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第51話 体質改善

「聞きたいことがいくつかある。まずは勇者を探すよう女神からの話がなかった?」

「どうしてそれを!?」


目を見開きこちらを向く彼女、寝耳に水のゾタシさん。彼女に説明する。


「貴方が勇者様なんですね」

「勇者なのか、確かに連れの子はとんでもない力を持っているなとは思ったけど」

「見せるのが早いだろう」

「そうだね」


スキルを使い超高速で移動。二人とも驚いている、納得してくれたようだ。


「リリーを見つけられたのは本当に偶然なんだけどね」


普通に探しては見つからない場所だな。女神さまが導いてくれたのかも。


「ゾタシさんにも話したのは俺の方もややこしい話になっているからなんです。だから後は我々の方で」

「そのようだな。理解したよ」

「ということでリリー、仲間にして連れていきたいところだけど」

「はい、この体質では皆さんに迷惑をかけるかと」


十五歳の誕生日の日に女神からの話を聞いたが体質的にこの場から動くこともできず。歌はマースさんがゾタシさんを思う歌、亡くなってからリリーは歌うつもりはなかった。しかし女神からの宣告を受け動きたいけどここから移動できない、悪あがきではあるけれど自分がここにいることを勇者に伝えられればと歌い出したのだという。どこか悲しげな歌声だったのはそういう事か。それにしても歌っていなければ見つけられなかっただろう、良い判断だ。しかし見つかりはしたがどうしたものかな。おばあさんも何とかこの体質を治そうとしたが遂にはかなわなかったとリリーが語る。


「ここでは活動するのは大変ではないかな。そのくらいは私に任せてくれ」


ゾタシさんは袋からお金を取り出す。俺の目玉がCの文字で飛び出す、とんでもない額だ。


「これでオリニオンの街の一軒家を買うといい、この件が終わったら私の別荘地にでもするさ」


何度もここまで足を運ぶのは確かにきついし時間がかかる。ありがたい提案だ、お言葉に甘え一時的に拠点となる家を購入するとするか。


「ここから移動しよう」

(この人が何度も夢に出た私を救い出してくれる王子様? おばあさんの慰めのお話が本当のことに)

「どうした?」

「いえ」


それからリリーの移動も協力してくれた。大きく高さがある荷車を購入、彼女が乗った内部は凍っているが他は無事、これなら彼女を乗せて運べそうだ。距離があるから歩きは流石に辛いからね。俺達は先に街に向かい家を購入、氷対策を施す。彼女を乗せた荷車が到着し家の中へ。


「皆さんすみません、お騒がせします」

「歳も同じだから普通の話し方ていいよ」

「そう、だね。わかった」


ギルドの協力者の方が家を訪れてくれた。


「そうですか、どんなものでも凍らせてしまうと」


皆で考え案を出し合うことに。ゾタシさんも一緒に考えてくれている。事情を理解してくれた上での協力なら問題ないか。仕事は息子たちに任せているからいいと笑って参加してくれた。


「錬金術は?」

「なるほど。有名どころの錬金術師に相談するのはアリですね。候補の一つで」

「今回のように荷車を改良すれば」

「戦闘になればむき出しでも問題ない。候補と」


いくつも案が出てくる。希望が見えてきた。


「そうだ!!」


ゾタシさんが何かを思い出したように興奮した様子で立ち上がる。


「専用装備だよ。私は戦うことを投げ出してしまったが仕事柄戦闘の話は耳に入ってくるんだ」


その中で、リリーほどではないが特殊な症状で苦しんでいた者がいた。そんな彼に専用装備を作り装備させたところ症状が治まり以降は元気に暮らしたという。


「これならすぐに動けますし、治る可能性もありますね」

「お抱えといいますか、仲間で専用装備を作成できる人間がいます。呼びますか」

「へえ、仲間ってことは同じ歳だろう? もう専用装備を作れるなんてね」


感心するゾタシさん。武器防具作れるのだからよく考えなくてもとんでもない人材だ。それから覚醒が必要になってくるな。


「問題ありませんよ」


特殊な獣人が多数存在するこの世界。直接触れなくても遠距離から覚醒石を撃ち込む道具がある。ライトボードを直接触れなくても操作する道具がある。


「準備します。ダンさんは仲間の呼び出しを」

「はい」


出張覚醒も可能という。本当なら手続きがややこしいのですがと苦笑いする協力者さん。説明を添えキャイアにこちらにと来てくれと手紙を書く。受付に渡すと協力者の方がギルドの中から出てきた。


「行きましょう」


到着すると拠点では撮影が行われていた。各種道具を取り出し冒険者になる準備を。


「では撃ち込みます」


離れた位置から覚醒石を発射、見事命中。出てきたカードをライトボードに挿入。カードの端を折り袋へ。自分の袋から金属の棒を取り出す。彼女にそれを持たせると金属の棒は凍ってしまったが先端はかろうじて無事だ。ライトボードに先端を触らせる、果たして入力ができるのだろうか。気になってボードをのぞき込む。


「画面の移動に成功」


こうしてライトボードの操作が可能となった。袋から機械を取り出し、出力成功、専用装備の設計図を入手した。後はキャイアに作ってもらって完成を待つだけか。気晴らしに彼女を街に連れ出してあげたいところだけどまだ無理だな、治ってからだ。そうこうしているうちにキャイアがオリニオンの街に到着。


「来てくれたか」

「彼女がリリーだね、よろしくー」

「よろしく」

「そうだ、二人分の専用装備が完成したよ。渡しとく」


あれから結構な時間が経ったからな、二人分出来上がっていても不思議ではないか。

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