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第48話 歌声

「王氷の生まれ変わりがいるはず」


これまでの例からして赤子になって近くに転生している可能性が高い。拾われて付近で暮らしているのではないか。エメルが竜の国に移動してきたように育ての親がどこで暮らすかで変わってくる。そうなると遠くに住んでいる場合もありえる。他二人は近場で暮らしていたからある意味エメルが特例ではあるけれど。


「氷の国の調査を続けよう」

「ああ」


今後の方針を立てようと協力者の方にも参加してもらう。この国の地図を広げる。中央にオリニオンの街があり北側に王氷跡地。北東と北西、南に大きな山脈があり人が入ることができない。


「東は農業と畜産が盛んな地域です。南東は漁業ですね。南には大きな湖があってスケートが楽しめます」


氷の国の食を支えているという街や村がいくつかある。


「まずは東から南の山脈まで行って街に戻って半分といったところですね。人がいそうなところを一通り探しましょう」


地図上の街や村を丸で囲み線で結んでいく、捜索ルートの完成。街で一泊してから仲間の捜索をすることにする。エメルとお酒を飲みに酒場へ。ちょっと飲みすぎたかな、もよおしてきた。席を離れ移動の途中、個室の扉が少し開いていてそこから声が聞こえてきた。


「ふふふ、覚悟は決まったかね」

「‥‥はい」

「いい子だ、では抱かせてもらうよ」


この声は協力者の人だ。もしかして内容的に脅されている? まさか俺達の手伝いをしてしまったがために? 助けなくちゃ、扉を開け中へと入る。


「もふぅ、もふぅ!」


氷狼に抱きついている男性と協力者の人が部屋の中に。後に聞いたところ、この職員の男性が氷狼が好きで、職員さんが飼っている氷狼がモフ度抜群というわけでおさわりをお願いしてきたとか。俺達の件は全然関係なかった! ちなみにここは氷狼同席可能の酒場です。こうして捜索の旅を開始。ここから東に向かい農業が盛んな地域を目指す。


「寒い地方で農業ってどんなものかと思っていたけど」


氷や雪の上に植物が生え実や果実をつけている。一見ただの氷だが中には植物を育てる栄養が含まれているそうだ。ファンタジー世界だから現代の常識は通用しないか。透明な氷に根を生やし凍えるような寒さだというのに立派な植物に育っている。氷耐性のある植物か、不思議な光景だ。


「日持ちもするんだよ」


植物の特性もあるけどこの地域は常に冷凍庫のようなもの。物によっては一年放置でも美味しく食べられるとか。輸出しようとするとすぐに腐ってしまうここだけで楽しめる食べ物だ。そして雑草も余裕で氷や雪の上に生えている。それらを食べさせ畜産をしている。山羊をさらに寒さに強くさせた品種かな。旅を続ける、街や村を通り今度は漁業が盛んな地域へ。


「わっはっは、陸でやんのよ」

「海かと思っていたけど、まさかの雪か」


雪中に生息する魚を捕らえる漁師さんたち。世界でもここだけの特殊な雪で、そのまま入ってしまうと埋もれて沈んでいってしまう。雪用の船を使い、一匹一匹モリで突き刺し魚を獲っていく。


「いいかい、雪が盛り上がるだろ? その下に魚がいるんだ」


突くと魚が先端に突き刺さっている、お見事な腕前。魚は筋肉が発達していて陸生に近いせいか肉のような味もする変わった魚だ。一通り見て次の場所へ。


「立派なお城だね」


代々続く貴族のお城とのこと。中に入って確認は無理だな。周りの街だけ見て通り過ぎて南の湖へ。


「皆スケートを楽しんでいる」


現代と違い動物の骨や木製の靴を使い自由に滑っている。試しに滑ってみたが結構滑りやすかった。現代だと先端がとがっていたから滑ることはできなくてこけまくったな。慣れない人間にはいいかも。観光しながら仲間を探す、ここにもいないか。そして最後の山脈付近の街へ。


「見つからないな」

「地道に探すしかないさ」


顔だけわかっていて他は全く。顔だけで探すなんて雲をつかむようなものではある。街に到着、特に産業もなく人も少ない街。ここも一回りして帰ろうと歩きだしたその時、近くで会話をしていた二人の男性の話声が聞こえてきた。何やら困った様子のようだが。


「すまないな爺さん、雇った冒険者が緊急の用事で来れなくなっちまった。山脈に行くのはやめだ」

「仕方がないな」


去っていく男性、肩を落とし下を向くおじいさん。前を通るとこちらに向き付き声をかけてきた。


「アンタたち冒険者か? もし良かったら仕事を頼みたいのだが」


どうしようか迷ったが、困ってそうだから話を聞くことにした。


「この先には知る人ぞ知る秘境があってな」


魔物のいる平原を越え山脈の隣に広がる森と山の中間を進んでいくと、開けた盆地があり、運が良いとどこからともなく美しい歌声を聞こえるという。


「歌声は数十年前から始まっていて、私はとりこになってしまってな」


冒険者を雇っては何度も足を運んだという。一時は観光地にと検討されたこともあったが道中魔物が出るため諦めたという。


「その正体は?」

「それを知るために軍を派遣しようという話にもなったが、魔物ならまずいが特に問題を起こしているわけでもないから放置された」


声で人を惑わせたりする魔物が存在するという。被害が出ていないからそういった類のものではなく危険はないと判断。


「国は何者かが森に住みついて歌っているだけだろうという結論を出した」

「ありえる話ですね」

「しかしこの数年歌が聞けなくなってしまった」


原因はわからないが歌が止まってしまったという。単純に歌をやめたか。


「それが最近また復活したと聞いてな。こうしてこの地に来たのだが」


冒険者が来なくて行けなくなってしまったという。街には冒険者ギルドがなく冒険者を再度雇うとなると他の街に行って依頼をするところからしなければならずかなり大変。エメルを見る、うなずく彼女。そこまで急ぐ旅ではない、可能ならば行ってあげようかな。

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