第24話 恋心
改めて座り直し真剣な顔になる姉さん。
「驚かないで聞いてくれ、勇者を助けるようにと誕生日に天から声が聞こえたんだ」
内容はほぼサラと同じ。そして姉さんは一万年以上生きたとされるファイアリーレッドドラゴンの生まれ変わりであることがわかった。火の大陸にいたこのドラゴンの死も異変の一つとして数えられている。
「おかしな話だろ?」
誰にも相談できずに困り果て、先に人間の世界に来ていた俺に相談を持ち掛けた。
「姉さん、いきなり大当たりだよ」
「?」
自分で勇者と名乗るのは恥ずかしかったが今まであったことを姉さんに伝える。驚く姉さん。
「そんなことが」
「そうだ、サラも近くまで来ているんだ。これから仲間になるかもしれないし会っていく?」
「そうしよう」
ということは姉さんがガチャのあの子だったということか。似ているなとは思っていたけどまさか捨て子だったとは思わなかった。
「行こうか」
「‥‥ダン」
木から降りて街へ行こうとしたとき、後ろから急に姉さんが抱きついてきた。
「本当は寂しかったんだ。少しこうしていてくれ」
いつもは強気の姉さんが見せた本音。それはそうか、今まで肉親だと思っていた人と血がつながっていないとわかればな。
「私は弱い人間なんだ。だから虚勢を張っていないと自分が自分でなくなる気がして」
ここまで弱気な姉さんは初めてだ。いつも俺が辛い時は姉さんが手を乗せ落ち着かせてくれていた。今度は俺の番だな、エメル姉さんの手を俺の手で包む。びくりと体を震わせ反応するがすぐに落ち着きを取り戻す。
「ディフェンダーの騎士になったんだ、これからは俺が姉さんを守るよ」
「ああ」
力を強くこめ抱きしめる姉さん。
(いつからだろう、ダンを乗せて空を飛ぶと胸が高鳴るようになったのは。彼への思いを断ち切るために騎士団入りしたのに。神様は意地悪だな)
(エメルさん‥‥)
街に戻りサラのところへ。おや、あらかじめ落ち合う場所と決めていたところに来たがいないな。
「悪いね姉さん、連れがどこかに行ってしまっていて」
「構わないさ」
(ん、あれはダン、それと向かいにいるのは竜人の子? サラちゃんがいるのに他の女だなんて。んふふ、スミに置けないわね)
「相変わらずたくさん食べるのかい」
「それがな、もっと食べるようになってしまってな。ファイアリーレッドドラゴンと二人分かもしれないな」
お腹をさすりながら笑う姉さん。元々大食いだったけどそれ以上になったとはね。
(二人分? まさか赤ちゃんまで!? サラちゃんに伝えないと!)
少ししてサラが到着。
「すみません、ちょっと他へ行ってまして」
サラと合流、挨拶を交わすことに。
「紹介するよ姉さんだ」
「初めまして、エメルだ」
「サラです、よろしくお願いします」
そろそろお昼ということで一緒に昼食をしながら話をと店へ移動。話をしているうちに姉さんがサラをすっかり気に入り仲良くなる。
「良い子じゃないか。将来のことを考えたりとかは?」
「やだな姉さん、まだ会ったばかりだってのに」
「おかーさーん!!」
泣きながら道を歩く男の子が通りかかる。迷子かな、三人は男の子に近づき事情を聴くが泣いてばかりで話を聞き出せない。泣き止むまで時間がかかりそうだ。近くに衛兵さんの詰め所があったはず、預けてこの子のことをお願いした方がいいかな。
「衛兵さんのところへ連れていくよ」
「わかった」
「二人で話していて。よーしいい子だ、お兄さんがついてるから大丈夫だよ」
男の子を背負って衛兵さんがいるところへ向かう。
「ごめんなさい、大木のところで二人でいるとき私も見ていたんです。私も女です、あなたの気持ちはわかります」
「我々は姉弟なんだ」
「でも、血はつながってないんですよね、そもそも人種が違うし」
「それはそうだが」
「彼からよくあなたの話を聞いています。私と一緒にいるのに他の女の話をするんですよ!? わかりますか、私の気持ち!」
「‥‥」
「自由にすべきでは。いや、自由にするように! 自分の気持ちにうそをつくのはいけません」
「ふふ、そうかもしれないな」
男の子を預け店に戻る。二人ともまるで長く付き合いのある友達のように楽しそうに会話をしている。
「俺も混ぜてよ」
「だめです」
「なんで」
俺とよりも仲良くなってないか。ちょっと姉さんに嫉妬。
「ダンが勇者という事なら決まりだな。騎士団をやめて私も冒険者になる。ただすぐにはやめられない、手続等済んだら合流する」
「わかった」
「それからダン、お互い大人だ。これからは名前で呼ぶようにしてくれ」
「了解姉さん、いやエメル姉さん。おっとと。はは、時間がかかりそうだ」
これから一緒に冒険者としてやってくからね、名前呼びの方がいいか。食後姉さんとは、いやエメルとはここでお別れ。いつもより柔らかい表情になった気がする。いろいろと悩むことがあったわけだからな、つきものが落ちたというわけだ。俺達もバルトワから出てリマラの街に帰った。




