょうか?」
「いいえ、そのような下品な真似はいたしません」
「(めんどくさいな~)」そろそろみんなが、疲れてきました。
「ハンデをつけます」と言って、松柳先生とシャベランカー先生と風鳥先生までもが後ろ手に縛られ地面に転がされました。
「さぁ、勝負です!」
「(自分が、玉入れに参加したかったんだな~)」と、全員が理解しました。
「最初から、校長先生が全部の競技に参加しても、誰も文句を言わないのにね~」カスミが言いました。
「まぁ、そこが校長先生のプライドなのかもしれないわね」ユキが言いました。
「まぁ、寝てればいいから楽ですわ」松柳先生が言いました。
「そうですね。早く終わって欲しいものです・・・」と、風鳥先生が言いました。
「Cチームの先生方は、校長先生以外、運動会には参加していマセん」シャベランカ-先生が言いました。
「それでは~、競技~、始めー!」アナウンスと同時にピストルが鳴りました。
「ぱぁん!」参加者は、カゴをめがけてダッシュしました。
「どっりゃ~!」校長先生は、カゴの3m手前まで来ると、ものすごい勢いで玉を投げ始めました。
「3個投げ~! 5個投げ~! 背面投げ~! スカイフック! 阿修羅投げ~!」誰よりも、投げてる数が多かったのですが、2個くらいしか入っていませんでした。
ぬりかべさんは、手がカゴまで届かずカゴに玉が入りませんでした。
私は頑張って、5個入れました。
Aチームは、ピューマが、変身しました。
『なばびこ~ん』金色のワシが現れて、一つずつくちばしにくわえてカゴに玉を入れました。
ケンタウロスがジャンプしながら、玉を入れていました。
そよりさんとここあちゃんも頑張って玉を入れました。
Bチームは、カンガルーが大活躍しました。何回もジャンプを続け、2個ずつ玉を入れていました。
「ウチのチームの圧勝ね~」ユキが喜んでいました。
カスミは玉を5~6個ずつ抱え、一反木綿の背中に乗ってカゴまで運びました。
「わ~い! いっぺんに、たくさん入るよ~!」カスミはご機嫌でした。
「それでは、ドキドキの結果発表です! Aチームは、56個でした~!」未来先生が発表しました。
「わ~!」
「すっげー!」歓声が上がりました。
「Bチームは、なんと! 286個でした~!」未来先生が発表しました。
「ケタがちがうぞ~!」
「よーかい大活躍―!」
「カンガルーも頑張ったー!」運動場は、どよめきました。
「Cチームは、12個でした~」未来先生が発表しました。
「しかたねー」
「地味だったしなー」一応歓声があがりました。
「・・・という訳で、玉入れ大会の勝利チームは、Bチームでした~!」未来先生が発表しました。
「パチパチパチパチ・・・」
「頑張ったー!」
「面白かったぞー!」運動場は、盛り上がりました。そして私がクジを引くと、Cチームの得点は22点でした。
1位を三回取ったチームがなかったので、総合点数により順位が決まりました。
「それでは、各チームの合計点を発表します」未来先生がアナウンスすると、会場中が静まり返りました。
「Aチームは、35点でした~!」未来先生が発表しました。
「わー!」
「頑張ったー!」
「1位が多かったけどね~!」歓声があがりました。
「Bチームは、 40点!」未来先生が発表しました。
「優勝だね~!」
「2位が多かったけどね~!」
「どんなルールだよ~!」歓声があがりました。
「Cチーム 34点でした~!」
「戦犯さがしは、やめよーぜー」会場中があたたかい空気に包まれて、表彰式が終わりました。
「Cチームが、優勝争いに加わらないで安心したわ」ユキが言いました。
「そうだね。あとあじが悪いから」私も安心しました。
1位のBチームには、夕食自由選択権が30回分与えられました。
2位のAチームには、食後のデザート自由権が15回分与えられました。
最下位のCチームには、罰ゲーム30回分が与えられました。
みんなに見守られて、私が代表で罰ゲームクジを引くことになりました。
「『罰ゲーム』って何だろう?」私は、こわごわしながらクジを引きました。
『罰ゲームBOX』には、20個ほどの色とりどりのクジが入っていました。
水色の『これを、引くのです!』と書いてあったクジは引きたくありませんでした。
桃色の『これを引いてね』と書いてあったクジは、可愛らしい女の子のイラストが描いてありました。可愛らしいので、これを引きました。
クジには、『生徒になれる罰ゲーム』と書いてありました。
「?」みんなは意味が分かりませんでした。
未来先生が校長先生に確認しました。
「生徒になれるってことは、先生方の『一カ月の減給』や『サービス残業20時間』はないのですよね?」
「う・・・」校長先生は言葉に詰まりました。そして、やっと
「そ、そうですね、生徒扱いですから・・・」と言っただけでした。
「さすが、校長先生。素晴らしい判断です!」
「教育者の鑑です!」
「ついてきて良かった~!」
「校長先生なら、そうなさると思いました~」先生方は、大袈裟に褒め称えました。そして、校長先生は自信を取り戻しました。
「素晴らしい運動会になりました! いつかまた、開催しましょう!」
「パチパチ・・・」
「面白かった~!」
「いいぞ~! 校長先生~!」歓声があがりました。観客は、成り行きを見届ける契約でした。
「『夕食自由選択権』と『食後のデザート自由権』を5人で分けない?」ユキが提案しました。
「い~よ!」カスミが快諾しました。
「わたしも、それに賛成です」そよりさんが言いました。
「そうね、いい考えね」ここあちゃんが言いました。
「い~の? 私のチームは、ビリだったけど」私はみんなに悪い気がしました。
「気にしないでよ。面白かったからいいのよ~」ユキが言いました。
「そうよ、こんな権利で仲が悪くなるのは、バカバカしいでしょ?」そよりさんが言いました。
「どっわっ!」大歓声があがりました。
「いーぞー!」
「ステキな考えだ~!」
「かわいーし、なかいーし、うらやま~し」こうして、ドーブツ参加型運動会は、終わりました。
「ふっふっふ。わたしの狙い通りです」校長先生が勝ち誇りました。
「(そうなのかな~?)」みんな疑問に思いましたが、誰も口に出しませんでした。
「大人が極端に非常識だと、子どもは常識的に育つもんよ」ユキが小声で言いました。
「そうよね~」そよりさんが言いました。
私たちも共感しました。




