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第49話 悲しい恋

「調べて我々で大丈夫なようならお手伝いしますよ」

「何十年と通って来た道だ、私が詳しいから任せてくれ。魔物は弱く冒険者になりたてのPTでも問題ない。ハハハ、私も覚醒はしたのだが体を動かすのが苦手でね、レベル1のままさ」


魔物は倒せそうか、後は道だな。地図を取り出し場所までを細かく説明。何度も行っただけあり日の浅いガイドより詳しそうだ。護衛に専念しておけばよしと。


「一泊二日の予定だ、どうだね?」

「わかりました、その依頼うけます」

「本当かい! ありがとう。時間的に今日はやめて明日からにしよう。念のため万全の準備を」


携帯食料等を購入。我々の宿を取ってくれて晩御飯まで招待してくれた。


「なあに、これくらいはやらせてくれ。無茶を承知で受け入れてくれたんだからな」


出された食事はかなり高級なものだった。どこかの豪族の人だろうか。そういえば動作からどことなく品を感じてはいた。食事が運ばれ一緒に食べて飲む。よほどうれしかったのだろうか、お酒が進む。


「復活してくれてうれしい。私は彼女が死んだのだと」


正体を知っているのかな。そこそこ飲んだが酔っている様子ではない。


「昔話さ」


昔あるところに貴族の青年がいた。その青年は街の歌姫に恋をする。気持ちを抑えきれず言い寄り彼女をものにする。しかし身分が違いすぎると彼女が青年の前から消えてしまった。それから山脈から歌が聞こえるようになったという。こうして数十年の月日が流れた。


「追いかけようと何度思ったことか。しかし私は一人子、家を継がなくてはいけなかった。もしいなくなってしまうと数多くの者達が路頭に迷うことになる」

「わかっていてその方も身を引いたのでしょう」


酒をあおるように飲むおじいさん。


「すまない、口が過ぎた。旅人の冒険者さん、今のことは忘れてくれ」

「もちろん」


身分の違いにより成就されなかった恋か。現代ならそこまではないけれど、この世界はきっちり身分がわかれているからな。冒険者をやっているとその辺りは少々マヒする。活躍次第では王にまでなる人もいるとか。ちなみにこの世界では一夫多妻、一妻多夫が認められている。ただ、身分の違いということだからこの場合は最初から当てはまらないか。一夜明け三人は出発。途中魔物が出現したが聞いていた通り大したことはなく簡単に処理できた。


(二人とも妙に強いな。見たところ初心者冒険者のようだけど。おいおい、女の子の一撃で魔物の頭が弾けたぞ)


魔物のいる平原を越え森と山の間を歩き進んでいく。植物は普通の木々だな、寒い地方のため白く雪化粧をしている。途中休憩を入れつつ歩を進める、お爺さんが指をさす、開けた土地が見えてきた。


「ここは久ぶりだな」


山に囲まれた広大な盆地、なるほど、声が響きそうな場所だ。持ってきた薪に火をつけ焚火を。これで寒さをしのげるな。割ってない薪を椅子代わりに置く。少し早いが食事にしようとパンと干し肉を取り出し簡単な昼食をとる。


「では我々でキャンプの準備をします」

「お願いするよ」


テントを張り、落ちた枯れ枝を探しに森に入る。意外とあるな、拾ってアイテム袋に入れ持ち帰る。日が落ち暗くなってくる。


「今日歌うことはないかな」

「決まった日とか時間はあったんですか?」

「日にちに関してはは気が向いたらといったところか。夜は歌わないね、聞いたことがない」


歌はあきらめ食事をする、鍋をかけスープを作り三人で飲む。夜になり早めに眠る。日が差しだしたところで起床。テントから出ると白い息が乱舞する。ふいー、寒い場所のキャンプは体にこたえるな。お爺さんは慣れたもの、流石この地方に住んでいる人だ。


「さてと、今日は聞こえるといいが」


朝食の準備をしてご飯を食べながら歌を待つ。予定は昼まで、その後は街に帰る。昼食後でも暗くなる前に余裕をもって帰ることができる。もしもの場合は数日寝泊まりも可能。食後、焚火から離れテントに荷物を取りに行こうとしたとき、後ろから二人とは違う何者かの声が聞こえた。


「歌だ!」


足を止め振り返る、山の方向から美しい歌声が聞こえてきた。しかしその歌声はどこか悲し気。彼のことを思っての歌なのかな。こうして短い時間だったが山からの歌は終了。悲観に暮れうつ向いているおじいさん。歌うことができるということは元気ではあるけど、昔の悲しい出来事を思い出してしまったか。そっとしておこうとエメルに目配せし撤収の準備をしようと動こうとしたところ。


「違う、彼女の歌声ではなかった‥‥」

「え?」


別人が歌っているということか。俺達は初めて聞くからわからなかったが、確かに声の質は少女のもののように感じた。落ち着かせて話ができる状態に。


「歌声は違うが彼女に似た歌い方ではある」

「ということは娘さんかお孫さん?」


首を横に振りわからないと答える。だが、確認する方法はあるという。袋から地図を取り出す。実は彼女の居場所まで突き止めていた。しかし最後の一歩を踏み出せなかった。


「彼女の家への道筋だ。連れて行ってもらえないか」


ここから大体一日、ほぼ迷わなそうなルート。今回は魔物も出ない。行って帰っての日数を計算、食料は十分、水も途中確保できる場所がいくつもある。余裕をもって帰ることはできるな。


「行きましょうか」

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